日数
俺は部屋を出ようとしていた。
俺は何も見なかった、俺は何も聞かなかった。
「慌てなくていいぞ~ 時間ならたっぷり十月十日もあんだからな~」
俺はその場に崩れ落ちた。
そうだよね、する事すればできるんだよね、避妊なんてして無かったし、可能なのはオギノ式ぐらいだが、姉ちゃんは子供好きだからな~ 子供たくさん欲しいって言ってたし。
・・・違う!
「毒ガスだよ毒ガス!」
「なんかちょっと紫っぽい白い粉だったぞ、匂いは川に似てた。」
「お姉さまにはあまり影響が無かったのですが、兵は気分の悪くなる者が多かったです。」
「敵は空に居て降りて来なかった。ニワトリじゃなくて、なんかたこみたいな鳥だったぞ。それと姫さん、あたしの方が年下なんだけど。」
「タコ? 触手でもあったのか?」
「そっちじゃなくて正月の方、ビニール凧に似てた。」
「いまいち分からんな、大きさは?」
「すっごく大きかった、リューちゃんの三倍くらいあった。重さは半分以下。」
う~ん。
「プテラノドンかケツアルコアトルみたいな奴かな?」
「嘴は小さかった、色はたぶん白、逆光でよく見えなかった。尻はわからん。」
「ケツアルコアトルに関しては今夜じっくりと説明するとして、毒ガスは川に撒いてるのをそのまま撒いたって事かな?」
「そんなかんじ。」
「アレルギー症状か、中毒症状の方かな?」
川の水に含まれている毒物は、恒常的にこの都市に住んでいれば摂取してしまっている筈で、さらにそれを大量に吸い込んだせいで症状がでているのかもしれない。
「問題は治療法なんだが、知らないんだよな~」
「さいわい動けなくなるような者はおりませんし、お姉さまも御覧のとうりです。」
「だ~ら あたしの方が年下だってば!」
「あらまあ御冗談を。」
「う~っ あ、そうだ。三日前捕まえた奴等どうなってる? 百人くらいいたけど。」
「そのままですわ。」
「メシは?」
「はぃ? 魔族のしもべで敵ですのよ?」
「姉ちゃん百人も捕まえてくれたんだ。ありがと。 彼等には食事を与えてやって欲しい。いずれはこの国の役に立つはずだから。」
すぐには無理だろうが、必ず近い将来には・・・
「だな、お腹の中の子のためにも♡」
たった十月十日で父親としての覚悟をしなければいけないのか・・・
せめてそれまでにこの争いをなんとかしよう。
まだ続きます。




