生命
残酷なシーンがあります。苦手な方は移動して下さい。
人がゴミのように死んでいた。
城のすぐ近くの国境の川、キメ川。
白銀山脈の大滝から海へ、緩やかなカーブを描いて流れている。カーブの頂点に湖があり、そこから流れが緩やかになる。だいたい城と海の中間ぐらいに湖がある。
その湖、昔は豊かな漁場だったそうだ。
今キメ川を、城すぐ近くの場所を、泳いで渡ろうとしている。四~六歳の少年兵である。キメ川の幅は十五~二十キロメートル。泳いで渡れない距離ではないが、毒水の中を泳ぎきるのは成人男性でも不可能だろう。
泳げなくなった者が近くの者を巻き込んで流されてゆく。
デルちゃんの機能で川の様子を見ているのだが、悲惨な状況だ。
口減らし。
食糧が無くなったから、その分人を減らそうというのだ。
気が付くと歯を食いしばっていた。
助けたかった、一人一人川からすくい上げてやりたかった。
俺の脳味噌はそれが不可能だと答えていた。彼等は魔族に教育された兵士だ、水からすくい上げた瞬間、襲いかかってくるだろう。 そんな状況では一人助けるのも難しい。
人数はざっと三千人、しかも彼等は陽動でしかない。
俺がここに残る訳にはいかない、かといってこの国の兵士に助けろと命じる事も出来ない。この国の兵士にとって彼等は敵なのだ。
ばっち~ん!
「あたしに出来る事言え!」
なんてオトコマエな姉だ。
「川を泳ぎきった子を捕まえておいて欲しい、捕虜にする。」
現状可能なのはそこまでだろう。
姉ちゃんは俺の気持ちに気付いていたのだろう。助けたいと思っていたのは姉ちゃんも同じだっただろうから・・・
「これは陽動だ、俺は本命を叩きに行く!」
姉ちゃんはひとつ頷くと、行けとばかりに背中を押した。
他に選択肢が無かった。
魔族の作戦立案者がどんな人物かは解らないが、なんとなく癖が掴めてきた気がする。
そしてこの攻撃はあからさまな陽動で、二重ないし三重の攻撃を用意していると読んだ。
旧ノトの王城、現在ラフン城で魔力の高まりを感じた。
あまりに異常な高まりに、精霊達がざわめく。リューちゃんに乗り、デルちゃんの視覚補正によって見る。
見るべきでは無かった。
赤色のナイフを棒にくくりつけ、槍にして使っていた。
人の生命を使う生け贄召還。
そこにいたのは、嬰児だった。一度に十人貫けるように手足を結わえてあった。
じゅう かける じゅう・・・百
それが生け贄とは・・・
二組目に狙いを付けて、貫く。
やめろっ!
三組目、四組目、・・・
距離がありすぎてどうすることも出来ない。
貫くたび、ナイフに魔力が蓄えられている。
子供を赤ん坊を、なぜそんなに簡単に殺せるのか、混血だからか? 純魔族ではないからか? 兵士として、捨て駒として、育てたからか?
俺が着いたときには作業は終わっていた。
まだ続きます。




