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毛髪

 寄り道をして着いた砂浜は戦場だった。

 内乱なんてしてる場合じゃないのに。

 幸運だったのはまだ睨み合いの段階だったことだ。難民と漁師がこれから殴り合いを始めますとばかりに威嚇をしている。数は難民の方が多い二千人強、漁師は百人程だが飢えて痩せた難民と海で鍛えた漁師、数の優位を覆してしまいそうな勢いがある。

 それに本来ここで漁師に勝ったとしても無意味なのだ。難民達の目的は食料で漁師に分けて、いや恵んでもらうしか無いのだから。ここで争えば仮に今日の腹は満たせても、明日から元漁師という難民が増えることになってしまう。

 「リューちゃん。」

 宙に浮かぶ四つん這いの女の子と、それに乗った男。あからさまに変な物だが、それだけに高ぶった意識を沈静化させる。

 二つの勢力の真ん中に割り込む。背筋を伸ばして視線は遠くに、こちらが誰だか判らないように、不安を感じている人達の不安の方向を誘導する。

 よし、いまだ。

 リューちゃんから龍に、全長三十メートルの・・・

 よしよし、上手く驚いてくれた、腰を抜かした者もいるようだ。

 ・・・このまま龍から飛び降りて、と思ったのだが動けない。リューちゃんが降ろしてくれないのだ。なかなか乗ろうとしなかったことへの意趣返しか、状況が危険と判断して降ろすのを拒否しているのか。

 後者だと信じたい。

 仕方ない別のテだ。

 「よし! 起きろ寝坊助ども!」

 「うだぁ~」

 「ねむぃい~」

 「あとごふん~」

 「きょうはおやすみ~」

 「あしたもおやすみ~」

 「はたらいたらまけ~」

 俺の髪から頭だけだしてぶ~たれる。

 今朝身長7㎝になった精霊さん達、一夜に2㎝伸びるようだ。

 「終わりなのかな俺達・・・」

 



 「い~や~」

 「すてないで~」

 「わかれなぃい~」

 「いしゃりょ~」

 「おなかのこわぁあ~」

 「あのおんなのせぇねぇ~」

 何だろうこの緩い空気は・・・

 まあいい、俺は彼女達にデモンストレーションを命じた。彼女達の姿は、この世界の一般的な精霊とは違うからだ。

 炎の玉となって飛び回り火花をまき散らす。

 風が砂を巻き上げて渦となり、風が散って残った砂が踊るように動いて、わだかまった闇の中に呑まれる。闇を散らして光りが現れ、水の玉が回転しながら水粒を散らして虹を描く。

 虹を背景に六柱の精霊がドレス姿で現れて、スカートの端を摘んで優雅に一礼。

 悪くは無かったが、身長7㎝なので前の人しか見えなかったようだ。

 「代表者三名前へ!」

 話を聞くと直接の原因は難民達が塩田を踏み荒らしたとのこと、そういえば城で食べた魚は、塩で加工してあった。

 難民達には、漁師の塩造りや漁の邪魔をしないようにと、一方的に言い放った。

 ここから送られて来る魚がこの国の生命線なのだ。

 騒ぎ出そうとする難民の先を制して、自身で道具を作って漁をするように言った。

 材料も無いのに道具なんか作れないという反論は、あらかじめ予想していたので。

 「髪を切りそれで縄をなえば網が作れる。貝殻を削って釣り針を作れば、髪を糸に釣りが出来る。」

 龍と精霊の戦力を背景に言ったのだ、どこでも邪魔者扱いされ、あきらめることに慣れた難民達は、ちびた刃物を取り出して、言われるままに作業をはじめた。

 まだ続きます。

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