朝食
まったく、なんで俺がこの世界に召還されたんだろう。もっと頭が良くてカリスマ性があってリーダーシップのとれる人なんて幾らでもいるだろうに。
俺が溜め息をついていると、隣りでも同じように溜め息をついている。
「うぅう~つ! 裸エプロンがぁ~」
・・・・・・真面目に考えてる俺が馬鹿みたいだ。
「姉ちゃんまだ言ってたの?」
「だってだって新婚初日の朝だよ、一生一度だよ、裸エプロンは長く続く結婚生活の新婚夫婦にとって必要不可欠なものだろっ!」
「泣かない泣かない、だいたい姉ちゃん料理なんて出来ないじゃん。」
「結婚するまでに出来るようになってる予定だったんだよ!」
予定は未定か、よくあることだよね。
「それで御味噌汁作ってるとこを、こう背中から・・・これって乙女の夢だろっ!!」
「うん、まず二人で乙女の前提条件について考えてみようか?」
「なんだよ~ヤッちゃった女は乙女じゃないっていうのかよ~
あっそうだ! 何もあたしが作らなくてもいんだよね~」
「俺に作らせる気? 新婚初日から?
裸エプロンで?」
「そ~そ、んで、あたしが後ろからぁ」
「却下!」
朝食は魚である。早朝川を遡って来た船に魚が積まれていた。この都市が存続出来たのは海からの食糧供給があったからだろう。
城内にも畑はあったが、とても都市全体の食料を賄える広さとは思えなかった。
海からの食糧供給がこの都市の生命線だろう。
「フォリゼ姫、これまで海からの船が襲われた事は?」
「はい? 無かったと、いえありませんでした。
それと、私のことはフォリゼと呼び捨てにして下さいませ、王子。」
うわ、そうか俺、王子になったんだ。
現在、王位継承権第二位だそうだ。
「あ~あたしも」
「姉ちゃんは姉ちゃんだよ。」
「いやあん わたしのおうじさまっ♡」
「あ~ はいはい。」
あれ? リューちゃんの様子がおかしい。
食事にも手をつけてないし。
なにか、口をもごもごと・・・吐いた。
塊を吐き出した。これは羽毛が固まったもののようだ、ヘペリットかな?
リューちゃんは、何もなかった顔で食事を始める。
ヘペリットの中に光る物があったので、調べるとナイフだった。
羽爪を召還し操っていたナイフが二本。
昨日の戦闘で手に入れたのが羽爪と毛羅召還用のナイフが一本づつ。
最初に戦ったときに手に入れた毛羅召還用が一本。
このナイフも悩みどころなのだ。ナイフの材質もそうだが、柄の召還陣もだ。
技術水準がおかしい。
この世界はだいたい青銅器文明が主流だと思うのだが、このナイフはオーバースペックなのだ・・・そうだ。
「デルタミュー、このナイフの構造を解析してくれ。」
「アルミニウム55%チタニウム38%シリコン5%炭素2%が主成分です。」
速っ!
しかしこれで裏付けが出来た。
それにしては魔族の武器や防具の質が低かった。
その辺に攻略の鍵があるような気がする。
「フォリゼ」
「はい♡」
腕を掴んで抱きしめる。胸にあたってる。
まあこんなのも新婚の間だけだ。
「魔族について教えてくれ、とくに弱点について。」
「まさか、今度は魔族をハーレムにくわえる気か?」
「姉ちゃん! そういうのヤメテほんとになりそうで怖いからっ!」
「・・・・・・まさか」
「ほら、姫さんが信じちゃった。」
「でも、全ての魔族をモノにしてしまえば完全勝利ですよね。」
「無理だから、死ぬから。」
昨夜四人相手にして・・・大変だった。
懲りたとは言わないが。
「ああそう、弱点といえるかどうか判りませんが、魔族は繁殖力が弱いそうです。」
お~よくある設定だ。
「なにか具体的には?」
「妊娠期間が三年になるそうです。」
答えがあるとは思わなかった。
「人族は十月十日?」
「はい? およそ一年ですが。」
「さすが異世界。」
まさか・・・
思い当たる節がある。
いや、気づかないふりをしていただけか。
俺は昨日捕らえた兵士にあうことを決めた。
その前に腹拵えだ。
「おかわり。」
まだ続きます。




