詰意
精霊使いが道端で水を作って売っている。
薄い布の向こうには女性陣が華やかな声で話しながら着替えをしている。
花嫁衣装の仮縫いがおこなわれているのだ。
よくわからない圧迫感がある。正直に言います。逃げたいです。
王様は王様で「娘をよろしくたのむ。」とかいって、どこかへ行ってしまったし。
結婚なんてまだ早い、俺はまだ十五歳なのだ。抗弁したが「犯罪者奴隷のほうがよろしいですか?」といわれてしまった。
本気で逃亡奴隷になろうかと思った。
しかも、この世界は一夫多妻に寛容どころか、経済的に可能ならば推奨されているようだ。
その証拠に薄い布の向こうには、姫様、姉さん、リューちゃん、セアちゃん、ユシルちゃんに六柱の精霊達までいる。あと、デルちゃんも、全員俺の婚約者だそうだ。
異世界に来たばっかりで、地位も金も無いのに嫁さんだけゾロゾロ出来るって・・・
青い空を見上げて、そういえば昨夜も星が綺麗だったと、実験ついでにデルちゃんの翻訳機能を使う。仮契約で使えるようになった機能の一つだ。
「ちょっと聞いていいかな、この前雨が降ったのっていつ?」
「雨って何?」
はい?
「雨って雨だよ雨! 空から降ってくる水っていうか水滴。」
「あはははは、空から水が降ってくるはずないじゃん。ばかだな~」
「蛮森や北大陸ではそういうことがあるそうですよ。」
「え~すっごい。い~な~」
「まさかほんとにこの国では雨が降らないのか? 飲み水とかどうしていたんだ?」
「少なくとも私が生まれてから降ったことなど、ありません。水は導師様に。」
「それじゃずいぶん降って無いんだ。」
「どういう意味でしょう。」
「雨って見てみたい。水は布使ってた。」
「布って濾過しているのかな?」
「ろかってなに?」
セアちゃんならイメージで伝えられるので伝えたのだが、原理が理解できないようだ。
逆に布の使い方を教えてくれた。
「朝露か、いくら川が近いとはいえそれだけじゃ・・・」
しかし、雨も降らない、川には毒が流されている。魔法では一日で体重の半分ぐらい、朝露なんて微々たる量である。
「昔は森や畑があったのですけど。」
難民によってそれらは、失ってしまったのだろう。
「そういえば城外には大人がいなかったようだが、暗くなっても戻って来なったし。」
「海にいった。」
そうなると、もうここには戻って来ないだろう。
水が無い。人(戦力)も居なくなった。あとは指揮系統(王族など)が無くなったら。
「やばい、この国詰んでるじゃん。」
昨日の魔族のオッサンが、間諜じゃ無く斥候だったら・・・
俺には情報がたりない。
現状を理解し、わずかな可能性を探すため、俺は薄い布の向こうに踏み込む。
「あら、どうやら覚悟ができたようですわね。」
半裸で微笑む、お姫様。
どうやら俺の人生のほうが先に詰んだようだ。
副題、決意ではありません。
まだ続きます。




