状況
城塞都市、エウラドのテ。
テというのは町という意味だそうだ。このエウラドという国には町は一つしかないらしい。
村は幾つかあったようだが、残っているものはほとんど無いようだ。
戦争のせいだ。
この大陸は南西から北東に白銀山脈によって分断されていて、西側に人の侵入を拒む魔獣の領域蛮森、東側に二つの国、人の国エウラドと魔族の国ラフン。
十年前は三つの国だった。極東の国だったゼセイの東端から始まった魔族の侵攻は、三年足らずで中の国ノトまでも、その支配下とした。
エウラドは、まだ直接戦火には曝されていないが、難民が押し寄せてきた。
エウラドとラフンを隔てるキメ川は、その頃泳いで渡ろうとした難民の死体で埋まったという。
今でも川底には白骨があふれている。網をつかうと入ってくるそうだ。
さらに魔族達は、川に毒を流すようになった。
幼児や老人、体力の無い者から死んでいった。川を渡ることのできた者も・・・
食糧や飲み水を奪い合って、人族同士で殺し合いがおきた。
魔族は何時攻めて来るかわからず。どこからも救援など来ない。
争いを避けて蛮森に向かった者もいたそうだ。海から南の島を探して船出した者も・・・
城壁の中には、まだ兵士が健在で攻めるのは無理でも、守るのは可能だそうだ。
《魔族側は渡河作戦が必要だとしても、川全部守るのは不可能じゃないかな?》
「城内には、戦車隊の精鋭がいます。」
ちなみにタンクではなく、チャリオット(馬で引くほう)だそうだ。
たぶんそれでも無理だろう。
《魔族とは停戦してるの?》
「いいえ。交渉のできる相手ではありませんから。
かつては和平を結ぼうとしたこともあったときいていますが・・・」
いうまでもなく、あの青いオッサンが魔族である。少なくともスパイを送り込む程度の相互理解はあるということだ。
「しかし、たいした度胸ですね。」
《だから何度もいうけど、営利誘拐なんてしてないって。》
「では淫行目的だと。」
《事故だってば、不幸な事故!》
「ワタクシにあのような真似をしておいて、そのような言い逃れが通用すると思いますか?」
「本当なんだってば!」
あれ?
「セアちゃん セアちゃん?」
「もう疲れた。」
「これ食べますか?」
「わ~い!」
姫様がセアちゃんを懐柔する。
もう話すことはできない。セアちゃんが食べ始めてしまったから。
ちなみに今俺は、周りを姫様の部下の兵士に囲まれて、槍を突きつけられている。
動けないのをいいことに、あっという間にこうなってしまった。動けないのは戦闘終了を確認されたとき、終了と答えてしまったからだ。結果は空間固定と再接続開始。
動けないという俺を、十人ががりで動かそうとしたが、無理でした。
さすが俺のスマートウエポン。
さてはて、俺の運命やいかに?
ほんとにどうなるんだろう。
あ、姉さんはスープ飲んでる・・・
ありがとうございます。
まだ続きます。