「という訳です」
今回も微妙に長いです
※1/13指摘された誤字脱字を直しました。
「そういえば、この件はいつまでに片付けないといけないんですか?」
ウィンシーがワイバーンの竜田揚げを作っている頃。首都インタリア、冒険者ギルド本店の一室に昨日の面々はまた集まっていた。竜麻は期限を聞かされていない事を思い出し聞いてみたら、返事をしたのはメイノルだった。
「国王に聞いていないのか?」
「いえ、聞いてません」
「そうか、じゃあこの国の第二王女がここから西にある帝国の学園に留学中なのは知ってるな?」
「(やっべ知らねーよ……)はい、それは聞きました」
さらっと嘘をつく竜麻。な、なんてわるいやつなんだー。
「その第二王女が一時期帰ってくる時にその近くを通るんだが……どうも最近キナ臭くてな」
「はぁ、と言いますと?」
「灰色の巨人について情報を集めていたんだが、この頃一部の貴族から謀反を企んでいる情報を得てな。近々反乱が起きるかも知れんのだ」
「(なにそれ国家機密じゃん!?この人そんな秘密言って良いのかよ!)
そうだったんですか、それで……」
彼のポーカーフェイスはそのくらいじゃ崩れない。心情を気取られぬように少し深刻そうな表情をする。
「ああ。一応国王に伝えたんだが……。王女が心配になった国王から言われた期限は
昨日までだ」
「過ぎてんじゃん!?しかも俺国王に『倒してきてねー』って言われたのも昨日なんですけど!?無茶ぶりじゃん!」
ポーカーフェイス崩壊。時間にうるさい日本人は時間ネタに弱いのだ。たぶん。
そこにオルスがなだめに入る。
「心配するでない、過ぎてしまった物はしょうがないのじゃ。それに今日はもう遅い。今から行くと間違いなく森に迷ってしまうぞ」
「……明日から本気だす」
まるで自宅警備員のような発言をするレイミー。それに対して竜麻はこんなんでいいのかと視線を周りに向けても、誰も反対はいないようだ。
「で、では明日の朝から森に行きましょうか」
その言葉に一同は賛成したのであった。
「なんか釈然としねぇ……」
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「いただきます」
「神よ感謝します」
決意を新たにし、人前でも食欲が不振にならない程度に少女に慣れたウィンシーは手を合わせ、少女は神に祈りを捧げてから食事に取り掛かる。
そしてウィンシーはスープを、少女はパンを食べようとしたとき、少女は疑問を口にする。
「あの、ヘルムは脱がないんですか?」
「ん?」
シュカッ!
ヘルムは滑らかに音を発てて口元を開いていた。
「あ、いえ…。何でもございません。すみません」
「?」
それからカチャカチャと食事の音だけが響く。食事が終盤に差し掛かりそうな頃、少女がウィンシーに問いかける。
「聞かないんですか?私が何でこの森にいたのかを……」
「……、いや聞こうと思ったん、だけど……、疲れてるかなと思って……」
実際はウィンシーが精神的に疲れて休みたかっただけだったのだが。
「いえ、大丈夫です」
意外と体力のあるお嬢様だった。そして、少女は重要な事に気づく。
「やだ、いけません。まだ貴方のお名前を伺ってませんでした!」
本当に今更だが名前を聞いてないことに気が付く。
「あ、ああ。そういえばそうだった…。ウ、ウィンシー、です。君の名前は?」
「私の名前はエルリーナ・リスピー・ペーチノー。この国の第二王女です」
「この森って国の領地内だったんだ……。あ、ホントだ、東側に沢山人の気配がする……ぅぅ、気分悪くなってきた……」
「……。あ、あのー、もっとほかの事で驚かないのですか……?」
実の所、ウィンシーは彼女が王族であることは知っていた。何故なら服の耐久度を調べる際に【鑑定】をしてその服が【王族の服】と出てきたからだ。この時はどっかの貴族だろうと思っていたので流石に驚き、同時に「ナァハッ?!」と小さく叫んでしまった。
「服を【鑑定】して王族だって気づいた……といっても洗濯している時にだけど……」
「そ、そうですか……」
もっと驚いて欲しそうな目をしているエルリーナ。しかし、残念ウィンシーにそんな事を望んでも酷である。
「それ…で、なんでこの森にいたの?」
視線に気づいたが何を思っての視線か分からないウィンシーは話の筋道を正す為に質問した。質問した!彼にとってこれはファインプレーだ!
その質問にエルリーナは真剣な顔をする。
「ええ、では話します。」
エルリーナは語りだす。
「私は隣の帝国にある学園に留学していました――――――
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帝王アイスピル・バナードが治める帝国ヨーグナル。そして世界最大とも言われるショノモリ学園にエルリーナは学業をするため通っていた。
今は気候が暑くなる時期の前であり長期的な休みの期間でもある。帝国出身の人はそのまま自分の家や領地に帰り、他国から来ている人の多くは帰省をするので学園は少し閑散としている。
エルリーナもこの時期になると自国に帰るように父親の国王に言われていたので、学園から宛がわれた自室で紅茶を飲みながら迎えの馬車が到着するのを待っていた。
すると扉からノックが聞こえ、使用人の声がする。
「第二王女様お迎えに上がりました。御支度は出来ておられますか?」
「出来ています」
エルリーナは返事をしてから自室を出る。
馬車の所まで案内されそこにはある男が待っていた。
「お迎えに上がりました。エルリーナ王女様」
「ウーラ伯爵。ご苦労様です」
エルリーナを待っていたのはウーラ・ギルモンド伯爵だった。彼は昔から黒い噂が絶えず、国王からの手紙にも気を付けるように言われていた人物であった。
馬車は豪華な物と質素な物とで二つあり、質素な方にアイテムボックスに入りきらなかった旅の道具を置いているのだろう。
「ではこちらの馬車へお乗り下さい」
「ありがとうございます」
豪華な馬車へ案内され乗り込むがウーラ伯爵は一向に乗って来なかった。
「ウーラ伯爵はどちらに?」
「伯爵様なら後ろの馬車に乗りましたよ」
エルリーナはてっきり同じ馬車に乗ってきて自分を売り込むものだと思ってうんざりした気持ちだったが、御者の人によると後ろの馬車に乗ったらしい。であれば楽でいいと気分が軽くなる。
「では出発しますね」
こうして馬車は出発し、帰路の旅路も順調に進んでいった。
だが首都近くの森の近くに差し掛かった時にエルリーナは違和感を感じた。
ウーラ伯爵は出発以来話してこようとしないし、使用人も見知らぬ人たちばかり。しかも馬車は森の中へと入っていく方向だ。
逃げる事を考えたが、既に森に入ってしまい武器の類いをアイテムボックスの中に入れていなかった。これでは森のモンスターに襲われた時に対処できない。
森の奥へ進んだ後急に馬車が止まる。馬車から降りると同時にウーラ伯爵も降りてくる。
「どういうつもりですか。ウーラ伯爵」
「それは勿論、貴女様の暗殺です」
「こんな堂々とした暗殺、事が明らかになるのは明白です!」
罠に貶められ静かに怒るエルリーナ。
「伯爵様、私達はこれで失礼します」
「ああ、だが馬車は置いていけ」
御者や使用人達だった人等はそそくさと森の中へ消えて行った。
「いつからこんな事を企んでいたのですかっ……!」
「死に逝く貴女に言っても時間の無駄ですが……。そうですねぇ、計画を実行したのは一週間ばかり前の事ですね。この森にデビルゴートウルフの召喚が成功したのが切っ掛けですね」
エルリーナやウーラは知らないがウィンシーがワンパンで仕止めたアイツである。
「モンスターの召喚!?それは大昔に失われた技術のはず ……」
「我が一族はこの日の為に研究をしていたのですよ……。大昔の遺産を!!」
ウーラは恍惚とした表情で舞台に上がった俳優の様に両腕を広げる。しかし、何かを思い出したのか苛立った表情を浮かべる。
「ただ、けしかける役目のデビルゴートウルフは数日で冒険者に殺されてしまい、次に召喚したウォーターテイスティンガーもその日のうちにやられましてね……。全く忌々しい冒険者め……!」
もしかしなくても、戦闘描写すらカットされたアイツである。
「こんな事をして……、何が目的ですっ!」
「戦争ですよ」
エルリーナは今聞いた事が信じられなかった。
「私を殺した所で、戦争なんか起きません!」
「それは私が貴女を殺したら、でしょう?」
「貴方まさか……っ!」
「ええ、帝国に殺された様に見せかけます。どうやって帝国に罪を擦り付けるかは私の知った事ではありませんけどね」
馬車へ手を向け、ウーラは魔力を込める。
「私は貴女を殺すのが役目ですか、らっ!」
馬車が光りだし次の瞬間、木特有の壊れた音が森に響く。
そこには赤い鱗を携えたワイバーンが現れた。
「ギャオオオオオオオオオオォォォッ!!」
「ハハハッハハハハハッ!これで我が主の望む事が起きるぞ!」
「お父様がそんな事を望む筈がございません!」
「ほう、ワイバーンを前にしてまだ気丈に振る舞えますか。しかし私の主はこの国の国王ではありません」
「まさか帝国がっ?!」
「残念ですが違います。我が主の名はラグゾビュート様だ!!」
「(だ、誰でしょう……?)もしかして……、魔王!?」
「ええそうです!我が主は戦争による混乱がお望みなのです!」
他にウーラから情報を得ようと質問を考える。今なら「冥土の土産に教えてやろう」状態なので質問したもの勝ちだ。
「さて、私は王国へ帰ります。貴女を殺した事をある人へ報告しないといけませんので」
もう殺したつもりでいるウーラ。それもそうだろう、何故なら騎士が十人以上いないと勝てない相手に少女一人を殺すように命令するだけなのだから。
「ワイバーンよ。そこの娘を殺しておけ」
ウーラは懐から羊用紙を取りだし破く、と同時にウーラの姿は何処かへ消えてしまった。
「グルルルルゥ……」
のしのしと近づき口を開けるワイバーン。
「い、いや……」
力無く声を上げ逃げようとするが、腰が抜けて上手く動けない。
ワイバーンの口がエルリーナに迫る。
「……のお…は竜田揚げぇぇぇえええええ!!うっひゃぁおおお!!!」
「ギャオオオオオオオオオオオオオンッッッ?!!」
「へい」
エルリーナはいきなりで何が何だか分からなかった。さっきまでの脅威であったワイバーンは首から上が無くなっており、ただ言える事は目の前にいる黒い騎士がエルリーナを助けてくれたという事だけは分かった。
「ふふふ~んふんふん」
騎士は下手くそな鼻歌を歌いながらもワイバーンを解体していく。
そして声を掛け、
「あの…」
エルリーナとウィンシーは巡り合ったのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「という訳です」
「成る程…。……急いで帰った方が良くない?」
「そうですね」
「今から、帰る?」
「今はもう暗いです」
「…………」
「明日、帰ろうと思います。ですが一人ではこの森は危険ですので……、一緒に来てくれませんか?」
「……………」
今出た方がいいと【直感】が訴えるがエルリーナを説得できる気がしないウィンシー。
「分かった。明日の朝、この森から出よう」
「っ!ありがとうございます!」
ウィンシーはエルリーナに今日森を出ない事に釈然としないながらも明日ついていき、この森を出てまた別の居場所を求める事に決めた。
・滞在期間約9日
今回はヒロインの名前が出れました。なんで俺は国名をあんな適当にしたんだろう。
眠気と尿意に任せて書いたためおかしな部分があるかもしれません。
明日くらいに推敲したいです。
それと少し忙しくなるかもしれないので不定期更新で行きたいと思います。