「oh………………No
なんと評価ポイントが入ってました!
読んでくれている人がいるとわかるととても嬉しい気持ちになるものですね。
今回は自分的に長めです。二話文くらい
※1/1 首都に名前を追加しました
※1/8指摘があったサブタイと台詞と誤字を直しました。
※1/13指摘された誤字を直しました。
「グルルルルゥ……」
「ひぅ!?なっ、何でデビルゴートウルフが森のな、中に!?」
本来このよだれ垂らした角の生えた狼は『地下墓場』の最下層付近に群れで生息しているLv.80台のモンスターで、回復魔法を唱えていればガンガン成仏してしまうアンデット系モンスター達と違ってこの角狼は普通の獣であり、山羊の悪魔をただの山羊と勘違いし食べてしまった狼が力を手にして角が生え、かわりに日光が少し苦手になってしまった。その狼の子孫がこのデビルゴートウルフ。『地下墓場』にとってヒーラーからダンジョンを守るとってもにくいあんちくしょうである。
「うわぁぁぁぁぁあああああっ!!!キモいっ!!」
デビルゴートウルフをまじまじと見て叫んでしまい、【挑発】が発動したのかデビルゴートウルフが飛びかかってきた。
「ガァアアア!!」
「うわっ来るなぁ!」
その身を喰らわんと襲いかかってくる狼を勝海は体を転がして避ける。避けるのはいいのだが勢い余って頭に木にぶつかり木がへし折れてしまう。
「いっ!?……?いたく、ない……」
普通の人が木がへし折れる勢いでぶつかったらその身体は粉々の木っ端微塵になるだろうが、勝海は頭をさすりながら改めて己のステータスの凄さを知った。
よろけながら立ち上がり、このまま殺されてしまう訳にはいかない…。そう思った勝海は自分の職業のスキルを発動させる。
「ぐ、ぬぬぬ……。【生きる魔装〈パクッと大佐〉】……!」
変化は一瞬だった。鈍く光ったかと思うとそこには3mに届きそうなくらいの灰色スキンの巨漢がいた。
人間にしては大きすぎる腕、割れた腹筋、腰には深緑の迷彩ズボン、身体を支える丈夫な脚。そしてスキンヘッドにデフォルメされた丸い白眼が二つ、ギザギザの口を大きく開け、天高く叫ぶ。
「Noooooooooooooooo!!!!!!」
【絶対採取くん】魔装解放。通った後には採取物が一切残らないと怖れられた魔人。その名も、【パクッと大佐】。
「キァン!?」
叫んだ威圧によって怯むデビルゴートウルフ。その隙を見逃すほど甘くない勝海は身体を捻り、インパクトを乗せた拳をデビルゴートウルフの頭側面に叩き込む!
パァァンと音が鳴り、頭から上を失い倒れる首なし狼。首から血が吹き出し地面を汚す。
(グロッ!?)
これ以上モザイク処理が必要なくらいの光景は見たくないのでデビルゴートウルフの死体をひょいと高く持ち上げ、
ガバッ!バクンッ!!
頭から(頭は無いが)ペロリと食べてしまった。
この行為故につけられた名前が【パクッと大佐】。食べる事で自動で【解体】をしてくれてアイテムボックスに仕舞ってくれるとても便利な機能が備わっている。最初は【採取ロボ完成型】という名前だったが、昔受けた採取系クエストの依頼人のいたずら妖精にこの行為を見られて勝手に名前変更させられ、しかも変更不可設定。なのでやむなくその名にあまんじている。
勝海は今しがた倒したデビルゴートウルフについて思う。
(何で発見が遅れたんだろう……)
ゲームプレイの勝海はいつも【気配感知】や、他にも見ただけでも相手や物の情報が解る【鑑定・観察】が発動するものだがその様子はなかった。しかし【オーバーリアクション】や【挑発】などのいつもは使わないスキルは発動していた。
不思議に思い、ステータスのスキル欄を見てみると、
(……パッシプスキルのOn/Offが反転してる…………メンドクサ)
とりあえず勝海は全てをOnにする。【直感】!【看破】!【気配感知】発動!さっそく感知。グルンッと首を回すとそこには、
「なっ!?」
人が、
『!』
「oh………………NooooooOOOOOO!!!???」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
時は少し遡り勝海がまだ日光に目蓋がじっくり焼かれている頃。
ぺーチノー王国の首都インタリア、そこにある冒険者ギルドの本店にて、ある話し合いが行われていた。
「はぐれのデビルゴートウルフが出た?」
酒場を改造したような場所。その奥にあるカウンターに長い黒髪を後ろに結った女性の凛とした声が響く。しかしその声は後ろの活気ある酒呑み達の騒音に紛れこんでいった。
「はい、西の森にいるはずのないデビルゴートウルフが現れ、現在、西の森に閉鎖勧告が出ています。その為初心者の冒険者方が薬草や木の実を安全に収集できなくなってしまったんです…。Aランクの冒険者の方々や、しかも腕の立つ人達にも声をかけてますが、なかなか受注してくれないんです……。このままでは力のない冒険者達が稼げずに路頭に迷ってしまいます……」
「それで私に話が来たと」
「そうなんです。受けてくれませんか……?メイノルさん」
メイノルと呼ばれた、隠熊の毛皮から作られた真新しいライトアーマーを着込んだ女性は頷き「わかった」と了承する。
「ありがとうございます!」
「さっそく行って見るとしよう。昨日装備が出来たばかりで性能を確かめるにはいい機会だ」
そうして受注書にサインしギルドを後にする。
森へたどり着いたメイノルは【潜伏】を発動し慎重に森へ入る。隠熊のライトアーマーによりさらに気配を隠していく。
(このまま散策を続けて見つけ次第、【暗殺】を使おう)
腰にさしている短剣を握り周囲を確認しながら森の奥へ進む。
メイノルがAランクの冒険者になれたのは、【潜伏】による高いステルスと【暗殺】による強力な一撃による。一対一では状況によるが高確率で勝利できる職業[くの一]。この依頼を受けたのも相手がはぐれであるから受けたのだった。
くの一と言うとライトアーマーより忍者コスチュームを思い浮かぶが、それは最東の島国の地方でしか一般的でなく、この国の街中では目立ってしまう。つまりジャパニーズNINNJAではなく西洋風の忍びである。
森を進み、デビルゴートウルフの痕跡を見つけ、進んだであろう獣道をゆっくり歩く。すると、
「うわぁぁぁぁぁあああああっ!!!キモいっ!」
(まさか勧告を無視して入った奴がいるのかっ!?)
少年のような叫び声が聞こえ、声の方向へと走る。走ってももう叫び声の主は助からないだろう。しかしまだ間に合うかもしれない。勧告を無視して入った愚か者を助ける義理はないが、彼女はそれを進んで見捨てるような性格ではなかった。
声がした辺りに近づく。その先は少し開けておりもう少しの所である咆哮が聞こえた。
「Noooooooooooooooo!!!!!!」
身がすくむ程の音量と気迫。
(デビルゴートウルフはこんな咆哮をする程の強者なのかっ……!?)
しかしその考えはすぐさま改められる。
覗いた先には、灰色の巨人が腰の入った拳をまさにデビルゴートウルフに叩きつける寸前だった。
何かが破裂する音が聞こえ隠れている木のすぐ横の木に何かが勢いよくぶつかった。だが目の前の巨人から目が離せない。すると巨人はデビルゴートウルフの死体を持ち上げ一気に食べてしまった。
(な、何なんだ!アレは!?)
食べられたのがもし自分かと思うとゾッとする。
勝てない。アレはデビルゴートウルフより更に別格だ。そう自分の【直感】が告げていた。持ってて良かった有り難う【直感】!!
(……今のうちに逃げないと殺される)
幸いアレは【潜伏】が効いており見つかってない、しかもぼーっと虚空を見ている。メイノルは安堵していた。
だが、その安堵も口の中に巻き戻される。灰色の巨人はグルンといきなりメイノルを見たのだ。目と目が逢う。
「なっ!?」(バレた!?何故っ!?)
寿命が縮む思いだった。しかし、
(しかし自分はまだ終われない!)
ここでこの灰色の巨人に殺られたらまた第二第三の犠牲者が出てしまう。
(なんとか逃げねば……!)
彼女はAランク冒険者。そう簡単には諦めない!決意を決め、相手の行動を注視する。
『!』
ビックリマークが巨人の頭上に現れた。
「oh………………NoooooooOOOOOO!!!???」
きょじん は にげだした !!
「は?」
メイノルは訳が分からなかった。残されたのは半壊したデビルゴートウルフの頭と、巨人が走り去った後落ちた『!』、そして謎に包まれたメイノルだった。
巨人がいた証拠を拾い、
「とりあえず、……報告しよう」
メイノルはギルドへと帰って行った。
今回は戦闘(笑)回になっちゃった。まあいいか。ちなみにサブタイは故意でやってます。
果たしてメイノルはヒロインになるのか!
折角名前をつけたので今後も出していきたいですしね。
てか主人公とヒロインをくっつけるのってムリじゃね?(えっ)