「ウィ!」
感想であがったネタを使わせてもらいもす。
8/18誤字脱字文を訂正しました。
[勇者]。それは国が魔王による危機に召喚され、人々を助ける存在。ペーチノー王国に魔王を討つべく召喚された新島竜麻一行。その存在は世界に光をもたらす……。
「あつっ!あつあつ!!ちょ火!熱い!!!」
そんな勇者新島竜麻は現在、城内にある兵士等が使う訓練場のキャンプファイヤーの様に燃え盛る炎の中、遥、里沙、真実と共に正座していた。
「竜にぃ……、もうちょっと我慢しようぜ……?ねぇちゃんなんて眠りそうなくらいうとうとしてんのに」
ガシャーン!パリーン!パリーン!ポサッ
「おかしいだろ!!なんで俺達油足されながら火炙りにされてんの!?」
パリーンパリーン!……ガシャーン!
「おかしくねーよ。……あ、【火軽減】がついた」
火への耐性をつけるべくウィンシー監修の元、炙り焼きの修行をしていた。
ウィンシーの主な仕事は油の継ぎ足しと体力管理、つまりは油瓶とポーションの瓶を投げつけることである。そしてたまに酸素草を加える事も忘れない。
今使っている油は【油蛙】から取れる【蛙油】。火に滅法弱く、とてもテカテカしている1mくらいでデカイ緑蛙だ。近くで見ると気持ち悪い。
「あついぃぃ……。ねー里沙ちゃんあとどれくらいぃ?」
「うーん、最低でも【炎軽減】くらいにしてーから後……」
「後、六時間くらいかしら」
ガシャーン!パリーン!
「えぇぇ!む、むり!そんなに座れないって!!」
パリーン!パリーン!パリーン!パリーン!
「じゃあもうちょっと速めましょう。ウィンシーさーん!そろそろ【竜油】にしてくださーい!」
遥が言うやいなや、高級そうな土瓶が投げつけられる。それと同時に炎の火力も格段にあがった。
ウィンシーが造った初級の耐火性があるローブでも少し焦げ付きが出てくる。
【ガマ油】からワンランクどころかフォーランクくらい火力アップである。流石にこれは不味いと思った遥だが、ウィンシーが止めないのでまだ安全をキープしていると判断する。
少し離れた場所で瓶を投げているウィンシーの目には遥達の体力の減少の速度が数値としてしっかりと見えていた。しかしウィンシーの顔は真剣そのもの。……霞んで見えないが。
【竜油】の中でも低いランクの油なので気を緩めなければ安全。つまり気を緩めるとウィンシーの監修でも危ない。
「ふっ」
パリーンッ!
・
・
・
時間が過ぎていき四十分くらいでようやく【炎減】が四人についたので終わりにする。
「ど、どうぞ」
ウィンシーがマネジャーの如くタオルと特製の氷結飲料水を四人に渡す。
「くぅ~っ……!喉にシャリシャリとくるこの感覚はたまんねーぜ!」
「そうねぇ。じゃあ私達は着替えてくるから」
「覗くんじゃないわよ!」
女性陣が更衣室に行き、ウィンシーと竜麻だけが取り残される。エルリーナとカルローネも居たのだが、熱さに耐えきれないのと、神話人ヤバい。と拷問に等しいこの訓練に怯えてカルローネが逃げ出したのでエルリーナはそんな彼女を心配して共に訓練場へ出て行ったのだった。
つまり今訓練場内にはウィンシーと竜麻しかいない。
「…………(会話が無いな)」
「…………(どうしよう、これまでの成果を試す時なのに……)」
お互い無言の中、どう切り出していいか分らずにた。
「な、なあ」
「っ!?……なにですか?」
「この飲み物おいしいな。どうやって作ったんだ?」
「それは……、【氷鋼結晶】を粉々に砕いて、凍らないように【謎の液体J】を調節しながら果実を搾って出来るんだっ……」
「(なんか聞き逃せないワードが出てきたけど大丈夫、俺は難聴だ。聞こえない聞こえない……)
そ、そうか」
おいしいと言ってしまった手前、残すということがし難くなってしまった竜麻であった。
腹を括り一気に飲み干す。
【謎の液体J】を頭から離せないでいるままに口から体内にシャリッと体を冷やしていく。
(悔しいけど…うまい……)
「そう言えばウィンシーさんって―――「ウィ!」
「……うぃ?」
突然鳴き出したウィンシー。竜麻は何かしてしまったのかと心配になった。
「ウィンシー……でいいよ」
「そうか?じゃあ俺は竜麻って呼んでくれ」
「うん……うんっ」
なんとウィンシーの方からアタックを仕掛けた!!これは人と接する技術が上がっている証拠なのだろう。
名前で呼び合う人はリアルでは皆無に等しかったウィンシー。『リトルフリーダムオンライン』では数えるほどはいたのだが、ある意味普通の人間の友達、かつ男なのは竜麻が初めてかもしれなかった。
これまでの『リトルフリーダムオンライン』で親友と呼べるであろう人たちの出会いを思い出す。
~回想~
『お前強そうだな、俺は龍の国の皇帝になる男バルナクロス!勝負!!ってオイ!逃げるな!!』by龍の国のドラ王子
『ねぇ、私の人形になってくれない?』byいかれた人形使いのプレイヤー
『お菓子ちょーだい!』by放浪魔王
『お前さんに死に方を選らばしてやるよ!銃殺か!磔か!海の藻屑になりな!!』by女海賊船長
『美とは素晴らしい……。だが時に残酷だ。この意味が分かるかい?なぜならこのジカ――――――~回想終了~
まだ他にも親友と呼べる人達がいたのだが、なんか最後余計なものを思い出しかけ途中で無かった事にしておくウィンシーであった。
(皆元気かな……)
龍族は長生きだが戦闘狂の気があるため短命だ。彼は無事に皇帝になれただろうか心配だった。自分より強い物に挑む性格だったので今も生きているかが不安でちょっと泣きそうになるウィンシー。一応彼は強かったのだがウィンシーとの勝負ではいつもボコボコにしていたので、どうも心配心が抜けなかったのだろう。
プレイヤーの人形使いはここにはもういないだろうと考え、一週間お試し人形をした事を思い出した。自分の武器である人形にプロレス技等をかけて周りに攻撃するスタイルだったのだが、何時までもウィンシーが人形をする訳にもいかないので代わりの人形を一緒に製作したりもした。
小さな男の子の姿をした無邪気な魔王は、ダンジョンで命の固定化をせずにあっちへフラフラこっちへフラフラと自由気ままに旅をして、月に四、五回会うか会わないか程度の付き合いだったが、助けられた時も有れば助けた時も有り、とても感謝している。彼は今でも何処かをふらついているだろう。
女海賊は出会いが最悪だったが、危険海流区域に向けイカダで単身挑んだウィンシー自身にも非があった。彼女は無謀に見えるウィンシーを助ける為、捕らえて浅瀬近くで放す気だったのだが、空鯨に襲われて撃退した事によりお互いのわだかまりが溶け、仲良くなった。と言っても彼女は人族なのでもう亡くなってるだろう。ウィンシーは悲しくなった。
「うぅ……ぐすっ」
竜麻達も魔王を倒す旅に出て行く。その過程でこの普通の勇者が力尽きてしまうかもしれないとウィンシーは思い、更に悲しくなってしまう。
「えっ、なんだ急に!?俺何かしたか?!」
急にぐずり出したウィンシーに竜麻は戸惑うが、ウィンシーが顔を上げ、真っ直ぐ……とは言わないものの竜麻を見て宣言する。
「簡単に死ねると思うな……よ」
「待て!なんか俺悪いことした?!」
ウィンシーにとっては親切心からでた言葉だが、字面が凶悪……。成長したかと思えばまだまだなウィンシーであった。
「ふ~、スッキリしたぜ。おいウィンシー、次は何すんだ?」
助かった!と竜麻は里沙達を女神でも拝むかのように膝をついて指を組み涙を流していた。
もう少しでウィンシーに精神的、肉体的ともに 健全な訓練を受ける所だったのだが里沙達に助けられた竜麻であった。
「次はこれ」
取り出したのは料理。運動(?)した後にはお腹がすく物。
ゴクリと竜麻と実菜が喉を鳴らす。
「あぁ。次は毒か」
そんな里沙の呟きに二人は「え?」と聞き返す。
「毒入っているのか……?」
「こんなに美味しそうなのに……、勿体無い!」
勿体無い精神の日本人二人はこれから行われる事を予期していなかった。
「何いってんだ。食べるんだよ」
「「…………」」
固まる二人。二人を置いて訓練場に机と椅子等を次々と並べていくウィンシー。
並び終えていつの間にか固まっていた二人は席に座らされていた。
目の前には美味しそうな料理の数々。
里沙と遥はもう食べている。毒入りと知りながら。
「じゃあ……、始める……」
白いローブを身に纏い空中に魔法陣が現れ、それに魔力を籠め始めたのか強く輝き出す。
【黒靄の鎧】と対となる――――と魔装自身が勝手に自称している――――【白霧のローブ】を着こんで霧状の魔力は魔法陣をさらに強化していく。
(あ…、範囲の領域を広げすぎちゃった……)
状態異常と体力回復、自然治癒の向上の役割を果たす魔法の霧。本来ならその他にも防御の上昇なども付くのだが、今回は必要ないと判断し人命優先の効果に集中した物となっていた。
そんな僧侶も裸足で逃げ出す程の回復魔法が、どのくらい広げてしまったかというとこの国をすっぽり覆ってしまうくらいに癒しを施すほどだった。
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ペーチノー王国の片隅で病に侵されている父親とその娘が別れの時が迫っていた……。
「ぱぱ…、しんじゃうの…?」
小さい少女がベットに掴まり父親の痩せ細った姿に涙をうかべながら問う。
「ははは、まだ平気さ」
そう言うものの、その命はもう少しで尽きようとしている。
傍らには、
『あー、もう少しで逝ってしまいますねぇ。あと三分十二秒ですねぇ。別れの挨拶は良いんですか?』
と、腕時計を見ながら黒いフードの死神が居すわっていた。
何時もなら死去した後に魂を回収するのだが、どうやらこの死神は仕事が少ないのか早めに迎えにきたようだ。
「…………」
男には死神が見えているが少女には見えていない。
彼はあの世の案内人に二コリと頬笑む。ただそれだけが返事だった。
『はぁー、にしても不幸でしたねぇ。この病、治す方法なんてそれこそ聖女さんでも治せませんねぇ。可能性があるならフェニックスの涙が原料のポーションくらいですしね』
時計を見る死神。
『あと十分四十びょ……は?』
みるみる寿命が延びるのを見て、これは異常だと男の状態を確認すると、
『なななな!』
原因は皆の知っての通り、ウィンシーの広域回復の効果だ。死神も直ぐに外の様子がおかしい事に気づく。
『もしもし死神のアーグレイです!この魔法陣は何処から誰のっ………………今何と?』
直ぐに死神は冥天事務所に連絡をとり原因を知る。
天界の最高神リヨ・クチヤが名を聞くだけで産まれたての小鹿の様にぷるぷると震えあがる。
地獄の獄牢神コウ・クチヤはまるで太陽の光が届かなくなり凍えてしまったかのように歯が噛み合わなくなる。
その名を口にするのは彼らの前ではタブーとなっている。
『拙いです…、拙いです、拙いです!今すぐ上にそれとなーく伝えるんですよ!!いいですか!間違ってもその名前は言ってはイケませんよ!!』
彼女も一度ウィンシーを見たことがあるのだが、その姿は人間のソレでは無かった。
人でも無く、モンスターでも無く、化け物でも無く、悪魔でも無く、天使でも神でもない。
その姿は鎧。
幾万の怪物の群れを蹴散らすため、鎧が歩き、戦っていた。
それがアーグレイから見たウィンシーの感想だった。
『ってああっー!!もう寿命がこんなに!?おーい私みえてますかー?!』
もう男の命は完全に延びきっていた。
『もぉー!!だからあの人は嫌いなんですよー!!……そりゃあの時は助けてもらいましたが、人の仕事を無くすのは信じられません!!』
この他にも似たような事例が起きていたので、空に映る雲のような魔法陣から『恵みの雲』と名付けられた。
もう、少女の父親に死神は見えない。
今回は勇者達が燃えましたね。
へ?期待してたのとちょっと違うって?
……。
まぁそれは置いといて、ウィンシーの認識個体数が増えている事にお気付きだろうか。耐性ついてきました。やったねウィンシー友達増えるよ!
ちなみに焼き修行の位置関係はこんな感じ。
ウ ウ
↘ 炎 ↙
炎里炎
炎竜炎実炎
炎遥炎
↗ 炎 ↖
ウ ウ
ウィンシーはグルグル回って物を投げてます。
ポーションは飲むか、液体がかぶれば回復します。
酸素草は潜水する際に口に入れて食むのが一般的です。
一束一時間の酸素排出。たまに酸素中毒で死にます。怖いですね。




