「むぬっ」
どうしよう。間章のクセにこの章なげーです。
5/18指摘された誤字を直しました。
どうしようと呟いた後、とりあえず部屋を綺麗にして自分の龍鱗や龍角をアイテムボックスに入れてからエルリーナをベットで寝かせ、姫の悲鳴で駆けつけた兵士の皆さんが集まる気配がし、ウィンシーはベットの下でに隠れて気配酔いをしてそのまま気を失ってしまい、そのまま朝になる。
パチリとウィンシーはとても窮屈ながらも安心できる真っ暗な空間で目覚めた。
(ああ、ベットの下で気絶したんだった……)
狭いながらも木の香りがするベットの下はウィンシーにとって安寧の揺り籠、絶好の寛ぎ空間だった。しかしここに何時までも閉じこもっていてはいけない事を思い出しベットを少し傾け外に出ようとする。
「きゃ!?」
小さい悲鳴が聞こえ、一体誰だ……?と、のそのそとベットから這い出てたらさっきまで寝てたであろうエルリーナと目があう。
「え……なんでここに」
昨日自分で寝かした事をスッパリと忘れていたウィンシーであった……。
「その声……もしかして…ウィンシーさん……?」
「そう……だけど」
「ウィンシーさん……、
素顔を初めて見ましたがとっても可愛らしいですね!それにその濁った瞳……、吸い込まれそうでキケンな香りがしますね!」
「へ……?あ」
そう、ウィンシー初の顔見せ。その感想は誉めているのだろうか?
そして彼は今ショタエルフモードでもあったので、
「あれ?でも背が縮みました?それにしてもエルフの方だったなんて、道理でフェイさんがウィンシーさんを気にかけているのですね……」
「えと……これは…」
それは全くの誤解なのだがウィンシーは訂正出来ずにいた。
それに素顔を見られることにウィンシーはなんだか恥ずかしくなって適当にアイテムボックスから取り出した粗末な鉄仮面をかぶる。
「ああっ!もっと素顔を見せてください~」
鉄仮面を取ろうとエルリーナが手を伸ばそうとした瞬間。
「むぬっ」
ウィンシーはバク宙三回転をした……!!
一回転目はウィンドウを開くのを確認後、種族欄を叩き、
二回転目に【アクセルボディ】を発動、肉体の変化スピードを加速させ、
三回転目には完全にヒューマンの姿になってから、
着地した時には既に【貴方はだぁれ?な燕尾服】に着替えていた。
……こいつはもう曲芸師で食べていけると思う。観客の視線に耐えれればの話だが。
エルリーナは顔を隠したウィンシーに頬を膨らませ抗議する。
「むぅ~、どうして顔を隠すんですか?」
「え、えと……恥ずかしいし……」
シャイなウィンシーであった。納得いかない気持ちがあるエルリーナだが、無理に顔を拝見しようとして逃げられたらショックなので諦めることにした。
「はぁ~。もういいです。朝食を食べるので食卓のある部屋に行きましょう」
昨夜フェイにひびの入ったガラスの如く壊された扉はもうウィンシーの手によって直されていた。そんな真新しい扉を開けてエルリーナは食卓の間へ足を運ぶ。ウィンシーもベットメイキングをしてから後へついていったのだった。
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「執事のしごとー?あぁ、うん。特に無いよー。僕としてはエルリーナを護ってくれればそれでいいしー」
優秀なメイドさん達がいるしねー、とサンドイッチを頬張る国王。
ウィンシーとしては有りがたいのだが、ただ住まわせて貰うのは気が引けるのが今の心情だった。
(それに、あのベットの下は心地よかった……)
コイツベット目当てだった。しかも使用方法が間違っている。
「それより何時までエルリーナの斜め後ろに立ってるのー?そこのカルローネの席に座って食べても良いよ?」
カルローネ。第一王女の名前であり、今は[勇者]である竜麻を起こしにラブコメ展開を繰り広げられている頃だろう。
縦長の大きなテーブルには朝食のサンドイッチが並んでいるがどうやらエルリーナの隣がカルローネの席となっているようだ。
しかしいないからと言って第一王女の席に座るのは流石に失礼だろうと思ったウィンシーだが、昨日城に担がれてから一口も食べ物を口にしていない事に気づいた。パーティーをしたと言うのに一口も手をつけなかったのはある意味すごい。ちなみに料理は冒険者達が全て美味しく頂きました。
「冷めると美味しさ半減だよー?」
国王の言い分はもっともでないが、おずおずとカルローネの席に座り朝食のサンドイッチを食べる。
「はむ、こっこれは……!?サクサクながらパラパラパン粉が落ちないパン、それに挟まれたしゃきしゃきのレタス、しつこくない絶妙なブレンドのドレッシングを使いレタスとレタスの間にある炒られた卵とトマト……黄身を使わず白身だけでトマトと共にオリーブ油で堅焼きの一歩手前で火を止めトマトの酸味と卵のとろみを見事に融合されている一品……!おいしい……」
「……い、いやー。ウィンシー君。君意外と喋るんだねー」
「こんな喋ったウィンシーさんは初めてです……!!」
ウィンシーはそんな二人を気にせずパクパクとサンドイッチを平らげてしまった。
「御馳走様でした…」
「お代わり有りますよ?」
「いや……、そろそろ人が来るので……」
ウィンシーがスッと立ち上がり食器を片付け部屋から出て、メイドが新しい皿を次々と運んで来るのと同時にガヤガヤと[勇者]一行が部屋に近づいて来るのが分かった。
『ちょっとアンタ!竜麻に近づき過ぎじゃないの!?』
『これくらい普通ですわ!』
『無い胸押し付けても意味無いわよこのペッタンコ!』
『ななな!なんですってぇええ!?貴女だって絶壁でわありませんか!』
『私はいいの、水泳部だから!』
何やら不毛な争いが行われる中、新島姉妹が感想を言い合っている。
『どっちもかわんねーじゃねーか?』
『そんな事ないわ!』
『うーん、そうねぇ……カルローネさんの方が……いえ実菜ちゃんも意外と……』
『義姉様!私の方が大きいですわよね!?』
適当に無責任な事を言って無い乳二人の判定をしていた。
『実菜、お前は病み上がりなんだから……』
そこでようやく争いの元凶竜麻君が実菜を落ち着かせる為か声をかける。
『もう治ったわ、竜麻に 看 護 してもらったおかげでね』
看護を強調してカルローネに自慢する実菜。
『私だってい、一緒にお風呂に……』
『はぁ?!なにそれ!!ちょっと竜麻どういう事!』
『え、えーっと……あれは事故と言うかその…………、おい!廊下に人が倒れてるぞ!?』
『……、ありゃあウィンシーじゃねーか。成る程、実菜ねぇとカルローネさんの争いの余波で巻き添えを喰らったみたいだな』
ウィンシー、早く立ち去ったのに無意味となってしまっていた。
『良いことを思いついだぜ。……おいウィンシー起きろ。……、起きたな?あそこの二人の女を見ろ、違うアイツは男だ、男の両端だ。よし見たな、実はあいつらに鎧を見繕うんだが今メジャーが無くてな……、【目測】をしてくれないか?』
里沙さんウィンシーに何させてんですか。
『……、ブッ……!!そ、そうかありがとな。………クク』
サイズを聞いた途端吹き出す里沙、何とも失礼だった。
『ちょっと何コソコソしてんのよ!その人大丈夫なの?』
『うん、実菜ねぇ…大丈夫、大丈夫だよ。自信もって』
『え?う、うん』
『カルローネさんも、ね?』
『え、ええ』
『里沙ちゃんダメよ?ウィンシーさんを使っちゃ』
『ゴ、ゴメンナサイ…』
『取り敢えず中に運んじゃいましょう』
ガチャ
「おはよう諸君。そしておかえりウィンシー君」
「おはようございます皆様方」
ニコニコ顔の国王とサンドイッチを食べているエルリーナ。皆其々の挨拶をして席に着く。
ウィンシーは気配を消してパーティーと同じ様に部屋の隅で体育座りをしていた。
皆が席に着いたのを確認して国王が竜麻達に今日の予定を告げる。
「えーっと、ウィンシー君もいることだしちょうどいいやー。皆食べながら聞いてねー。早速だけど竜麻君達には朝食後、ウィンシー君と特訓して欲しいんだー。景品一番取りだねー」
「お父様、ウィンシーさんとはそちらの方で良いのですか?」
ウィンシーをついさっき知ったカルローネは確かめるために国王に聞く。
「そーだよー。強いらしいしねー。ワイバーンを一撃だってさー」
それは本当かとウィンシー本人に目を向けるが、いつの間にか部屋の隅にはいなかった。
(話の途中で去るとは礼儀のないっていない……!)
立ち去ったと思われるウィンシーにカルローネは少し憤慨した。
「カルローネさん、彼は隅の上です」
だが遥がカルローネにウィンシーの居場所を伝え、隅の上を見る。
しかし居ない。
「義姉様、そんな場所に居るわけないじゃないですか」
「今は貴女の上にいますよ」
何を馬鹿な、と上を見る。
居ない。
「義姉様、からわれているのですか?」
少しむくれてサンドイッチを食べる。そして紅茶を飲もうとカップを取ると、紅茶の表面に反射して顔のボヤけた燕尾服がチラリと。
バッっとそちらの方に顔を向けるが、
居ない。
隣にいるサンドイッチを食べ途中のエルリーナの腕に抱きつくカルローネ。
「エエエエルリーナ、こ、ここには幽霊がいるわ……」
「安心してください、幽霊なんてウィンシーさんが退治してくれます!」
そのウィンシーが恐怖の元なのできっと解決にはならないだろう。
そして妹までウィンシーという謎の人物を知っていてカルローネの知らない間に怪しい宗教に入ってしまったのでは、と心配する。
「エルリーナがウィンシー教に……、はっ!それでは義姉様も!いけないわ、いけないわ……」
「あのー、お姉様?……ダメです、聞いていません……」
変なスイッチを入れてしまったカルローネ。こうなると何も耳に入らないのでエルリーナは再度サンドイッチを食べ始める。
「あのー、質問なんですが……」
竜麻が国王に向け手を上げる。
「なんだいー?」
「特訓って何をするんですか?」
特訓の内容を知りたい竜麻だったがその答えは別の方から帰って来た。
「まずは基礎スキルを全部覚えて貰います」
と、遥が竜麻に対して言うが、その答えに実菜が疑問を尋ねる。
「基礎スキルは初日に覚えたじゃない。まだ他にもあるの?」
「あるわ、例えば耐性つけるとか、相手の情報を見極める訓練、モンスターの解体の方法も必要ね」
ワールドフィールドではモンスターの死体は勝手に解体されたりしない。だがダンジョンでは死体は勝手に消滅しアイテムボックスへとランダムでドロップする。
初日に竜麻達が身につけたスキルはMPを少量消費して使える【洗濯】や【点火】、【採取】など生活する為の行動を魔法スキルにしたものだった。
「よし!どんどん強くなってやるぜ!」
気合いを入れる竜麻。
その瞳には希望に溢れた光が宿っていた。
今回は特に何も無かった回でしたね。
戦闘しようにもウィンシー強すぎでどうしようか悩んでますが、まあ大丈夫ですよねきっと。
次回、勇者燃える。 お楽しみね!




