表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/80

異世界No.1―アテナ―7

 読者様方に感謝を!




 私がメリルの家か飛び出しそうなったところまで話し終えて藍苺が一言。


「お前ホントに人嫌いだなぁ……モグモグ…」

「……まあ、そこは変わらなかったのよ……」


 頬袋に溜め込んだ食べ物を一気に呑み込んで一言。


「ぶっちゃけ飛び出した理由は?」

「実は面倒になった。」

「……お前なぁ……」


 言いきったなこいつ……といった目で見つめてくる嫁さんに言い訳をしても無駄なので続きを再開した。





 私の威圧に押されたのか、または何らかの思惑があったのか傭兵達は道を開けた。その事は深く考えず玄関に向かう。


 あまりに唐突だったのか追手はない。それとも厄介払い出来て安心したのか……まぁ、どちらでもいいか。


(悪いね白神。)

『人を操ろうなどとは端から思ってない。お前も人だ、自信の考えで動けばいい。だが、何らかの方法で彼女を見守ってくれ。』

(それが任務?だからね。)

《メリルの生体データを記録します。よろしいですか?》


 唐突にクラウドが聞いてきたのでちょっと驚いた。



(!……えっと、生体データ?唐突に何なの?)

《生体データを記録しておけば遠く離れていても状態が逐一分かります。》

(……何そのストーカー……それに原理は?)

《マスターの体は魔術と科学の合せ技で成り立っています。なので彼女の魔力を通して状態を遠くからモニターすることも可能なのです。詳しい説明は私も面倒なので後でしますか? それに、白さんがいる時点でストーカーも何もあったものではないかと……》


 きっと説明されても理解不能だと断言できる。今でもちょっとばかしついていけない。


 それにそうだね。随時ストーカー出来る神な白神がいる時点でストーカーもなにもないよね……


 一応生体データを登録した。保険だ保険。


 玄関のドアを開けて外に出る。日没は当に過ぎているので真っ暗だ。けど心配なかれ、暗さなど何のその。色は判別出来ないがばっちり周りは見える。田舎なのか周りに灯りは全く無い。



「………何か?」


「………敵意はないぞ」



 後ろを振り返ると幼馴染み君……ラルフだったか……そいつが玄関前に佇んでいた。追いかけてきたのか……



 外からよく見るとメリルの家は大きく、なるほど大勢の傭兵が居るからかと納得した。空き部屋があるわけだ。その玄関前に佇んでいたラルフは居心地悪そうに見える。どうせメリル辺りにせっつかれて来たのだろう。ご苦労様。




「だから?」


「出ていくなよ。俺がメリルに怒やされるんだからな。……なんでこんな奴に謝らなきゃ……」


 こいつ自身に謝る意思なし。だったら意地でも来なきゃ良いのに……ヘタレか。


 ヘタレなら意地なんか張らずに……は無理か。



「あっそう。」


 真っ暗な外へと歩き出す。道があるのだから街もそのうちあるだろう。明るそうな方に行けば……その前に金とか諸々用意しといた方が良いかな? モンスターとか狩るのは……素手でも出来そうだけど正直やりたくない。出来れば遭遇もしたくない。そんな我が儘は言っていられたいだろうが……


 さて、これからどうしよう。


 紅蓮として培った知識で何が出来るかな?森に入って木の実でも探すとか? 夜が明けるまでは動かない方が得策か……


 最悪何でも食べれる悪食な体の私は木の実でも、毒キノコでも食べれる。味はこの際二の次だ。



「おい!無視すんなよ!」


「まだ居た……」


「さっきから居る!」



 全く、短気は損気だぞ。そんなにカッカして、血管ブチキレるぞ……あ、私の所為か。


 さて、さっさと森に入って高い木でも探して登ろうかな。外敵から身を守るには基本火を焚くか高い木に登るのが定石だろう。普通なら、木なんか登れなくても今は簡単に登れる。ホントにチート万歳だなぁ。



「――――だ。親方にも怒やされるし……分かったか?お前が戻れば丸く……」


「それじゃサヨナラ」


「っておい!聞けって!聞けっ!!ちょっ、ホントに待てよ!?」



 煩く喚いているヘタレを無視して森が広がる方に足を向けた。さて、寝ぐらに成りそうな木は有るかなぁ……


「ホントに待ってくれ!」


「木の実が豊富なら良いけどなぁ……」


「本当に待ってくださいお願いします!!」


「……………」


 私に頭を下げるヘタレ。


 かなり切羽詰まっているようだなヘタレよ。だが、人って第一印象が悪いといつまでも根に持つもんでしょ? 現に君だっていけ好かない奴って思ってるだろ。そんな奴に懇願されても止まるなんて思うなよ。


 それに私は……ぶっちゃけ人間嫌いです。話しかけないでください。


「やれやれ……時間かかってると思えば…」

「お、親方!!」


 こんなところで時間を食ってたら親方登場。あ、親方ってのはメリルの父親のことみたい。


 そんな親方はヘタレを見ながら


「やれやれ、言い方が不味かったな。生後数時間の子供と同じアンドロイドに理屈なんぞ通用しないのは知ってるだろうに……」


 すいませんけど私、中身三十路過ぎのおばさんなんですが? すいませんね、理屈が通用しなくて。大人気なくて。




「とはいえ坊主も気が強いな。ほれ、餞別だ持っていきな。」



 ヘタレ曰く親方が投げて寄越した何かを両手でキャッチする。布に包まれた何かはとてもズシリと重たく、高性能な鼻は火薬の臭いを嗅ぎ付けた。


 包まれた中身を見てみると……


「銃?」


「それはサイボーグ用の銃だ。人間じゃ重くて何にも役に立たねぇ……くれてやる。手ぶらで彷徨くよりよりかはマシだろ。」



 何で人間の親方が持っていたのか不思議に思うが今は考えるのを放棄した。包みをよく見ると銃の他にマガジンと銃を入れるホルスター、それと少しの銀紙に包まれたカロリーバーの様なもの……多分携帯食料だろう。それと銀色に光るコイン5枚と洋服、ウエストポーチ、小さな折り畳み式のナイフ。よく見れば下着までご丁寧にも入っていた。新品のようだ。



 何のつもりなのだろうと親方(仮)を見ると



「餞別つったろ。家の中で暴れることも、メリルや婆さん達を殺すことも簡単に出来ただろうに……そうしなかったから俺からの感謝だ。このところサイボーグ化した奴らが好き放題やってるからな。大前提として“人を傷付けられない”があるとしても、手加減ってもんを知らないからな……アンドロイドってのは。特に生まれたてのはよ。」


「ふぅーん」


「テメェ……親方を馬鹿にしてんのか!」

「やめなラルフ。馬鹿にされてんじゃねぇよ……手加減してもらってんだよ。お前もちったぁ冷静になりな。おめぇさん…確かニーアだったか。追い出しちまってすまねぇな。」


「別に構わない。元々あの婆さんの押しに負けてただけだから。あの家に留まるなんて一言も容認してなかったしな。」


 私がそう答えると親方(推定)は大声で笑い始めた。


「そいつはすまなかったな。婆さんの押しが強いのは昔っからだ。我が母親ながら俺も手に負えねぇのさ。」


 笑っていた親方(確定)は笑いをいきなりやめて真剣な顔で


「俺の家族の安全を考えてくれてありがとな。坊主を置いとけば必ず何か起きる。おめぇさんは珍しいタイプのアンドロイドだ。何処へ行っても狙われるぞ。気ぃつけてな。」



別に親方の家族を考えて出ていくわけでもないのに……本当にお人好しの一族なんだと思った。それでも、この親方は家族の安全を考え私が出ていくことを止めない。そう、それで良いのだ。


「メリルの未来は歪められてしまっている。彼女を助けたくば、強くなれ。連れ去られたくなくば手を離すな。運命の分かれ道は彼女の選択に掛かっている……」


 唇が勝手に動き言葉を紡ぐ……白神が何かしているのか?


《警告! 外的要因からの特定不能な電波を受信。白さん、もう少し出力を抑えてください。マスターへの負担が掛かりすぎます。》


 少し遠くでクラウドの警告が聞こえた。どうやら白神が私の体を勝手に操作しているみたいだ。しかし、勝手に操作している割には嫌悪感は不思議と無い。


「彼女を古き友に託すな。奴は自分の思いのまま世界を作り替えることになる。世界と彼女を救いたくば、決して渡してはならない。」


「は?」

「………古き友?」


 ヘタレはハテナを頭に沢山生やし、親方は何か心当たりでもあるのか、古き友と言うワードを呟いていた。


(白神……古き友ってのは分からないと思うよ。この世界じゃないと言わないと)

『おっと、そうだった。すまん紅蓮、体を借りて……』


 そういう謝罪は前以て言ってほしかった。



「古き友は過去の者、現在の者とは違う。」


(だから、そんなまどろっこしい言い方じゃなくて!)

『このようなまどろっこしい言い方でなくてはならない決まりなのだ。これでも幾分噛み砕いているのだぞ。』

(うぇ、マジで? この言い方なら私理解できない。)




 神様がまどろっこしい言い方しなければ色んな物語の大半は成立していない事だろう。だって、一々まどろっこしくて別の意味で解釈して騒動とか巻き起こったり……良いのかそれで。



「古き友は過去の者……現在ではない……もしや、」

「親方?」


「俺が言えるのはここまでだ。最後にひとつ、“俺は決して敵にはならない。お前達が世界を壊さない限りは”な。」


 中二、完全に言ってる言葉が中二なんですけどね?恥ずかしいのですがね?白神さん。


「そうか、婆さんの予言は当たっていたか。いや、しかし……」


「そう遠くない未来、奴は彼女に接触してくる。奴には神の加護が付いている。逃げても見付かるだろう。」


「あんた一体何なんだよ!親方も、何言ってんだよ!」


「お前が守れ。彼女を不幸にしたくなければ。奴のそばにいると奴の意思に関係なく彼女は不幸になる。それが定められた運命……」



 そう言い残し私の今の体は動き出した。森に向かい歩き出す。後ろからヘタレの声が聞こえたが私は止まらない。……今の私に体の主導権は無いのだから無理な話だが。


 すまんなヘタレ。消化不良になるだろうが諦めて親方にでも聞いてくれ。私だって半分程未だに理解できてないのだ。消化不良になってる。


 ヘタレに心の中で謝罪しながら森の中を進む……。メリルの家は道を挟んだ直ぐ前にあったので入って直ぐに私の体を木々が隠してしまった事だろう。ヘタレも親方も真っ暗な森に入るほど無謀ではないだろうし私(操作白神)は歩み続けた。










(で?どう言うことだってばよ?)

『すまんかった。』

《全くです。神だからと言って許されないこともあるのです。見てください、このエラーの数を!数十件に抑えてもこの数はどうやって処理するのですか!》



 私の目の前の画面?上に赤も字でエラーとデカデカと並んでいる。その端っこで二足歩行の子猫が忙しく動いていたクラウドの様だ。一面を多い尽くさんばかりのエラー表示をクラウドはせっせと消していく……ホントにご苦労様です。



 作業をしながらもクラウドの怒号が頭に響く……ちょ、クラウド、私の頭が大打撃なんですけどね。




《すみませんマスター。けれど、これはどうにかせねばならない問題です。この様なことが続くのであれば私はストライキを起こしたいです。》


 警告やエラー表示と格闘しながらも両手を振り上げ抗議する。子猫の微笑ましい姿に心がなごむ……


 しかし、それって私に大打撃あるだけで白神には何のペナルティーにならないよ。私だけ損だ。


《出力を抑えてください。そうすれば、エネルギーが枯渇している時以外は問題ありません。それと、マスターにお伺いをたててからにしてください。強制的にするのはご法度です。機械権侵害です。》


 機械にも権利があるのか不明だが、確かにいつもこの様にされたら堪ったもんじゃない。



『本当にすまなかった。』



(で?)


『ん?』


(ん?じゃねぇよ、何であんたが私の画面に陣取ってんだよ……しかもデフォルメされたらちんまい格好で……)


 実はさっきから白神がちっさい姿で画面の右下の端に陣取って居たのだ。ちなみにクラウドは左端のエラー表示を消すのに躍起になっている。何処から出したか大きな消しゴム?を持って一生懸命に消し始めた様で、結構大変そうだ。


 またまたちなみに、私はなにもできない。そこ!無能とは言わないっ!


 私がやるとクラウドまで消す恐れがあるから……できないのよ……恐くて。



《50%を消去……もう飽きてきました。》



 ただ消している訳じゃなく、問題点を探しながら直したりもするので時間がかかるらしい。



(一時的で良いから画面に……目の前の視界をクリアに出来ない? 木上に上がって木の実採りたいから……ダメ?)

《……出来ないこともありません。しかし、私はこの消す作業に没頭しますのでナビゲーションでしません。それでもよろしいですか?》

(なんかあったら白神をパシるから。ね?責任は取るでしょ?)

『無論。すまなかった。』



 土下座する勢いだ。


 ちっさい姿で画面に陣取って邪魔だよ。視界が狭まるからもう少し小さくなっててよ……。




 そんな事を話しつつも今日の寝床を着実に確保する私だった……。














評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ