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異世界No.1―アテナ―5

 今日の投稿時間が遅くなりました。m(__)m




 私の分のクッキーを食べても足りなかったのか戸棚にしまっておいたゴマ饅頭を勝手に出して食べ始めた。


「ご飯食べられなくなって知らないよ。」

「晩飯までまだ早いだろ。腹へって死にそう。」

「妖力が切れない限り死なないよ。」

「胃が死にそうになるんだよ。」

「なんじゃそりゃ。」


 そうも言いながらも取り返したりしないし辺り私は嫁さんに甘い。自覚はしてますよ。


「にしても………モグモグ……川に落ちたのか……モグモグ……抜けてんなぁ…モグモグ…」

「言いたいことがあるなら飲み込んでから言いなよ。はしたないって。」



 自分のお代わり用にお茶を湯飲みに注ぐ。ふぅ……語り手は口が渇くね。



「……さて、話の続きね。」

「落ちた後どうなったんだ?」





 私は続きを語り始めた……







 川流れの紅蓮とでも名乗ろうかな?


 そんな事を考えながらも川の流れは止まらない。まぁ、川だし……止まるわけないか。


(何処かに引っ掛かってくれないかなぁ)


 そんな事を思いながらもノンストップで流れていく……


 体が動かず。けれど意識はまだハッキリしていた。生身の人間なら等の昔に意識を手放していた。自分自身で意識をシャットダウンしても良かったのだろう。けれどそれもどうかと思ったのだ。



(気絶してる間に捕まりたくないし)



 さっさと引っ掛かってくれないかなぁ



 無情にもこの後一時間ほどノンストップで麓の下流まで流されたのだった。








 時は経ち、あれから約2時間後。川の浅瀬に辿り着いた。所謂打ち上げられた。ピクリとも動けないので見た目土左衛門だろう。格好良く言えばジョン・ドゥーかな。身元不明の遺体だ。


 こんな状態で近付いてくるのは追い剥ぎか余程のお人好し位だ。まさに絶望的状況。為す術なく横たわっている。



(声も出せない程消耗してるのか……クラウドも停止してるみたいだし)


 頼みの綱、白神も何度話しかけても応答がない。何かあったのか? それとも私に何かあったのか?



(まぁ、川だし。水を飲んで少しずつエネルギーを貯めよう。)



 私の今の体は何でも食べれる、所謂“悪食”だ。


 食べようと思えば石だろうが、土だろうが……あまり言いたくはない物まで何でもござれ……鋼の胃袋もとい、バクテリアが腹に内蔵してあるのだ……内蔵だけに。



(面白くねぇ……)



 腹ペコで考えまで可笑しくなったのか?


 水を飲みながら考えた。後どれくらいで満タンになるのだろう……と。水を飲んでもあまり足しにならないのは明白。少しでも動けるようになるには何かエネルギー源になるものを摂らないと……


(この石……食えるか?)


 石には色々な物質が含まれているだろう。水よりは。家の天敵シロアリもコンクリートを食べるのだ。似たようなバクテリアを持つ私なら分解してエネルギーに変換出来るだろう……しかしだ。


(人間の心がそれを邪魔する……)


 そうなのだ。これを食べたら人間をやめることになる。体は人間じゃなくロボだけど。


(あの台詞を言いながら食べようか?「私は人間をやめるぞ~」てさ。)


 紅蓮の時点で人間をやめて妖怪になってるけど。心は人だよ。



 けれど、ここで動けず朽ち果てるのも癪だ。えぇーい構わず食っちゃえ!


 どうせ男も女も度胸だ!!



(かってぇ~……。エネルギーが無いから力も出ないと……ひもじいぃ……)


 あぁ、今なら食糧庫を爆発されてひもじい思いをする敵兵の気持ちが分かるよ……ごめんよ敵兵諸君。そんな君らにヤドクガエル(腐)を投げつけて食べさせて……他にも毒キノコとか腐った食料を投げつけてごめんね。犬も食べない腐った食料に飛び付いているのを笑ってたよ……ホントにすみませんでした。


 今度機会が合ったらカロリー〇イトとインスタントラーメンを投げとくよ!



『そこは食糧庫を爆発しなければ良いだろう。何気に酷い事するな紅蓮。』

(………何?紅蓮って誰よ。今私は岩の鎧を纏った熱線砲吐ける飛竜に成るために石を食べてんだから邪魔しないでよ……)

『すっかり臍を曲げたか。』



 けっ!今頃来ても私は岩の飛竜になっているんだから無駄だよ。なんなら岩に擬態してやろうか?今なら音爆弾でも驚かずにじっとしてるよ。だって動けないし。


『すまんかった。少々天界も立て込んでいてな。馬鹿がやらかしたゴタゴタを一喝して治めてきた。大丈夫か?』

(今、石喰ってエネルギー充電中~。何時間掛かるか未定。)


 てか、変に考えたりしたせいで………エネルギーが、マジで………


 底をついた………






 エネルギー不足につきシャットダウンします








『安心しろ紅蓮。お前を拾ってくれるお人好しが来る。お前はそいつを守ってくれ。話は目覚めてから言おう。』





 その言葉を最後に私は意識を飛ばした。








 目覚めるとそこは……知らない天井があった。王道だなぁ~。


 未だに動けないが、何らかのエネルギーを獲て目を覚ませたのだろう。例えば、誰かに何か食べ物を……ん?



 視線を感じたので未だに動かない体に鞭打ち、どうにか首を横に動かした。すると……



(この体勢……どこかで見覚えが……)


 例えるなら壁に隠れようとして失敗した。しかもそれに本人は気づいてない……所謂、頭隠して尻隠さずだ。小さい子供がやっているからこそ、可愛いげがあるが、これを爺がやって誰得なのだ?


 私は要らんぞそんなの。



 さて、テンパってか未だに隠れた気になっている爺から視線を外し、首をもとに戻す。正直これだけでも辛い……。ひもじいよぉぉ(涙)



 かなり悲しくなってきたので白神にヘルプでもしようかと思っていると……


 何やら進展があったみたいだ。ちなみに私は今寝たフリをしている。面倒になったから目を閉じた訳ではない。腹ペコでツッコム気力もないのだ勘弁してくれ。


 と、進展があった様なので聞き耳をたてて様子を探ろう。



「もう、お爺ちゃん!?何で隠れようとしてるの?」

「だってな、あの死人が動きよったのじゃぞ!?」

「だ~か~ら!あの人は生きてるって言ってるでしょ! 現に呼吸してるじゃない。」

「心臓の音がしとらんかったぞ!生きてるわけ無い!」

「じゃぁ動くわけ無いじゃない。もぉ~看病の邪魔だからあっちいってて!」


 

 孫と爺かな? 心音がしないなら驚くわな……あ、心音は省エネのために止めてた……ヤベェヤベェ……起動しておかないと……


 寝たふりをしながら人間としての機能を再起動させておいた。エネルギーが減るけど仕方ない。生き物を装っておかないと……最悪放棄されそうで怖い。


 間一髪で少女?が私の脈を取り始めた。右手首に指を当てて測るようだ。



「ちゃんと脈あるじゃない。」

「……本当か?」



 疑いと驚きの眼差しで孫を見る爺……。目を閉じているが髪の毛から伝わってくる映像が有り難い。私は今、ベットに寝かされているようだ。今更だけどね。


 サイドテーブルにはお粥かスープの様な物が器に入っている様だ。鼻から入ってくる匂いは……若干焦げ臭い……焦がしたのか?



「コイツは金持ち共が従えている機械かも知れんぞ。扱いは慎重に…だなぁ~。おい、聞いておるのか?」

「でも、機械なら心音は無いでしょ……この人ちゃんと脈打ってるわよ?」

「目鼻立ちが整いすぎだ。コイツは人工的過ぎる。気を付けるのだぞメリル。」

「もう。そんな事を言うなら、壁に隠れてないで孫の近くで言ったら? 全然説得力無いわよ……全く。孫に何かあったらどうするの?」

「だから近付くなと……」

「それじゃ」この人の面倒は誰が見るのよ……




 仲が良いのか悪いのか……多分仲が良いのだろう。祖父と仲が良いのは羨ましいね。孫に尻に敷かれる爺は逃げ腰ながら私のそばまで出てきた。



「ぬ?……まさかとは思うが……」


 な、何だろ……私がアンドロイドだと気づいたのだろうか? お、落ち着け私……そ、素数を数えて……いや、素数を数えてどうすんだ私!落ち着け!!


「この粥は茶粥なのか?ほうじ茶の……」



 ………ズコー……あ、焦った~……でも、何か大丈夫みたい……ふぅ。



「なにいってるのお爺ちゃん。普通の無味のお粥じゃない。この人に食べてもらおうと作ったのよ♪」



 って、大丈夫じゃなかった!!!



「そんなもん食べさせれば怪我人なんぞ一発であの世行きだぞ!止めんか!!」

「なに言ってるのよ。心を込めて作ったものが人様をあの世に送るわけ無いでしょ。ちょっと退いてよ。その人に食べさせないと。食べて力を付けないと……」

「や~め~ん~かぁぁぁぁー!!!」



 ヤバイ、命の危機が迫ってる。アレだ、助かったけど、実は助かってなくて。例えるなら……


 例えるなら、そう。暗い洞窟を探索していて武器は無し、前からゾンビが来たから来た道を戻ってひと安心したら横からスケさんにスナイプされてパニックになって迷子になったらジェットストリーム匠に空爆されて……アボン………かな。わかる人いるかなこのネタ。




「ダメだ!!死なせてやるな!まだ将来有望な青年を殺しちゃいかん!?」

「だ~から!お粥を食べてもらうだけじゃない!」


 何かコントになってきた。ほっときたいけど煩くて二度寝もできない。あ、私今ロボだから寝れないんだった……!Σ(゜Д゜)



「五月蝿いわ!! 病人の前で騒ぐな!」


 多分廊下から来たのだろう……多分お婆さんが怒鳴り混んできた。貴女が一番煩いとは言わないでおく。何か敵にしたら怖そうだし。



「メリル!お前はまた人様に有害物質を食べさせようとしてるのかいっ!死人が出るから止めなさいと口を酸っぱく言ってるじゃないか!お止め!」

「ほれみろ、だからやめろと言っていたんだ。」

「何で人の作った料理にケチつけるのよ~。」

「「食べたから分かる!」」




 お爺さんお婆さん……体験済みでしたか…南無南無。


 お婆さん乱入のお陰で事なきを得た訳だが……私は起きて良いのか?





「全く。そんなに言うなら自分で味見してみな。」

「えぇ~何で? お婆ちゃんも味見しないじゃない。」

「れは私が年季入ってるからだよ。経験で味見しなくとも分かるのさ。あんたはまだまだ未熟。そんなあんたが味見しないなんて許されないよ。しかも人様に出すなら先ず自分で味見しな。」



 ごもっともです。私の周りの料理音痴に聞かせたい台詞でございます。拍手したい。


「それで? この別嬪さんが川で溺れてたのかい?」

「川原で加工に使う水精石のかけらを探していたら……川からからだ半分出た状態で倒れていたの。」

「それでワシが負ぶって来たわけだ。」



 へぇ~なるほど。ご苦労様でしたお爺さん。腰は大丈夫か?ぎっくり腰になってない?


「アンタ!ぎっくり腰になってないだろうね?」

「………実はちょっと危なかった。」

「はぁ~……全く、お人好しだねぇ。で?おきたのかい?」

「それがなぁ……」



 騒いでいたお爺さんと孫に驚いて起きれません。何てここで起きて言うか?でも、ここは空気を読むべきか……



「あんなに騒いでたら起きてるよ。大方アンタらに驚いて起きれないんだよ。全く、子供じゃないんだよ二人とも。」

「すまんかった。」

「私まだ15歳……」

「15になってまで粥の1つもまともに作れないなんて何の冗談かねぇ。メリルももうすぐ17だよ。成人するんだからもう少し成長しな。主に料理と精神的に。」

「……はぁい…」



 お婆さんはひとつ溜め息をついて語りだした。



「さて、どこの何方か知りませんが、起きているなら起きてくださいな。家の爺さんと孫が迷惑をかけました。



 お婆さんは私が起きていることに完全に気がついているようだ。侮りがたしお婆さん。



「…………」



 目を開ける前に、目の色を紫に変える。私の頭の中のデータバンクにはごく一般的な色と記載されていた。赤なんてそんなに居ないだろうしね。髪の色は染めていたとでも言おう。髪を染める技術も一般的な様だし。



「………っ」



 眩しいと思ったの。久しぶりの光に目に痛みを感じた………気がしただけだった。そうだ、感覚器官も止めていたのだった。



「ああ、明るすぎたのかい。長いこと気絶してたんだね。」

「私が見付けたときにはもう気絶してたもんね」

「ワシらが何人に見える?」


「………3人」


 そう答えると3人は安堵の表情を浮かべた。私が頭を打っていないか調べたのだろう。


「お腹が空いてるだろう。話は後から聞くから、今は食事を用意するよ。」

「あ、なら私の……」


「(-_-#)」


「あっ、」

「ほら見な、一般的な意見だよ。そんな有害物質誰が食べるかい。」

「ムーーーー!」

「早く片付けてこの人に食事を用意するよ!ほら、退いて。メリルはそれを捨ててきな。」




 この部屋からお爺さんと孫を押し出したお婆さんはニコっと笑い、


「すまないね、あんな二人だけどいいやつらなんだよ。」


 それは分かってる。正体不明の不審者を自宅に連れてきて看病しようとしてるのだから。


「……それは理解している。お人好し過ぎて心配になるくらい。」


「……なんだい、喋れたのか。そいつは良かったよ。全く、お人好しの家族を持つと苦労するってもんだ。」


「そんなお婆さんも十分お人好しだよ。不審者を追い出さないんだから。」


 お婆さんは私の言葉に一瞬言葉を無くすと、直ぐに大笑いをし始めた。


「あっはははは……違いない。なに、どうせ貧乏な家に盗まれて困るもん何て無いからね。起きれるのならキッチンに来な。そんなに良いものは出せ無いけど、腹が膨れるものなら出せるよ。」



 そう言ってさっさと出ていった。……本当に皆心配になるくらいお人好しだよ。


 少しでも疑った自分が恥ずかしくなるほどに……






 その後、親切なお婆さんに温かいスープとパンを貰い腹に収めた。やっぱり食べ物のほうがエネルギー量の回復が早い。気力面の影響もあるのだろうか?


 出されたスープは野菜がゴロゴロ入っているスープだ。ニンジンとジャガイモ、玉ねぎと見知った野菜が入っていた。パンは黒っぽい丸パン……とても固そうだ。手で千切ってはみたけど、エネルギーがごっそり消えたような気がした。



 3人はワイワイと賑やかに食卓を囲んでいた。どうやら時間は昼辺り、丁度お昼ご飯の時間だったようだ。私が食べている間、3人は何も聞いてこなかった。


 出されたパンは固かったのでいつまでも噛んでいた私に遠慮したのかも知れないが……


 この世界のパンが一般的に固いのか、この家のパンが固いのかは分からないが、3人はスープに浸して食べていた。


(そうやって食べるのが普通なのか……)


 怪しまれなかったかな? 固いのが普通じゃないなら、最初に固いって一言いうかも。常識を知らないなんて……怪しまれないとも限らないよね。




(固いけど……この体チートだし、苦にならないんだよねぇ……エネルギー量が変に減ったりしたけど……)


 柔らかいパンが高級なのか、作った人が悪いのか……


「(この子、良いとこの子なのかねぇ……何の躊躇もなく固いハズのパンを手で千切るなんて……ナイフじゃないと切れないほど固いのに……)」

「(見た目からして、貴族の子供か?お家騒動なら……)む、後でそれとなく町で調べるかな。」

「(綺麗な目……それに、仕草が一々優雅……がさつな地元の男の子たちと全然違う)」



 何だかジロジロ見られているのは感じたけど無視して料理にかぶり付く。けれども行儀の悪いことはしない。前世から母によく言われてきた。「片親とか見た目で色々言われるから、せめて行儀だけはキチンとしていなさい。」ってさ。間違っていないよそれ。現に今まで誉められこそしなかったが、初対面の人に悪印象は与えなかった。



「ところで、その髪は地毛かい?」


「いや、染めている。地毛は黒だ。」



 もう既に髪の色を黒に設定した。黒は一般的な色だから。この世界の半数が黒で三割が茶髪、残りが金髪や赤髪、等々。存在しない色はピンクや紫、青系統。………人間ではね。



 彼ら三人の髪は黒と茶髪だった。お婆さんが白髪混じりの茶髪で、お爺さんがこれまた白髪混じりの黒。孫が黒。目は皆焦げ茶色。色だけ見れば日本人の様だが、顔立ちは欧米風だ。


 私の答えに納得したらしいお婆さんは頷いて食事を再開した。


「口に合ったかい?」


「おいしいです。」


「………んと、」


 何かを聞きたいのかは分かっているけど、食べるまで待ってくれないかな孫よ。それと、そうジロジロ見ないでくれる?食べ辛いよ。


 ゆっくり食べている私に何も言わなかった。いや、言わないだろうね普通なら。初対面の人にさっさと食べ終われ何て言わんだろ。


 食べながらもう一度周りをよく観察してみた。家の作りは確りしているが、よく見ると隙間が見え、古く見える。作りはプレハブの様で一応広めなのだろうか? 窓には硝子が入っている。


 最初に見た場所がハイテク機器が多い研究所だったので、この世界はもっとコンクリートジャングルにでもなっているのかと思ったのだが……


 どう見てもファンタジーでお馴染みの田舎の家って感じだ。



 ようやく食べ終わった私に木のコップに入ったお茶を出してくれた。窓は硝子だけどコップまで硝子では無い辺り、貧富の差が大きいのだろうか?


 それとも、私が古代の文明が遺したオーバーテクノロジーだからなのだろうか……私の頭はそんな事書いてなかった。



「どうだい?話す気になったかい?」

「嫌なら話さなくともいいぞ。何、孫のメリルがいつもトラブルを持ってくるからな。慣れたよ。」

「もぉ~、お爺ちゃん!!」


(言うべきか?研究所から逃げてきたアンドロイドだって。)


 もし、どこぞの勢力が私を探しに来たら? 迷惑をかける。言ったらこの人たちは受け入れてくれるだろう……自分達のことも省みず……



(聞こえてる?白神。)

『聞こえているぞ紅蓮。』


 聞けば間髪いれずに返事がかえってきた。いったいどんな原理なんだこれ。



(ま、いいか。でだ、私はこれからどうするべきだ?)

『フム……先ずは名前は伏せろ。そうだなぁ……ニーア何てのはどうだろう。』

(ニーア? 基本男でも女でも良さそうな名前だね。)

『ん。私の母の名前から取った。ベルゼニーアから。』


 新事実!白神の母親の名前はベルゼニーアらしい。それでニーアか。ふぅーん……白神って名前なのに親が片仮名って……もしかして……


(白神の母親って私と同じでネーミングセンス無いのね……)

『何も白神が本当の名前ではない。それはいわば呼び名。



 あ、そうなのか。等とどうでもいい話を止めて今後の事を話し合った。そして決めたことは、身分は分からない、記憶喪失の男……と言うことになった。口調も男っぽく話せとの事だ。


 ん~……ちょっと難しいぞそれは。




 だってさぁ、初対面の相手が記憶もなく、自分が誰かも分からず、けれど名前は分かるなんて……それ以前に受け入れてもらえるのか?



 だがそれも杞憂に終わった。


「なら、家に居なさい。どうせメリルが面倒事を持ってくるんだ。もう慣れっこさ。人一人くらい養えるよ。」

「その容姿じゃ変なのに捕まっちまうかもしれんからな。好きにしな。主導権は婆さんだしな。」

「よろしく。私はメリルです。……ニーアさん。」


 寧ろドンと来い厄介事……そんな感じに笑っていた。本当に大丈夫かこの家族。絶対詐欺にあいそうだよ。









(何もこの家にお世話にならずとも……)



 昼食の後、病み上がりだからと割り当てられた空き部屋に押し込まれベットに寝かせられた。恐るべしお婆さん……伊達にお爺さんを尻に敷いてないのね。


 ベットに寝転びながら考えた。本当に白神の言う通りにしてわ見たけど、何もこの家にお世話にならずともいいんじゃないだろうか。特別貧しい訳ではないようだけど、心苦しい……



 私の疑問は白神が直ぐに答えてくれた。


『実はな、あの少女・メリルは転生者でな。しかも巻き込まれた質だ。傍観をするつもりだろうがこの子幼馴染みが………あの侵入者の男の方なのだ。』



 ………ぐげっ。


 


『しかも、メリルは何の説明も無しに幼馴染みの我が儘で殺され転生させられたのだ。』

(何それ。前に聞いたような話だね。)

『全くだ。その肩入れする神は私の足元にも及ばない……下っ端神でな。黄童子よりも幼い奴だ。物事の分別が未だに付いていないのだ。もうひとつの我ら神々の目の上のタンコブなのだ。



 ………白神の話を要約するとこうだ。



 人間の物語に憧れた幼い神が自分の我が儘を叶える為に勝手に主人公を作り、世界に組み込んだのだ。黄童子の様に時間を掛けて世界に馴染ませる方法ではなく、直ぐに上書きする方法をとったそうだ。


 上書きすればそれまでの情報は消える。現に、消えた人間や性格や人格が数多くいるそうだ。私の身体の元々の人格もそれにより消滅した。


 消滅したことによりこの世界が元から辿るべき未来にズレが生じて最悪世界は消滅するとか……スケールがデカすぎて理解できない。


 そしてこの拾ってくれた孫のメリルは役割的にはヒロインよりも主人公で、彼女の存在は異質であるが、世界には必要な唯一無二の偽主人公(幼馴染み)に対抗できる存在だそうだ。しかし、それを知らずにいる。そんな下っ端神に睨まれ亡き者にされかねないので私がサポートしてどうにか世界の滅亡を阻止する……壮大な仕事だとか。





 どうなることやら私の異世界旅。


 そう思いながらベットに寝そべり眠りについた。






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