異世界No.2―ノクターナル―23
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1日振りのシャバの空気は美味いなぁ。いやマジで。カビ臭い、ホコリの臭いも私の敏感高性能な鼻には堪える。頑丈な体ではあるが、不快だと思うのは仕方無いってもんだよね。
さて、どうやって私が牢屋から出られたのって事だが、
簡単なこと、ギルド側と取引したのさ。
あの高慢ちきな私を牢にぶち込んでくれた貴族のおっさんはやっぱりこの国の貴族で、それなりに位も高いらしくギルド主体のあの街でも好き放題な振る舞いをしていてギルドも頭を抱えていた。そしてそれなりに位も高いので強く言うこともできない。
で、ここからが重要。
私は一応猫系獣人だが、正真正銘の名工ガンツの弟子であることは紛れもない事実。あのおっさんは私を『ガンツの弟子と偽った』として詐欺罪で牢にぶち込んだので免罪と言うことが証明されるのは時間の問題。
しかしである。
国自体が他種族を見下す政策を強いているのでこのままこの街で店をやっていくのは困難になった。風当たりが今でも強かったのにもっと強くなってら商売どころではない。接客が上手い人なら乗り越えられるだろうが、私は自慢じゃないが人嫌いだ。鍛冶屋としても名工には程遠い。顧客も増えては来ていたがこの一見で減るだろう。誰も国を敵に回したいと思う個人はいない。
そしてギルド側は私と言う名工ガンツ氏とのパイプを失いかけた(と言うか信用はがた落ち。今後ギルドの依頼を受けてくれないかもしれない)と言う状況を利用してこの国に嫌味を言える、とのことだ。とことん只では起きないギルドである。ま、国としてではなく、商人や冒険者の集合体なギルドにとってみたらこれしきでヘコ垂れる様じゃ大陸中に拠点を置けないよね。
で、話を戻そうか。私の元で働いていたと言う理由で風当たりは強いだろうが人間であるパニ3兄弟(パニーノ、パニーニ、パニールの三人)に店を譲り私はこの街を出て行くことでお咎め無しということにしてもらうことにした。ま、元々私なんの罪も犯してませんけどね。
癪だけどさ、大きな街から抜け出せる口実が出来てちょっと嬉しかったりする。安定した食事はおさらばだけど。
あのパニ3兄弟は一旦この街を出て親方に弟子入りすることに決まったので厳密には予定なんだけどね。感謝しなよ三人とも、あの頑固な親方にごり押しで頼んだ私の手腕を。
・・・親方が中々首を縦に降らなかったので最終的には女将さんに泣き付いたんだけどね。うん、泣き落としだよ。フフフ、計画通り・・・
とまぁ、何かしらこの世界にいる理由が街みたいな人の多い場所に居れば何か分かると思ったけど、私には会わなかったんだよ。もうこうなればニーア時代の時の様に人里離れた山奥に住み着こうかなぁ?
あ、それ案外良い案だね。うん、そうしよう。
私はやっぱり図太い神経を持っていたのだった。
そして久し振りの再会を果たしたのはふと森入りに迷い巨木に登った時の事であった。
ビックリして危うく落ちるとこだったと言っておこう。
「久し振り、音沙汰無いなんて何かあったの?」
『いや、世界のシステムに阻まれたたけだ』
それって大したことだよ十分に。
ねぇ、白神
『いや、全く。意外にも神々にはこのルールは適応外でな、暇な神々の観光地になっていてな。他の神々は見過ごす癖に私ばかり目の敵にしていてな・・・少々交渉に手こずった。(アイツ事前に許可取ったのに脅されて白紙にしやがった)』
(ん?どうかした?)
白神のご尊顔の眉間に皺が寄った。美形が怒ると怖いってホントなのね。で、ホントにどうしたのか・・
『なに、事前に取った許可をいきなり白紙に戻されただけだ。』
『勿論その礼はしたがな』とボソッと呟き私は柄にもなくゾッとした。白神って声も良いから特に怖いって。そこまで不機嫌なんですね分かります。
『ところで、どうしてこうなっているんだ?折角就職したのに』
(いや、私が聞きたいよ。朝起きたら捕まって牢屋にぶち込まれたんだもの。この国では人間が族幅を効かせてるから獣人は肩身が狭いからさ、普通に生きてても難癖付けられるなんて良くあることだってさ)
あれだ、誰がとは言わないが(敵作りすぎたかな?)心当たりはあるんだよね。だからと言ってやり返しはしないけど。だってやり返してもまたされたらヤダもん。嫌なループにハマりたくない。
『お前たまに心が広いな』
失礼な。よっぽどの事がない限り仕返しはしない主義なの。そりゃ、度が過ぎたらキレるけどね。それにしても私はどれだけ心が狭く思われているんでしょうね?大した証拠もなく仕返しするなんておバカさんのすることじゃない。
『お前が・・・イヤなんでもない』
そして思い出してほしい、ここが深い深い森の中だと言うことに。そして私は迷子気味だということにも。
てか、お腹すいた。持ってきた荷物の中に食料入ってたなぁ。美味しくない携帯食だけど腹の足しにはなるよね。
(モグモグ)
『・・・すっかり食いしん坊キャラだな』
(モグモグ・・体が欲するんだ。食べ物寄越せってさ)
『うん。そうか。』
粘土みたいな塊を少しずつちぎって食べる。保存に適した物だから味なんて二の次だから不味い。でも食べた後に水を飲めば2倍に膨らんで腹も脹れる。不味いけと。
(食料は一週間分はギルドに貰ってるけど、これからの家が無いんだよね)
『だろうな』
ニーア時はドワーフ達に恩があって作ってもらったけど、ここでは何のつても無いからどうしたものか。
いっそのこと某自由度の高いオープンワールドのRPGのダウンロードコンテンツで追加されたゲームみたいに自分で家でも建ててみるか?最悪雨風凌げれば良いから。
『うむ・・・作ってみるか?自分で』
(建築の基礎も知らないのに?)
『そこは、ご都合主義でどうにでもなる』
だそうです。
そんなわけで、私は異世界で自分の家を自分で作ることになりました。先ずは土地を見つけないと。先ずは土地を見つけないとね。
(あれだよ。人なんて来ない場所が良いね。実家の絶壁に囲まれた場所的な)
『あれを見つけるのは至難の、いや、好きにすれば良いさ』
私の意見に呆れる白神であったとさ。




