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異世界No.2―ノクターナル―20

 どんどん投稿しちゃおうねぇ~

 波乱の四者面談になるかと思いきや、ストーカー変態変質者がパニ兄弟の家に上がり込んでいた。


 ま、あれこれ……うん、あれこれあったが無事奴のお守りの男女二人組に蹴っ飛ばし――何故か家の前辺りで主(変態)を探していた――当初の目的である四者面談に漸く辿り着くことができた。



 道は長かった……





「さて、パニールさんの今後について話をしよう」


「あの・・・」


「うん、まぁ言いたいことは有るかもしれないけど、先ずは先に聞きたい……どうしたい?」


「はえ?」



 彼女が思っていた言葉ではなかったのかぽかんと口を半開きにして目をパチクリ……うん、怒られると思った?



「若い頃ってのはやる気の空回り何てのはしょっちゅうだろうし。ま、あれだけ言われたら働き辛くなるのも分かる。だから今決めてほしい」


「は、はぁ……?」


「実はパニーノさんとパニーニさんには俺の親方の所に行かないかって話してる……二人の腕なら俺なんてさっさと追い抜くだろう。で、だ。」



 多分気まずい職場に私と二人っきりになるかもしれない。この話が通ればだけど。



「勿論親方もまだ了承してない。断られても他に働けそうな所に掛け合ってもいい……ま、俺自身駆け出しのペーペーが言う言葉に何れだけ効力があるか何て知らんけどな」



 やるからには全力でやるけど。少ないコネをフルに使ってな。



「どうする? このまま燻っているか?それとも兄達と一緒に親方の所に行くか? 俺はどっちでもいいぞ。勿論俺の所で二人っきりで働くって選択しも有るかもしれないが、気まずのは――今の顔を見たら無しだな」


「す、すいません…」


「若気の至りって難敵だよな」


「ノワールさん、その台詞お年を召してる様に聞こえる」

「あんた何歳だよ…」


「推定16歳だがナニカ?」



 何だよその「何か納得いかない」な顔は……



 あぁ、そうですよ、中身はオバサン通り越して乾物ですよ。




「親方の所に行くなら……いや、行かなくてもそれ相当の腕は身に付けないとダメだろ? だから嫌でも鍛冶場に顔出しな……ナイフ1本も作れない――何て事は無いだろうが鋼鉄装備位は作れないとな」



 親方はやる気と根性さえ有れば弟子にしてくれるだろう。だって私の場合ナイフはおろか刃物も研げなかったんだから。


 包丁は研げたけど……



「腕は磨いておいて損はない……無茶な事を炉にしないなら好きに使って腕を磨きな。素材も鉄インゴットは好きなだけ使え。勿論他の二人も…な。」


「太っ腹だなノワールさん!」

「ありがとうございます!」

「……どうして?」


「ん?」



 心底不思議そうなパニールさんはもう何度見たことだろう。正直見飽きたな。



「どうして…そこまでしてくれるんですか?」


「……まあ確かに…妹のしたことは自分勝手の事だし?」

「雇い主の大事な炉にイタズラしたようなものですし」

「はい、反省してます…」


「……正直俺も破格の待遇だと思うぞ……けどな、俺だって損得の勘定はしてるぞ?」



 私のメリットはこうだ。


 1、私はギルドの息の掛かった(別に回し者って程でもない)を親方に紹介することで借りを作れる。ギルド側は親方とのパイプを物凄く欲しがっているし。


 2、私が表舞台ギルドに出てきた所為で親方の評判が再熱して彼方に注文が殺到していて猫の手も借りたいらしい。詰まりは雑用が欲しい。私も最初は雑用だった。彼らもそこから上に上がるだろう…私よりも上に行くだろうね。


 3、何よりも私の心の安寧のため。コレが一番重要。だって私ってば一人の方が良いって改めて確信したんだもの。


 だからといって彼らを只放り出すのは忍びなくてこんな手間をかけるのだ。私も難儀な性格してるよね~。自覚してますよ。


 何かね……弟子を持つにはまだ早いって見に染みたのよ。歳も近いし、元々弟子なんて持つような柄でもなかった。



 だから格好つけて最もらしい理由を付けて追い出すのだ……この将来有望な若者達を。








 それからパニールさんを根性ごと叩き直して、パニーニ、パニーノ両名の腕の評判を聞き付けた新人冒険者に自分と二人の武具を売り込んだり。

 なかなか有意義な日々を過ごした。



 親方からの返事も上々で、ある程度力を付けてから寄越せと釘を刺されたので彼らの腕っぷしも鍛える事にもなった。


 そんな事で今山賊に殴り込みをかけることになった。パニールさんが復帰してから半年……この街に来てから6ヶ月が経っていた。



「あの・・・ノワールさん?ホントに殴り込みを決行するんですか?」

「自分はどうも闘う方面は苦手なんですが…」

「自信ないですって…」


「鍛冶屋たるもの、いっぱしの冒険者並に武器を扱えないといけない。客に確かめさせる気か?」


「な、成る程?」

「何か間違ってる気もする」

「分からなくもない…のかな?」



 私だってこんな脳筋な考え何て始めの内は持ってなかったさ。でもね、あの町って常識を知ると何れだけ危険かって漸く分かるわけよ。


 何が危険かって、周りのモンスターが桁違いに強いのなんの……この3人が平穏無事に町で過ごすにはある程度身は守れないと本当に危ないの。冗談抜きで。



「ここの街の様に堅牢な城壁が有るとその有り難みってのは知らんわな……気を抜けば喰うか喰われるかのサバイバルを暮らしながらやるくらいには身に付けないとあの町では生きて行けないぞ」


「マジで?」


「マジで」


「あの法が出来てからモンスターが増えているそうですからね」

「そんなに凄いの?」



 ここの街にはギルドもあるので守ってもらえるだろう。でも、あの町の様に身を守る壁も無ければそれくらいの実力と根性が無いと例え生きていけてもノイローゼになるんじゃないか?


 あ、それでもこの世界で育ったならある程度は耐性あるよね? この世の中モンスターがいない場所なんて無いのだから。




 さて、話を最初に戻そうか。



 今回行くことになった山賊の住み処に殴り込み……実はギルドに依頼された物だったりする。ギルドに一応(・・)所属しているので低ランクなら受注可なのだ。


 そして依頼をこなして行けばランクアップの審査を受けることも出来るのだ。


 この『山賊の住み処に殴り込み!!』もその一つ。そしてランクアップの審査でもあるのだ。



「えーっと、依頼人メモ『誰か俺の先祖から受け継いできた家宝を取り戻してくれ!あれは命よりも大切なものなんだ。本当は自分が行きたいが、家族は許してくれない……頼む、おれの代わりに家宝の奪還と山賊の討伐を引き受けてくれ!』――」

「依頼内容『街の近くにある“山賊の隠れ家”に居る山賊長並びに部下の山賊達を討伐(生死問わず)し、依頼人の家宝を奪還』か」

「この依頼人……ウチのパパだわ……そう言えば最近昔盗まれた家宝の在りかが分かったって騒いでたっけ…」



 何と依頼人はパニ兄弟の父親だった。


 3人の話に出てこないから私はてっきり……故人かと思ってた。母親はちょこっと出てきたりするけど。ご免なさい合ったこともないパニ兄弟の親父さん。勝手に故人にしてすんません。




「ここの“生死問わず”の所が……気になる」

「山賊やってるんだ、役人も悪党の生死何て気にしないってことだろ……」

「まぁ、山賊に慈悲を見せても手のひら返して斬りかかってきますよね確実に」



 平和な日本人の感性で言えば殺しなんて論外……だが、死に割りと近い彼らにとっては(と言うよりこの世界の住人にとっては)やはり身を守る為なら殺人は致し方ないと言った感じだ。


 とは言え、今回は山賊を殺そうとは思わない。



「え?」

「殺さないんですか?」

「またなんで?」


「行くことを渋ってた割りに割りきってるな。まぁ、確かにお前らの言い分はもっともだな……簡単に言うと理由としては……」


「「「理由としては?」」」


「単に懸賞金が生きてる方が高いからだ!」


「「「あぁ……(´・ω・`)」」」



 何だよそんな顔して……君らに使わせた鉄インゴットだってタダではないんだぞ? こんな時こそ稼がなくていつ稼ぐ……今、――言わんぞ。どうせ今使っても古いって言われる気がするから。


 さて、飽きれ顔の3人は放っておいて3人と私の装備紹介どんどんパフパフ~



 先ずはパニーニさん。


 長男(推定)の彼は日頃の丁寧な物言いからは想像できない程戦闘に突入すると人が変わる。ハンドルを握ると性格が変わる二重人格みたいに(彼自身は至って素面)戦鎚で敵を凪ぎ払う。グルグル回りながら敵を吹き飛ばす――私はムロフシと心の中で呼んでいる――は並の敵なら人溜まりもない……のだが、


 何故か軽装……もう一度言おう。


 パニーニさんの適性装備は軽装である。



 どうもパニーニさんは武器の中でも重い部類の戦鎚――某モンスターを狩猟するゲームのハンマーと思ってくれたらいい。見た目そんな感じで重そう――は持てるのに重たい重装を身に纏うと重さに耐えきれなくて動けないらしい……一般的な鉄装備でもだ。

 鉄は初心者でも着れるのに……なぜだ?


 と、言う諸事情で軽くて丈夫な革装備に鉄の戦鎚と言う少し防御面に不安がある装備だ。まぁ、初心者ならあり得る装備だけども。



 次はパニーノさん。


 実は本当の兄弟ではなくて従兄弟のパニーノさん推定次男。彼は古典的な突撃兵で切り込み隊長。オール鋼装備だ。彼はキチンと重装を着ているので防御面は問題なし、攻撃面では重たい大剣での痛い一撃で敵を薙ぎ倒す……のだが、身に付けるもの全てが重いので移動速度が物凄く遅い……どこぞのアニキの台詞「早さが足りない!」と口にしてしまうほど……あのアニメ見たことないんだよな……それでもあの台詞は聞いたことある。


 ま、何が言いたいかと言うとね……攻撃が当たらないのよ……敵が素早いと。


 某狩猟ゲームでの大剣を思い浮かべてくれ。あれをやったことがある人は1度はあると思う。


 モンスターだ!

   ↓

 走ってモンスターに目掛けて抜刀

   ↓

 尻尾を狙ったがモンスターが振り向き空振り

   ↓

 何もない所に降り下ろして隙が…

   ↓

 モンスター(大)の咆哮

   ↓

 耳を塞ぐ、動けない!

   ↓

 モンスターの反撃(プレイヤーなにもしてないけど)

   ↓

 まさかの一撃のあとモンスターに壁際で連続攻撃

   ↓

 まさかの開始早々の1乙…



 何て事になったら大変だ。実際危ない目にあったけどな。

 そんな訳で切り込んだは良いが逆にピンチになったら意味がなかったりする、そんな諸刃の剣……兄弟揃ってこれってどうなの?


 今後の課題は防御面の向上と重装の軽量化を見直していかなければ……


 そして最後にパニールさん。


 彼女は兄弟の中では一番安定している。接近戦ならダガーを使った一撃離脱戦法で対処して、長距離からはショートボウでの牽制・攻撃など。

 どちらかと言えば後衛向きなので装備け軽装。長さの短めの弓を使うことで早く、少ない力で敵を射る。悪く言えば器用貧乏。よく言えば万能。


 魔法の心得も多少あり、兄達が前衛なので専ら後衛に徹している。


 しかし鍛職人を目指すだけあって腕っぷしはそこらの男共には負けない位は力持ち。装備はパニーニさんと同じ革装備とオークボウ(ショート)と鉄のダガー。



 そして私は……



「一人だけ格が違う……」

「なぜその装備を……」

「え?……えっ?」


「なにか文句がある?」



 私の装備ば毛皮の鎧一式と狩人の弓と白刃の剣だ。


 説明しよう! 狩人の弓とは白神から貰った狩猟の弓を強化することによって名前が変わってしまっただけの弓だ。動物に対して大ダメージを与える。強化することによってどうして変わったのか不明だがうっすらと白っぽかった外見が今では真っ白になってしまった。ただ磨いただけ(・・・・・・・)なのに不思議なものだ。


 そして白刃の剣……これには少々私にも謎な部分が有るのだ。朝起きたら枕元にあった。


 それだけ。


 害もなさそうだし、頑丈で刃こぼれしないので使っている。


 多分白神が置いていったのかも。




 そして毛皮装備……ぶっちゃけた話、革装備よりも防御面では劣る。だが利点はある。


 革は堅いが毛皮は柔らかい。その分動きを制限されないので稼働領域が広がる。


 つまり……私は普通の人からは考えられない動きをしてるらしい。



 既存の鎧を着るとどうも動きが鈍くなって……ね。



 防御面で一番心配なのは私だったのだよ!



「鍛冶屋なんだから自分の防具位作りなよ…ノワールさん」

「普通の毛皮じゃないのは見た限り分かるけど……毛皮の鎧は……」

「紙ですよ紙」


「ごもっともです」



 いつの日か自分の動きにあった装備を作ろうと思う今日この頃~。








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