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異世界No.2―ノクターナル―15

  体が幼くなるとノワールさんも考えが幼くなります。と言うよりも沸点が低くなります。





 さて、色々あったが何とか安定した日々が……




「きゃーっ!! な、何でこの鉄溶けてるの!!」


「……お前が鈩に入れたからだろ」


「ちょっと、それは鉄じゃなくて鋼鉄……」


「だ、だって……ここに置いてたもん」


「「そりゃおいてるよ」だろうよ」




 そうですね



「ノワールさんが使う予定(すでに使用不可)だもん」


「うんうん……どうするよソレ」


「うっ……」




 どう見ても不純物が混じっていて武具には使えなさそうだ。一体何を入れたのだか……



 まさか鈩の方も……いや、まさかね……フラグじゃないよね?




「ば、バレなきゃ…」


「ところがドッコイ……残念バレてます」


「ゲッ!……あ~……てへ♪」


「…………」




 私の眉間にシワがよったのは仕方ないと思う。




 鈩は鍛冶屋にとって神聖なものであり、仕事道具と並んで大切なものだ。自分にあった鈩を作るのに何年も費やす人も中にはいるほど。この店にあった鈩は親方の所にあった鈩を作った人が同じということもあってか中々使いやすかった……ま、馴染むまで三日間寝ずの番をしたけれど。


 その苦労を水の泡にされたとあっては冗談抜きにこのパニールは解雇する……ホントにエライトラブルメーカー掴まされたわ。今にみてろよギルド上層部……




「貴女には鉄の短剣を磨く作業を命じてたが?」


「だってあんな退屈な仕事なんかやっててもいみないもん! 私は将来オリハルコンの武具を作る夢があるのに……こんなことばかりしてても夢にはおいつけないじゃん!」


「ほぉ~……。立派な夢をお持ちで」


「ふん!」




 どうだ凄いだろ~っと言いたげに胸を張るパニール。しかし、そもそも下積み何てのはどこもこんなもの。これができてて当たり前、仕事を途中で放り投げる集中力のなさでは伝説級の鉱石を扱うなんて叶うわけがない。



「知ってますか? ポプラと言う木のことを」


「は? 鍛冶屋に何の関係があるのよ」


「ポプラと言う木はね、ソレはソレは立派に成長する。それも他の木々よりも早く」


「へぇ……スゴいじゃん♪ で、ソレと何の関係があるのよ」


「おい、パニール言葉使い!」


「兄さんは黙ってて!」


「やれやれ……どうなっても知りませんよ」


「………そのポプラに貴女はなるかもしれないって話だ。」






「!! なら私スゴいじゃん♪」




 ええ。スゴいですよ……最後には盛大に倒れてしまいま すけどね。


 ポプラは木の高さに比べて木自体が柔らかい。そして根 も支えきれるほど多くない……ま、急成長する木ですから 支えなんてできてるはずもない。地面だって柔らかいとは 限らないのだから。


 そして身の丈にあわない体を支えられず、強風に煽られ て呆気なく倒れてしまう。ソレがポプラの木何ですよ。


 だから皆さんも家の近くにポプラは植えてはいけません よ。いつ倒れるか分からない時限爆弾(それも年々大きく 成長する)を植えたら……ね?


「ええ、そっくりですよ……それで?鈩には何もしてませ んよね?」


 若干引き攣っていると自分でもわかる笑みを浮かべなが ら鈩に近付く。内心鈩のことが心配で冷や冷やしている。


「何にもしてません!」


「でも勝手に鈩にインゴット焚べたよな?」


「兄さんは黙ってて!」


「(ホントの事だろ…)」


 心配していた鈩に異常は無かった。ひと安心……が、ま た勝手をされても困るのでパニールには鈩に接近禁止令を 出しておいた。勿論釘を刺しておくことも忘れずに。


「今回は何も無かったから良かった……が、大切な鈩に今 後何をされるか心配だから鈩及び鍛冶道具一切の使用を禁 止する。異論は認めない」


「はぁ!?何でよ!!」


「俺の鍛冶場はアンタの遊び場じゃない。勝手されるとこ っちに迷惑がかかる。遊びなら他所でやれ。分かったか? 」


「私はここの見習いよ!何で使えないのよ…」


「ここのルールは俺だ……命じられた“簡単な”仕事一つ 出来ない見習いに神聖な仕事場を掻き回されたら仕事が出 来ない。それでは理由にならないとでも?」


「………」


 苦虫噛み潰した顔とはこの事か。そんな顔をしていた。


「そもそも、どんな名匠も最初は下積みを重ねているもの だ。だからアンタには道具も触らせたくない……粋がるな よガキが」


 ちょっと私も頭に血が昇っていたのは認める。少し言い 過ぎたかとも思うが……言ってしまったことには仕方ない 。全部本音だし。


「アンタの兄貴達は言われた仕事を今もせっせとやってい るじゃないか……それなのにお前は遊んでいるのか? や りたいことがあるならやらなきゃいけないことをやってか らやれ。それができないなら出ていけ」


「………っ!」


 涙を溢しそうになりながら唇を噛み締めて工房から飛び出したパニール。しかし二人の兄達は追いかけもしなかっ た。呆れた顔はしていたが……


 すまなそうに妹の無礼を詫びて残っていた仕事に戻った 。正直私もすまなかったと思ってはいる。


「追いかけなくても良いのか?」


「師匠の言うことは最もだ」 「ええ、あの子にとってはいい薬になるでしょう」


「厳しすぎたか?」


「いえ、僕たちが今まで甘過ぎたんです」 「妹だからな……」


 今まで一人っ子だった私にはよく分からない。紅蓮時代 にも兄や弟が居たが、結局血の繋がりも無し、兄弟らしい 付き合いもしてこなかった。


 まぁ、この世界では兄弟子が居たが……今思えば兄弟子 も私を甘やかし過ぎだと思う。


 親になった時に苦労しそうだな兄弟子よ。どうか子供の 躾は厳しく、飴と鞭を正しく使ってくれよ。


「材料の在庫整理終わりました」


「ご苦労パニーニ……」


「こっちも砥石と作業台の接着終った…じゃない、終わり ました」


「ああご苦労…別に敬語じゃなくても良いけど?仕事さえ してくれれば」


「じゃ、お言葉に甘えて……と、パニールのヤツ帰ってこ ないな」 「まだいじけてるんですよ兄さん」 「お前に兄さん呼ばれたくない……同い年なのに」


「二人は…双子か?」


 よく見ると砕けた話し方のパニーノよりも丁寧な言葉使 いのパニーニの方が年上に見えた。振る舞い方も落ち着い ていて……パッと見パニーニの方が兄かと思った。 この二人実はここ会って三日間経つがお互いに兄と言っ ていることが多々あった。間違えたのか、からかって言っ ていたのか(はたまた作者の誤植…)今まで少し気になっ ていたのだ。


「まぁ、……双子と言うとそれも違うと…」 「はっきり言えば、従兄弟なんだ、オレ」


「あぁ、だから似てるのか…」


「師匠もう少し派手なリアクションしてくれよ~」


「俺にそんなもの求めないでくれ。あと、俺はお前らの師 匠じゃない。弟子をとるほどの腕でもない。何より一人立 ちを許されて一週間も経ってないぞ」


「「え?」」


えっ?って、二人してその反応かい。私だってまだ一人 前のぺーぺーだぞ。弟子なんてとるわけないだろうに。


「そもそもこの街には居るだろう……腕の立つ鍛冶屋が」


「確かに……けどな、“あの”ガンツ氏の弟子が新しく店 を出すって聞いたら……なぁ?」 「えぇ、皆必死で貴方に弟子にしてもらいたがります」


「今取るつもりも、これから先取るつもりも無いのだか… …」


「悲報だな」 「ですね」


そんなに残念そうにしないでほしい。親方の弟子だから って名匠な訳ではない。鍛冶のいろははそれはもう瓶の水 を移すが如く教えてもらったが、それで弟子である私が名 匠かと言われれば……違うと思う。


何より、親方の言い分では武具は夫婦で作っているので 自分一人だけの手柄ではない……うん、あんな夫婦になり たいものだ。


「名匠の弟子が名匠とは限らない。いろはは教えてもらっ たがそれまでだ……どうしてその弟子が名匠の再来だと思 うのか不思議だ」


「いや、だってさ……あのガンツ氏が推薦状を出すってこ とは…」


「あれは就職活動が上手くいくようにと親方なりの親心だ ろ」


「でも、外に出しても恥ずかしくないって事でしょ?」


「鍛冶屋としては合格ラインだからな。だが、それだけだ ホントに…」


なんだか部屋の空気が2・3度下がった気がしてならな い。マズイこと言ったかな?


「なんなら今からでも他の工房に行くか?」


「滅相もない!」 「いえ、そんなことはありません気にしないでください! 」


「えっ?あぁ、そう」


上を目指したいのなら他の工房に弟子入りした方が良い かと思って言ったのだが……勢いよく断られた……よくわ からん。


ま、働いてくれる人が減らなくて良かった……また一か ら関係を探っていくのは大変だからね。私はそんなに社交 的でもないことだし。


「さて、見習いが帰ってこないけど仕事始めるか……」


「「はい!」」




 一人いないがそれだけのことでスケジュールを変えるわけにはいかない。


 鍛冶屋として初日……開店だが、それ故にあまりやるこ とがない……いや、言い訳として言わせてもらうと昨日の うちに開店準備は終わってます。


 鍛冶屋ってのは基本注文を受けて武具を作るか修理が主 だから店に並べるのは見本用。体にあったものを買うのが 基本だし……あとは使い手を選ばない無難な小物とかだ。 投げナイフとか矢とか。


 だからもしかすると注文が入るまではあまり忙しくない と思う。まぁ、納品義務がある鉄の短剣とか剣とか皮の鎧 は提示された数だけ作りはするけど……工房の準備が出来 ていないからと免除されてたし。ぶっちゃけると暇でした 。鈩の火加減を見る以外……


 見習い3人には在庫確保に力をいれてもらっていたけど 。あぁ、勿論一人はサボってたみたいね。


「さて、そろそろ開店時間かな」


「え?まだ8時ですよ?」


「早いだろ……」


 ………田舎感覚だったのだろうか。親方の所は8時には もう開いてたけど……あれ?


 二人に話を聞くとこの街では大体10時頃に店を開ける らしい……私の感覚で言うとすっごくお寝坊さんなのだが 。


 皆と会わせるべきなのだろうか。ギルドの方で一応聞き もしたのだ。その時「好きな時間に」と言われたのでこの 時間に決めていたのだが……どうしようか?


「あ~…まあ、ここらの職人はマイペースだからな…」

「自分の思った通りの時間でいいと思いますよ」


 そして二人は最後に揃って「冒険者にはその方がいいか も」とこぼした……10時まで店が開いてないとそりゃ冒 険者も苦労するよ。





 案の定何らかのハプニングで武具を修理したい冒険者や 矢の補給をしたい冒険者に泣いて感謝された……どうなっ てるんだこの街の職人たち……



  家の周りにはポプラの木が数本ありまして……昨今強風で大木が倒れたとニュースで報道されると「家のポプラもヤバイよね」と思う雲猫’でございます。



 小さい頃は下に多く繁る細く真っ直ぐな枝を斬っては遊んでました。柔らかいので剪定バサミがあれば子供でも簡単に斬れるくらい柔らかいんです。


 しかもかなり大きくてそれでいて根はあまり張らない……風が吹くとホントに恐いです((((;゜Д゜)))




 そしてノワールさんはとっても疲れてます。精神的に。愛しい人には会えない。親しくても心の底から信用できる人も居ないのでストレスがマッハです。


 だから少し怒りっぽくもなってます。そして考えまで体の年齢に引っ張られてます。



 これからのノワールさんは少々無鉄砲になりそうです。





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