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異世界No.2―ノクターナル―3

 色々と諦めの境地を開きつつある主人公……

 空腹に耐えかねて狩人になって自分でどうにかしようと画策中の紅蓮改めニーア改めノワールです。



 ただいま件の狩人さんに弟子入りを打診して撃沈したので勝手に森に入って昨日と同じ様に木の実を漁っています。

 誤解のないように弁解すると、村長夫妻はちゃんと食べさせてくれるよ。二人より多く食べてるくらい……もっと食べたいなんて当然言えないです。二人ともお人好しなところがあるから甘えすぎるとよくない。際限無く食べそうで怖いのが本音。




 それに春先でもまだまだ収穫出来る作物も無い。このペースでは備蓄は夏まで持たない。町の中でも裕福と言っても小さな町の中ではの話だ。


 私が来たのが冬でなくて良かった。もしも冬だったら……飢え死にしてたよ。ゾッとする。



 それに寒いの大嫌いだしね。軽く死ねる。もうロボじゃなく生身だから寒さもコントロール出来ないし……あ、でも自前の毛皮があるから……でも猫系は寒さ大丈夫か?


 ……う~ん、まぁ、虎だって寒いとこ棲んでるやつもいるし……大丈夫ってことにしておこう。



 先ずは目先の食料問題だ。早急にどうにかして空腹を満たしたい。……お腹と背中がくっ付くまではいかないが、空腹のあまり胃液が喉に競り上がってきそうな感覚が不快だ。それに少し痛い……空腹時特有の痛みと不快感は久しぶりだ。


 なるべく早くどうにかしたい。嫌なことを思い出したくもないしね。




(何か良い考えって無い?)


《狩りの仕方ですか?》


(罠の作り方とか……何か狩りに役立ちそうな知恵が欲しい)


『ふむ……隠密スキルが異様に高いからなぁ……弓矢で不意討ちすればあるいは…』


(……良い考えだけど肝心の弓矢が無ければ意味がないよね……簡単に作れるものでもないし…)


『………よし、ここはご都合主義発動だな』



 なんぞそれ。まぁ言葉の通りご都合主義何でしょ。で?それでどうするのさ……お腹空きすぎて頭が回らなくなってきてる気がする。



『武具作成のスキルを授けよう……とは言え、道具も設備もないと意味がないな……うむ、これはチト難しいな』


《町の鍛冶屋さんを説得できれば良いのですが…》


(そもそもね……鍛冶ってのは子供が周りをうろちょろするのは危ないから。説得も何も直ぐ様摘まみ出されるって。私が大人ならそうする)


《確かに……》


『ふぅ……仕方ない。派遣した者が餓死しては元も子もない。弓矢は私が授けよう。』



 そう言って何もないことろから弓と矢が20本程入った矢筒が私の頭の上に落ちてきた。痛かったがそれを一々怒る気力も今は勿体なかった。



『いいか、それは狩猟の弓と矢筒だ。動物に多大なダメージを与えることが出来る』


(なにそのエンチャント……補充しないとダメとか言わないよね?捕縛なんて使えないよ?)


《エンチャント?捕縛?》


『それはゲームでの話だろう。神に不可能は……あまり無い。』


(完全に無いと言えない辺り現実的だよね)


《神様にも色々とあるんですね》


『出来るがしてはいけない決まりだからな。今回は……まぁ、人助けの様なものだ。腹を空かせた子供に獲物を取る道具を与えたに過ぎん(それでも贔屓なんだが…)なに、何かあれば「ならば物騒な手段に出ざるを得ない状況を作った馬鹿に言え」とでも言うさ』


(………)


《………》



 ホントに苦労してますね。





 さて、白神に貰った弓矢でハンティングと行きますか。



 狩猟は前の世界で慣れてはいる。が、あれは身体が知っていたお陰であって、私自身がしっているわけではなかった。だからといってそれに胡座をかいていたわけでもないが。

 勿論ちゃんと知識としても覚えようとしたさ。



 例えば……動物が残す痕跡を見つけて追跡する術とか。足跡によってどんな動物か見極める……とか。この世界でも通用するなら良いのだけど……その辺はクラウドのスキャンで知識と確認しながらやっていかないと。


 あと、猛獣に逆にご飯にならないようにもしないとね。



『因みにその矢筒は好きな矢を一本でも入れると無限に矢を使えるぞ』


(チート乙)


《おつ?》


『気にするな……仕方なかろう…。金もない、自分で賄えないだろう』


(ごもっともです)



 白神の好意をありがたく貰っておくことにする。






 貰った弓はまるで象牙のように滑らかな手触りでいてしなやかだ。それでいて不思議と丈夫なのは白神の力が宿っているからか何なのか……。


 矢筒に入っている矢はやじりが鉄ではなく鋭く削った木のようだ。しかし勢いよく放たれれば獲物の皮など容易に貫くだろう……射るときには気を付けないと。些細な怪我も万病の素になる世界なのだから…。





 今回だけはクラウドのスキャンによる索敵を使うことにする。まだニーアの時ほど身体に慣れてもいないし、子供なので荷が重い。それにお腹空きすぎてもう限界が近い。早いとこ雉なりウサギなり獲って血抜きして食べてるように捌かないと……あぁ~腹へった。




《前方10メートルの茂みに鹿を補足……どうしますか?》


(鹿かぁ……大きさ的には持ってこいだけど……ねぇ…)


《どうかしましたか?》



 果たして子供の力で引き絞った弓矢が10メートルも離れた獲物に当たるのか?そして一発で仕留められるか? 出来なければ双方に被害が出る。当たっても急所を外せば鹿は怪我をしても逃げるだろうし、私は無駄な体力を使いじり貧……逃がせば終わりだ。


 無難なのは……やっぱり初めは罠で仕留めることなんだよなぁ……時間はかかるけど動かなくてすむ。やはり弓矢は練習してからの方が良い気がしてきた。お互いのためにも。



 私の独自のルールは、一撃で仕留められないなら獲物には挑まない――だ。悪戯に傷付けるのは違うと思うからだ。趣味で狩るわけじゃない。生きるための糧にするためだ。遊び感覚でするものではない。


 そのため私は飛び道具等の武器で仕留める場合は一撃必殺を心がけている。私も殺させるなら一撃で死にたいもの。痛いのは嫌だ。



 これも美味しく食べるためだ。所詮は自分のためだ。



 そんな理由から見つけた鹿は諦めよう。子供の力で捌くのも骨だし。血抜きも時間がかかりそうだ。それにウサギや小鳥ならまだしも、鹿なんて大物獲って帰ったら大騒ぎだ。分相応な獲物にしないとね。


 やっぱり狙い目はウサギ……か鳥だね。小さすぎても食べるところ無いからある程度大きくないと……きっとこんな話を嫁さんの前でしたら批難の嵐だろうなあ~。可愛いもの好きだからね。



 あ、別に今日くらいカエルでも蛇でも蜥蜴でも……美味しく食べれそうな気がする。雨蛙は美味しくなさそうだけど――アマガエルにはお腹を壊す毒があるみたいだから触ったら手をきちんと洗ってね。因みに火を通せば…大丈夫か?あまりおすすめできないよ――出来れば食用にもなってる牛蛙が良いなぁ……蛇でも良いけど……青大将は独特の臭いがあって美味しくないし、ニシキヘビは大きすぎて絞め殺されそう――と言うかここにいないと思う――だし、蜥蜴は……何だろう、イモリっぽいのは居るんどけど、普通の蜥蜴が見当たらない。赤とか紫の毒々しい色なら美味しくないしそこら辺にチラホラ居るんどけどねぇ……見た目的に「オレ毒もってんだぞ!」ってアピールしてるよね。


 火を通しても無理そうな毒々しい色に食欲もわかなかった。嘘です、お腹すきすぎで吐きそうです。



 罠を仕掛けるにしても時間がかかるし……何より今すぐにでも腹に納めたい……唯一の特技(だと思っている)の隠密スキルを活かして……



『お前慎重過ぎやしないか?』


(命の駆け引きだもの。慎重になっても良いじゃないか……)


《……カエルや蜥蜴でも良いんですか?ホントに……》


(奇妙な肉とか食べなくても良いならまだまともだと思うけど?)


《奇妙な……?》


『あぁ……あれな。あれは……なぁ…』



 ま、現実ではそんな事無いだろう……けど。現実と2次元の区別ぐらい出来てます。今は現実なんでしょう? 私にとって非現実でも……



 ……ふと前の世界では中々実感が湧かなかった自分の身体というものを意識した。人工的な身体と違い痛みも空腹感に生きている実感が湧いてくる…。

 漸く私は生きているのだと実感できるが……実感したくもないような複雑な感情が渦を巻くような感覚に苛まれた。


 遠い……藍苺ランメイとの距離が遠い……



 手を力一杯握り締めて……気が付いた。私の今の掌にはプニプニな毛並みと同じ黒の肉球が……肉球があるではないか!!



「………プニプニっ…!」



 この肉球のお陰で靴を穿かないで歩くと足音がしないのか……。

 因みに私は猫の肉球を触るのが大好きでした。嫁さんは病的なまでに好きでした。猫や犬がドン引きするくらいに。因みに前世()からでした。



「……(プニプニ…)」


『お、おい?』


《ま、マスター?》



 自分に肉球がある場合、自前の肉球で肉球をフニフニすることになるのだが……その有り難みが全然感じない。しかも猫系だからか指先の肉球を押すと猫の収納された爪の様に黒い爪が飛び出てくる事も分かった。


 ここに嫁さんが居なくて良かったと心から思った。見つかったら疲れるまでもふられてる運命になるだろう……避けたい。切実に避けたい。

 私が力の暴走か何かで子狐(尻尾3本)に変化してしまった時に偉い目に遭った……膝に四六時中乗せられてもふられてグッタリ疲れましたもの。



 あぁ……思い出したら懐かしい様な思い出したくないようなぁ……尻尾がだらりと力なく下がった……ジジババに「か、感情がわかり辛いのぉ…」と言われてしまった獣人族特有の表情のわかり辛さをカバーする感情を表す尻尾は中々器用で物も掴める反面、感情を隠せない……顔では隠せても尻尾で感情がもろバレする。


 尻尾で物が掴めるなんて猿かって思ったけど、猫系の尻尾は元来器用なんだそうだ。他の系統ではそうでもないらしい……もしかすると紅蓮の時の狐の尻尾も器用なのかもしれない。判断基準の同じ九尾の母さんも尻尾を出すことなんて稀だから比べることもできない。




 ま、今は確認できない能力を考えても答えなんて出ない。今は食料の事だ。




『………案外余裕そうだな……あ、』


《牛……蛙?》


(デカっ!!)



 白神が見つけた牛蛙(仮)は下手をすると小型犬よりも猫よりもデカかった。



 異世界って……以外な違いがあって恐ろしい。今更ながらそう実感した私であった。





 とあるゲームで素材アイテム「奇妙な肉」と「奇妙な心臓」の正体を察して戦慄した作者です。


 そしてとあるクエストにてまたも戦慄してコントローラーを落としたのもいい思い出?


 海外のゲームは後味の悪いクエストがあったりで……それでもお釣りが来るほど面白いんですよね……バグでクエスト進行不能になって憤慨したのは良い思い出です。


 我らがノワールさんは空腹で頭がマトモに回っておりません。ですが野性的勘にて毒のある蜥蜴や蛙等は避けています。そしてお腹一杯になる為なら多少の味など気にしません。切羽詰まってます。



 そして、最後に出てきた牛蛙(仮)は小型犬より大きいと発言していましたが、実際そこに居たのは中型犬程はありました……驚いて混乱していたようです。本物の牛蛙あんなにデカくないもんね。





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