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異世界No.2―ノクターナル―1

 目を開けて周りを見渡すと焼け焦げた木材(多分建物の柱)と肉の焦げる臭いで悪臭が立ち込めていた。周りに人はいない……戦争で焼けた町なのだろうか?



「………」




 状況確認をしよう。今の姿は……鏡がないので容姿は不明だが、大体10歳程の男の子と判明。またもや男になってしまったか。まぁ、いいけどね。



 そして周りには生きている(・・・・・)人間は……居ない。



 それにしても、私の手は手袋をしているのか……真っ黒だ。しかも毛皮の手袋………ってハイハイ。もう気がついてるよ。獣人族なんでしょ今回は。


 もう最初の段階で気がついてましたよ。



 っと、愚痴ってる場合でもないか。



 今の身体に生えている尻尾からして猫系の獣人族らしい……多分真っ黒だ。良かった、薄い色だと汚れが目だって大変だもの。



 さて、こんな場所で現実逃避している場合でもない。焼け焦げた色んなモノの臭いで頭が可笑しくなりそうだ。早々にここから離れた方がいい。私のSAN値がカガガガ……冗談だよ。



 でも、どうしたものか……こんなに派手に村(さっきは町といったけど、改めて冷静に見渡してみると町と言うよりも村と言う方があってるほどの大きさしかなかった)を壊滅させるってことは戦争中ってことだよね? 子供が何も準備もなしに外に出ても…果たして生きていけるのだろうか?



 答えはNOだ。



(ま、こんなときこそ白神だね)


『便利屋扱いか』


(違うの?)


『間違っては居ないから悔しいのだ』


(悔しいのぉ~)


『イラつくから止めてくれ』


(で?今後の行動はどうしますかね隊長!)


『そうだなぁ……ここから少し離れた場所に大きめの村がある。そこで保護してもらうのが無難か』




 まぁ、子供だしね。でも気がかりが一つ……そんなに近くて大丈夫なのだろうか? 多い目の村なら格好の標的になりそうで恐い。




『そこは安心しろ……あれは盗賊団の仕業だ。戦争は厳密にはまだ(・・)始まってはいない』


(つまり、そう遠くない未来戦争が始まるってことですね。)


《流石マスターです。》


(………え?)




 クラウドが話に潜り込んできた事に少し驚いた。新しい身体を手に入れて違う世界で生活していると思ったのに……どうなってるの?



『強い要望によってお前のサポートに回るそうだ』


《今後ともよろしくお願いしますマスター♪》


(……私の感動は何処……)



 あまり触れていなかったが、この世界に来る前にひと悶着あって別れたのだが……まさかまたお世話になるなんて想いもしなかったわ。



《さて、私の役割はいつも道理です。更に!能力もパワーアップ! 前よりもお役にたちます!》


(そ、そうですか……)




 まあ、前のように視界のはしっこで動く子猫はもう見れないけどね。





 その場に留まっている意味もないので指示された村の方角に歩き始めた。




(さて、長い時間歩くことになるんだし……現状報告求む)


『うむ、端的に話すと……奴隷商の斡旋や奴隷市を開くための村に金目の物目当てに盗賊団が襲撃、村は壊滅、住人は焼き討ちにあい殆どが死亡。奴隷もお前しか居らず怪我もしていたことから放置されていたが……そこは死んでもらっては困るので蘇生&回復させておいた。』


(……憑依ってことカナ?)


『い、いや、違うぞ……今まで覚えていないだけであれから5年は経過しているぞ。今思い出せただけです…はい』


(……ってことは五年も記憶がなくて生きてきたと?)


《ええ、マスターは記憶に蓋をされて……生まれたての頃はマスターの気配を感じられたのですが……一歳の頃から交信も出来なくなってしまって……》


『少々邪魔が入ってな……少し魂に負担が掛かったのだスマン……』


(今は何処も問題ない?)


『あぁ。それは問題ない。邪魔に入ったバカは絞めておいた』


(お疲れ様でした)


《……恐かったです白神さん……》




 どれくらい恐かったのは聞かないようにして道をのらりくらりと歩いてるととうとう日が落ちてきてしまった。出発したのが昼頃だったのだろう。子供の足では倍以上掛かるだろう。



 それにしても……私は自分の年齢を10歳位だと予想したのだが……5歳だったとは。獣人族は人間と違って成長が早いのだろうか?

 歩き続けているが全くといってもいいほど疲れない。





 白神の説明によると、私の身体は記憶を取り戻した瞬間にリミッターが外れてしまったらしい。本来なら魔力の暴走で死んでもおかしくなかった――止めてくれた白神に感謝――程危険な状態で、止めるために少々身体が変化してしまった。そして見た目より若干力が強く、耐久力と持久力が大幅に向上した。


 外見は獣人族にしては小柄……これで小柄なの?



 そして私の身の上は……親に売られたようだ。悲しくはない。記憶を思い出す前も私だったのだと今なら確信できる……とても子供らしくない子供だった。前世(ベル)の時も大概だったが、悪化してたかもしれない。


 これなら弱い親は放棄したくなるのだろうか?私なら……子供を手放すなんて怖くてできない。



 ま、売られたんならもう親なんて居ないようなものだし、今生の親に対して何も浮かばない。ホントに私は少し冷酷なのかもしれないと思ったよ。



 この世界には獣人族と呼ばれる動物の特徴を持つ種族が居て、今の私の身体の様に猫系の姿や犬系の姿、他にも馬や牛…鳥に羊…等々。バッサリ言ってしまえば二足歩行の動物まんまの姿をした人たち。


 さっきもいった通り私は猫系の獣人族。猫なのか豹なのかは分からないけれど、真っ黒な毛並みは柄が判別できないので虎ではないと思う。黒地に黒の模様ならありかもしれないけど……記憶の彼方にある両親の記憶では……豹っぽかった。


 両親と言っても母親だけどね。どうも結婚はしてなかったみたい。父親の方は違う相手と結婚してたみたいだし……愛人の子か私は……。



 ま、どうでもいいか。




 そして、この世界には他に三つの種族がいるとか。



 私たち獣人族は自然と共に暮らしている。主に森のなかに住んでいる。文明には別に疎いわけではないけど、文化的な生活よりも自然のなかで暮らす方が気が楽ってだけらしい……別に粗暴じゃないよ。


 全身を鱗に覆われている種族を竜人族と呼ぶ。主に蛇や蜥蜴……極たまにカエル等の両生類系の人もいるらしい。元々は竜の姿をしている女神(母神って言うらしい)が姿を与えた起源があるらしい。水との相性が良いのか水辺に住んでいて漁業に携わる人が多いとか。しかし、両生類系以外の系統は乾燥にも強いらしい……両生類系は水掻きがある分泳ぎは随一。




 ちなみに獣人族の中でも猫系は夜を司っている神(こちらは父神)に愛されている(?)ので闇に紛れるのが上手くて偵察、隠密、尾行などが得意。軍にいることが多いが、大半は狩人や木こりで生計をたてている。力自慢な馬系や牛系は力仕事には重宝される。他にも姿によって得意分野は変わるらしい。獣人族は姿が最も多い種族でもある。

 ちなみに鳥系は飛ぶとこも出来る……ちょっと羨ましい。




 そして一番特殊な種族、蝶人族。彼らは多くが謎に包まれていて子供の姿を見た人はいない。何故なら彼らは字のごとく蝶の羽の生えている人間の様な見た目だからだ。子供の頃は羽がなく少し尖った耳以外でヒューム族と大差無い姿で過ごすからだ。


 

 そして大人になる時期になると繭を紡いで蛹になり変態を経て蝶人族特有の姿になる。蝶と言っても色々な羽があるようで紋白蝶やアゲハ蝶に黒アゲハ……トンボに蜻蛉……虫の羽なら蝶人族と見なされる。語録的にも虫人族よりも蝶人族の方が綺麗だから私は異論はない。


 中でも蜻蛉の羽を持つ者は……見目もヒューム好みで奴隷になったりした歴史があってか、基本的にヒューム族嫌い。確か今の王さまは女王で鮮やかな空色の蝶の羽を持っている人格者らしい。




 と、まぁ……ヒューム族は色々とやらかしているのでどの種族とも仲が悪い傾向がある。特にヒューム族の国の中央部分に住む彼らはヒューム族以外は野蛮な種族だと見下している傾向がある。



 ヒューム族には混血が多くいるが、例外無く皆奴隷にされ、基本的に人権がない……馬鹿馬鹿しい。


 ここだけの話だか、今のヒューム族の王は異種族好きの色狂いらしい。後宮のヒューム族の側室だけに飽きたらず、異種族の奴隷を侍らせているらしい……あぁ首閉めたい程のバカがいたか。



 ………と、落ち着こう私。



 ヒューム族はまさに人間と言った外見で、肌の色は地球と同じ。異種族が居るからかヒューム族同士の差別はそれほどない。見た目だけで決めつけるのはおバカさんだよね。他人と反りが合わないなら距離をおけばいいのに……ね?




 さて、白神の説明とたまに道から外れた時にクラウドからルートの訂正が入ったりしたが、猛獣(熊とかクマとか熊さんとか)と遭遇することもなく目的地の少し大きな町に無事着いたのだった。



 そして門番にスターップされたのは言うまでもない。




 っち……膝に矢でも受けろ門番。






 ………おっと、矢を膝に受けたから警備兵してるんだっけ? 昔は冒険者だったとか?



《どう言った引退の仕方ですか?》


『有名なとある台詞を皮肉を込めて言っているんだろう。とある世界(二次元)では頭よりも膝に矢を受けると再起不能になるらしい……現に救世主(プレイヤ)は)頭に矢を受けても死なんしな』


《……その救世主はアンドロイドか何かですか?》


『いや、ドラゴンを殺すことが出来る人間だが?』


《・・・恐ろしいですね…((((;゜Д゜)))》


(いや、ゲームだからね。ホントにあるわけないからね! 白神も本気にしちゃうんだからクラウドにはちゃんと説明しなよ!)




 やね、わ私が言い始めたことなんだけどさ……ここまで乗ってくれるなんて思わなかったんだ。



『ちなみに私のお気に入りなゲームだ。興味があるなら是非ともプレイしてほしい。』


《……私がですか?》


(あぁ…良いんじゃない? でも18歳以上推奨だからね? 平気で人殺すシーンあるから気を付けてよ。)


『ちなみにサラッと説明すると、メインストーリーもあるがサブストーリーが多くい。しかもオープンワールドでパソコン版ならMODによって更に自由度も増す……地球からお取り寄せしてホントに良かった!』



 お前は販売元の回し者か。力の入れようが半端無くてちょっと引くわ……。てか、地球からお取り寄せしたんかい。しかもそのゲーム私が二十歳くらいの頃に流行ったゲームだし。どうやってお取り寄せしたよ。



『私は時間と空間を司っている神だぞ。そんなこと簡単だ


《そんなことに力を使ってもいいのでしょうか?》


(ホントは良くないでしょ。コイツが最高神だから誰も文句言えないんじゃないの?)






 ま、話戻すと……門番にスターップされたけど何とか事情を話して保護してもらった。ここら一帯の住民たちが偏見を持ってないヒューム族で助かったわ。変な目で見てこないから、一先ずは安心した。



(すっごく同情されてるんですけど…)


《奴隷商に捕まっていたと教えたのが良かったのですかね?》


『常識を持っているヒュームにとっては奴隷はもっての他だからな。同情されても不思議ではない』



 カミングアウトするのは少しだけ戸惑ったけれど、白神に諭され話してみた。まぁ、それが良かったのは良かったんだけど……何だろ、自分の浅ましさが浮き彫りになった感が………



 こうして私はこの大きいけれどドがつく田舎町にお世話になることになった。



 こう言うのをご都合主義って言うんだね。楽だから良いけど。





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