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お使い終了!

 終了したけどやることはまだあったりする。

 無事着きました、お馴染み白神の白い部屋。前にカーテンをパステルカラーの薄緑にしたおかげか前よりは目に優しくなった気がする。


 部屋の雰囲気は真っ白な所為で目がチカチカしてて初めは分からなかったけど、なん区画かに別れていてパソコンが置いてあったり……台所はないから外で食べてるのか、広目の庭に植わっている果樹から果実でも獲って食べているのかも。


 不健康な神だった。



 しかもパソコンが友達ってほど仕事以外ではパソコンをいじっている。引きこもり予備軍だぞ。ちゃんと運動もしような?



 大丈夫なのかと心配になった。最高神何だぜ……白神って。大丈夫か天界。






『失礼な、別にいつもパソコンばかり弄ってるわけでもないぞ』


「ホントに? なら今直ぐにヘッドホンを外してパソコンの画面から目を離しなさい」


『今、見ている実況動画が中ボスを倒すところなんだが……』


「……お客が居るんだから止めろ」


『はい』




 マウスをカチカチと操作して電源を切る作業に入った。素直なことはいいとおもいます。




『それで、彼女は今どこに?』


「大広間の大きなテーブルに置いてきた……弱っているらしくて小瓶に入れるように言われたよ……このままだと自然消滅するってさ…どうにかならないの?」


『どうにかするのが私の仕事だ……本当は私の部下がするのだが、皆先の世界で彼方側の尻拭いで手一杯なんでな。現場に気軽に行く事もできない私にはこんなことしか出来ないんだ』


「色々あるんだね神にも」


『人と大して変わらんからな』





 そして漸く彼女は白神と対面した。






「で、まだ進んでないと…?」


『複雑なんだ』


『…………』




 彼女は黙り混んでしまって話が進んでいないのだ。




『こういう例は本来専門の神がカウンセリングをして転生させる……のだが……』


「その専門家が今出払って居ないと。それで白神が担当することになった。てな訳なんでしょ」


『うむ。彼女にとっては災難だが。しかしそれだけではないのだ……』


「ん?」


《マスター、白神さんから電子メールのお知らせです。》


「はえ?」


『……』


《読み上げます。“彼女にはあまり聞かせたくない内容なのでメールにした。”だそうです》


「私はメールより通信の方がいいと思うけど……」


『ではそのように』



 私たちの会話も全く耳に入ってない彼女を少しばかり待っていてもらい、私たちは脳内通信(クラウド経由)をすることになった。


 なんでもありだなオイ……





『では、クラウド…進行を頼む』


《はい、では………“第一回・脳内会議IN彼女の身の上話とコンガラガッタ運命”について会議を始めたいとおもいます。司会は私、クラウド・キャットが勤めさせていただきます。》


『どんどんパフパフ~』


「……………やる気あんのか?あ゛?」


『…すまんやりすぎだ』



 人様の一大事だってのに楽しむなんて……ちょっと不謹慎だと思う。いい子ちゃんだって?

 ………なんとでも言えばいいさ。そう思ったんだからいいじゃん。



(ほら、さっさと話終わらないと)


《そうですねすみません》


『久々の来客と日頃書類整理ばかりの仕事で溜まった鬱憤でたかが外れた…すまん』


(おうふ……辛い日々を過ごしてたのか)




 うわぁ……それなら引きこもり生活になるのも仕方ないかな。同情するよ。仕事の都合で家から出れないなんて……ドンマイ!



『別に不自由はしていない……』


(それはもう末期だわぁ)


《お察しします…》


『私は別に不幸でもないぞ……彼女が一番今不幸だ』


《(…………)》




 彼女に起きた事を全て把握していた白神に説明されて愕然とした……あの彼女を裏切った男(元カレ)はあろうことか彼女の魂を交換条件に自分達が異世界に転生(本当はトリップしたかったらしいが、無理だったらしい)出来る様に悪魔と契約したとか。マジでふざけんなよクズが。


 ……そう、(・・)なのだ。


 屑男の浮気相手はメルヘン思考のちょっと危ない考えがあった。まぁ、そのメルヘンバカ女の口車に乗って生け贄に差し出した……ほんとバカ。



 そんなに異世界に行きたいなら自分を生け贄にしろっての。迷惑極まりない。



 で、白神調査で契約した悪魔を断定……消滅させた。白神の一番弟子の最強の刺客(?)の活躍によりもう屑男と馬鹿女は悪魔に頼ることは出来ない……が、もうすでに転生してしまっているので監視を続けているとのこと。


 もう屑と馬鹿がどうなろうがどうでもいいのだが、好き勝手は出来ないだろう。



 さて、それで残った問題が彼女の魂の処遇なのだ。悪魔によって歪められた魂は決して輪廻の輪には加わることが出来ない。しかし、彼女の人生に地獄に堕ちる要素はない……。

 生憎別件で手一杯な部下たちに代わり白神に白羽の矢がたったのだ。



 今ここね。



 で、現状では彼女は特例処置として多少の特典をつけて転生させることになった。



 ・・・の、だが……




《本人がこの状態では希望も聴けませんよね…?》


『そうなのだ……だからといって勝手に特典をこちらで考えるにしても、ただの受け付け係や役員に決めさせるのも荷が重い…』


(だから白神本人が決めるため、普段外出出来ない白神に代わって私が迎えに行くはめになった……で、その特典は勝手に決めていいの?)


『致し方ないだろう。こちらとて勝手に決めて彼女が不幸にでもなったら……目覚めが悪い』


《尚更受け付け係さんたちには任せられませんね》


(……それで、特典ってのは何個までなの?)


『決まりはない。それこそ神の気まぐれだ』


(あぁ……そう。なら決めちゃおうか?)



 白神も一人だけで決めるのは大変だったと協力を容認した。白神曰く“三人よれば文殊の知恵”だと。


 三人集まっても出ないときは出ないと思うけどね。




『さて、先ずは……幸運はMAXにしておこう』


《なるほど……しかし、もう少し細かく設定しておきませんと、所謂悪運とやらが発動しそうですね……》


(本人にとっては不幸ってこともあるからね……例えば好きでもない相手に玉の輿とか……世間一般では玉の輿って幸運だからね)


『ウ~ム……“彼女にとって都合の良い幸運”φ(..)』


(その用紙ってなにさ?)


『コレに書き込むことによって転生するとき採用されるのだ』


《随分と原始的な方法ですね》


『古来よりこの方法の方が伝わりやすく、やり易いのだ』


(……彼女にとって都合の良い……ねぇ……それってさ、多少の記憶も残しておいたら良いんじゃないの?私も大半の記憶は封じられてたけど、お陰さまで慎重さはあったから…)


『慎重…?あったか?』


(万能じゃなくても、子供にしてはあったから!余計な事して側室の皆さんから怒り買ってないから…―――――ちょっと癇に障ったから嫌味は言ったけど…)


《……?》


『……ま、そうだな。彼女は享年22歳だった。ならば人並みには良識もあろう。だが、あのショッキングな記憶は封じねばな』


(それでも何かふとした拍子に解けたりするんでしょ?)


『……まぁ、な。それだけ人間の魂は奥が深いのだ……頑固とも言うな』


(……)




 否定はしない。何か生死をさ迷うようなことがあると思い出す……何て事自分で体験済みですし。




(そもそも…人に生まれなければ良いんじゃ?


《マスター、それはつまり》


『人外に転生すると言うことか?』


(うん。環境って人格構成に影響あるんだし……そんな幸運MAXで甘やかされたらどこぞのヒロイン被れの勘違い女になるかもしれないし。それならいっそのこと動物としてペット感覚で愛されてる方が気が楽かもよ……まぁ、人間に恋したら大変そうだけど)


『ふむ……それも手だな』


《人ほど複雑ではないですからね、動物の世界は》


(でもさ、言葉が通じなかったらそれはそれで苦労すると思うから何かしらの危険を報せるサイン的な能力もつけといたら?)


『ふむふむ……“自信に危険を報せる能力”……虫の知らせ的なのか?』


(それでも良いけど…それってただの勘ってことで見過ごしそうだよね。いっそのこと色とかで判別できれば良いんじゃない?)


《色……ですか……色つきの“もや”何てどうでしょ?》


『ふむ、しかしな、規定としては“他人の感情を盗み見る能力を人に与えてはならない”だからなぁ……まぁ、特例処置として容認しよ。だが、自身が好意(信頼・友好・愛情など含む)を持つ者には適応しない事にしておこう……』



 まぁ、精神衛生上信頼している人が自分をどう思っているか意図せず知ったらショックだしね。それと幸運の使いどころだけど、恋愛面にはふらないようにした。これは変なものを惹き付けないためだ。ストーカーとかお呼びじゃない。そっとしておいてください。特に彼女は。


 じゃぁどこにふるか……ま、健康面とか…それと、身の危険とかにふるつもり。とにかく不幸な死に方はしない様にする。



『…兎に角恋愛面は普通で、身体と命の危険度は最低値にして……のらりくらりでも生きていける…と。φ(..)』


《ですがそれでは……》


(勿論甘やかしすぎは彼女のためにはならないから……天涯孤独ってことに)


『それは……酷くないか?』


(人間としての人格がある以上動物としては生きていけないと思うけど?それ以前に親や兄弟から異端だって爪弾きにされるよ。獣はそう言うの敏感だからね。)



 そしてとってもシビアだから。ポチも毛色が違うだけで苦労したって言ってたし、獣から見たら異端な兄弟って恐ろしいんだろうね。



『……まぁ仕方ないのか……では代わりに愛される(ペット感覚)外見を……』


(誰からも愛される動物………ゴマちゃんとか?)


《ゴマちゃん?》


『ゴマフアザラシの事か?』



 ゴマちゃん最強だと思うけど。特に赤ちゃんは最終兵器マンチカンと同等だと思う。可愛いよねマンチカンの子猫……



『ではマンチカンでも良いのでは?』


《足が短いのは猫として……複雑ですね。本当の猫ではないですけど》


(まぁ本猫ほんにんとしては不服だよね。)




 とまぁ……関係ない話もしつつ、彼女の転生の特典を考えるのに二時間弱掛かったのは仕方ないと思う。だって人の一生(転生すれば人じゃないけどね)を左右することに時間をかけずにどうするのさ。



 で、決まった特典は……



 ・一つ目、不幸体質を改善(恋愛面と対人面)


 ・二つ目、身体的な強化(ただ単に打撃に強くして重い物の下敷きや落下による死亡回避)


 ・三つ目、動物的な愛され体質(恋愛面では適応外)


 ・四つ目、危機回避のための処置(色づきのもやで表示。しかし、自分に好意的な者は範囲外(例外あり))


 ・五つ目、種族は……アザラシ(赤ちゃん)


 ・六つ目、餓死しないために周りの魔力を吸収して生きていけるようにする(任意で切り換え可能)


・そして最後………




 最後は、彼女が死んだ記憶を曖昧にして元々の性格を取り戻す。



 そして、これは特典とは関係のないことなんだけど……彼女を最後まで信じていたもう一人の亡くなってしまった親友と同じ世界に転生すること。


 勿論、親友は記憶は……ないと思う。それでも巡りあってまた友達になるかもしれない。


 嫌な想いもするかもしれないが、それは……まぁ…私の知るところではない。彼女達の人生だ、そこまで対処はできない。



 願わくば、今度こそ人生を全うしてほしい。




 某月某日―――地獄に身を置くことを強いられた女性は、この日無事に親友が先に転生した世界へと旅立った。


 ――新たな生として、可愛いフワフワの毛皮を纏って……



 そんな彼女がとある兄弟と暮らすのは……また別のお話……







 




 後、1話程続きます……あと、人物紹介を作成中……

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