異世界No.1―アテナ―15
主人公(仮)が何事かやらかしたようです。紅蓮さんお怒りです。
さて、何があったのでしょうか?
饅頭を食べお茶を飲み、それでも満足しないのか藍苺は四次元なポーチからまた何か取り出そうとしていた。
「本当に晩御飯食べる気あるの?」
「ある。」
「今日は仕事してないから過剰摂取になるんじゃない?」
「……明日消費する」
「(今日の晩御飯少な目にしよう)」
ポーチから取り出した袋の中には真っ黒な一見すると木の欠片に見えるゴマたっぷりおからクッキーが大量に入っていた。そう言えば割れたクッキーはあげたかも。
そのおからクッキーを躊躇なくパクパク食べ始めるのだった。どんどん頬袋に貯まっていくのを見ているとついつい……その詰まってる頬袋を指で潰したくなる。しないけどね、嫌われるから。
「で、そのカオスな酒盛りを抜け出してさっさと寝たのか?」
「付き合ってられないでしょ? 私、酔っ払い嫌いだし」
「(お前の場合は人間嫌いだろ)」
さて、一丁話を続けましょうか。
早朝……多分6時辺り…。
私の目の前には……
「ごめん、こんなつもりは……」
「あ?」
「自分の部屋が分からなくて…。」
「ハァ?」
「と、トイレに行った帰りに…その、部屋を間違えました……」
「で?」
「ごめんなさい」
目の前にはエロゲの主人公ヨロシクラッキースケベが発動したエスデカ……もうスケベ大魔王で良いと思う。コイツは早朝トイレに行って帰ってくる時に間違えて私の部屋に入って来たのだ……隣のメリルの所に行かなくて良かったよ本当に。
鍵を掛けたのにも関わらず、鍵が壊れていた様で……そこら辺はホントにエロゲの主人公だな。でもこの元のゲームは15禁でもないただのRPGだぞ。何でこんなオプションついてんの?エスデカよ。もうお前はエロデカで良いと思うよ。名前変えたら?
《変態……変態は不浄……女性の敵》
『このラッキースケベは元からこの者が持っていたやようだな……女性の部屋に勝手に入るなど……人類の敵だな』
(私は今男だけどね)
『《性別はこの際関係ない!》』
(そ、そうですか)
私よりも怒っていらっしゃるお二方にドン引いた。怒っているのは私の為だけど……私の頭の中だけの事だからね?
エスデカは今、仁王立ちの私の前でDOGEZAをしている。今の私は無表情……さぞかし恐ろしげに見えるだろう。実際眉間には皺が寄っているだろうが……あれ?コレって無表情って言えるのか?
他は無表情……なんだよ。無表情って事にしてね。
「すいませんでした。わざとじゃないんです!」
「わざとじゃなければ赦されると思うな。悪意が無くても全てを許せるわけ無いだろ。もしも他の部屋に入ってたらどうするんだ? 嫁入り前の女性も居るんだぞ……もう少し配慮しろよ。」
「はい……」
全く。人がゆっくり寝ていようと思ったのに……機械だから眠れないけど。それでも眠るのは私にとっては大事なのだ。人だった頃を忘れないために……
そんな大事な惰眠を奪った奴に慈悲なんて無いですよ♪
「さっさと自分の部屋に行け」
「あ、はい」
いや、ちょっと待てよ……このラッキースケベの事だ、隣のメリルの所に行くかもしれない。そして、気が付かないメリルのベットにコイツが潜り込んで朝まで居たら?
……親方と愉快な仲間たちにボコボコにされるな。別にそうなっても良いけど……ヘタレ狼が可哀想だな……折角メリルと距離が短くなりかけているのに……ん~……仕方ない。
(クラウド?コイツの部屋って何処?)
《それなら夜の間に皆さんの生体データを記録していましたから分かります。ここから4部屋離れた階段隣の部屋です。》
『……どうして奥まったこの部屋に入ったんだ? まさかわざとではあるまいな?』
クラウドのサポートにより早くも部屋の場所がわかった。白神の言う通り何で奥まったこの部屋に入って来たのだ? ちなみに一番奥は隣のメリルの部屋だ。メリルの部屋の向かいがラルフ。なん部屋も離れているのに……不思議なことだな……ホントに無意識か?
「また部屋を間違われても迷惑だ。案内する。」
「え?いや、そんな事は……」
「女性の部屋に入って悲鳴をあげられたら迷惑だ。寝不足で機嫌が悪くなる」
「君はアンドロイドだろ?睡眠は要らないハズじゃ……」
「……誰がそんなこと決めたよ。俺の勝手だ。さっさと行くぞ」
機械だからなんだって言うんだ。機械は機械でも生体機械だ。私と同タイプは自分で思考して個性もあると聞くぞ……あれ?それって人と変わらないんじゃ……。何だか定められた規定に反しているような感じもするけど。
「記憶が正しければお前の部屋は階段の直ぐ横だ。どうしてこんな奥まで来たんだかな。」
「あ、あははは……寝ぼけてたんだよ…」
寝惚けたが為に私に床に押さえ付けられ地べた(床)とキスするはめになった。しかも結構な力でさぞや痛かったであろう。謝らないけど。
「ほれ、さっさと寝な。」
「ありがと……」
最期まで言い終わる前に私はUターンして部屋に帰ろうとした。途中呼び止められた気もしたが何もなかったと言うことにして部屋に帰る。眠くはないが……眠りたいのだ。私の精神衛生上睡眠はある程度は必要なのだ。生粋の機械じゃないからね。ずっと眠らなければ気が可笑しくなる。
『やれやれ……身体の調子はどうだ?まだおかしいか?』
《データ上は異常無し。ですが精神ダメージが限界にとても近いです。何があったのかは分かりませんが休息が必要です……急速に》
(…………)
『…………』
《笑ってください。それか突っ込んでください……私が恥ずかしい》
精神を強引に今の身体から引き剥がされた様でかなりの精神ダメージを受けていた。そして今はクラウドのボケに衝撃を受けていた。柄じゃないことをすると脳が機能停止することが分かった。どうしたのクラウド? 頭でもぶつけた?私のダメージがクラウドにも影響してるの?大丈夫?
《大丈夫だ、問題『(ストープッ!!)』》
あ、アブねー。最大の死亡&失敗フラグが建つところだった。間に合った事を祈ろう。
『いいか、それはダメだ。死亡&失敗フラグだ。使うな。みんなの命が掛かってるんだ。』
《すいません……気を付けます。》
(ま、ギャグキャラ化してれば次の日には復活してるけどね。)
『2次元の話だかな』
《何だか…理解不能です。》
しなくてもいいと思うよ。
とまぁ、私はこの世界の管理人・アグリタさん(白神よりも年下)の精神攻撃によって結構なダメージを受けクラウド的にはヤバイ様です。本人の私からしたら、ちょっと頭が痛い程度なんですけどね……。
《脳卒中と同じですよマスター。自覚が無くても実際にはダメージでボロボロなんです。一度何処かで修復を受けるかじっとして自己修復を待っていてください。今は動かないことが吉です》
(動かないねぇ……いや、修理したくても何処で受けるのさ。追われてる身としては捕まりたくないよ?)
『そうだな。本来なら私が直す事も出来るのだが……色々と問題があるしな……神々の規定に反する』
だそうだ。ま、家にさっさと帰って休もうかね。ネロも居ることだし、いっその事今帰ってしまおうか……宿屋の主人も起きてる頃だし。
(親方には手紙でも書いとけばいいか。ここの代金は前払いで親方が出してるし)
《……周囲をスキャンします……皆さん眠っているようですから今なら誰にも気が付かれずに出れますね》
『良いのか?』
(別に私がいなくてもどうにかなるでしょ。)
白神のラルフがヘタレじゃなければなぁ…との呟きは……まぁ無視して。だって人の恋路を邪魔したら暴君ネロ様に蹴られるし。あのエロデカ…じゃないエスデカが卑怯な手でも使ってきたならヘタレ狼に加勢するけど。そうじゃなければ極力関わりたくない。
なんか私にもエスデカのラッキースケベが発動してそうで怖いから。アイツ……義弟・大雅と同じ気配がする。性別関係なしにモテそう。ぐげっ
そう言うことで、私は早々に!?宿屋の主人にチェックアウトを済ませて家に帰りましたとさ。
あぁ~頭痛てぇ……
*********
「………」
「あの、嫁さん?」
いきなり黙った嫁さん。表情は恐ろしげな無表情。
「ソイツ…コロス……」
「その前に伸したから良いでしょ。」
「自分の夫に手を出されそうになったら怒るだろ?」
「まあね。それと、今は藍苺が嫁だよ」
「細けーこたぁーいーんだよ。」
「細かいことが良いなら今日は昨日の残り物と雑炊で良いよね♪」
すると嫁さん素早く平謝り……そんなにおかずが欲しいのね。
エスデカさんはトンデモナイ事をして紅蓮さんの怒りを買いました。
どうもああいった類いのスキル持ちは好きではない紅蓮さんは今後関わりたくないと思っているようです……ゴメンね話の流れ上また遭遇するから。