異世界No.1―アテナ―14.5~番外編~
紅蓮以外の視点です。今回は謎が多いこの話のキーマン(女性だけど)メリル視点です。
時はニーアが帰って一時間後のこと……
《メリルサイド》
「え?もう帰った!?」
「はい、今から一時間前辺りに……それと、お手紙をお預かりしております。どうど」
「そうですか……」
朝起きるとニーアさんはもう居なくなっていた。宿屋の主人の話によると一時間も前に出ていったそうだ。お礼しか言っていないのに……
渡された手紙にはこう書かれていた。
“親方たちへ
あんた等が起きる頃には俺は帰っている頃だろう。暇も告げずに帰って悪い。俺にも疲れがあるんだ察してくれ。それと、エスデカは何かの加護で何処にでも入れるのだろうか俺の部屋に侵入してベットに潜り込もうとした……どうせ間違えたのだろうさ部屋を。奴と行動を共にするなら対処してろよ。要らぬ疑いを掛けられるぞ。ま、そんなワケで、ここでは気が休まらないので一足先に帰ることにした。何かあればまたルシェに頼んで家に来ればいい。だが、エスデカには場所を教えるな。あの手の輩は好かん。じゃあな。ニーアより
追伸、ルシェの馬鹿がバカをやらかしたらエサで釣ると良い。単純な食いしん坊だから多少のことなら協力してくれるぞ。俺の家はバラさないけどな。”
色々とツッコミたい内容だったわ。
案の定、前世の幼馴染みは私の部屋に入って来ていたのよ。でも、私も前世の経験上わかっていた。アイツのラッキースケベにはホントに愛想がつきるわ。何度着替えを覗かれたことか……。思い出すだけで怒りが沸々…。悪気がないから赦される……周りも周りよ。私の両親は幼馴染み親に抗議したけど……結果は笑い飛ばされただけ。私が意識しすぎるってね。
お陰様で私は自意識過剰な女って思われたのよ。ご町内の皆様に……同級生には同情と嫉妬の眼差しで針の筵よ。お向かいのおばさんには頑張れって励まされたわ……あの幼馴染みの一家はネジが何本も外れてるのよ。しかも大富豪……私がどうこうできるレベルじゃなかった。
れに最悪なことに家が隣同士……何かと我が家に関わりたがるのは最早異常だった。お向かいのおばさん曰く「貴女のお父さんとお母さんはお隣の夫婦と因縁があるのよ……」と話してくれた。
掻い摘んで説明すると、私の両親に幼馴染みの両親が横恋慕してたってこと……もういい加減諦めてよ……と何度思ったか。
オッソロシイ事に彼等幼馴染みの両親は私と幼馴染みをくっ付ける事にご執心だった。何でそんなことわかる?それこそ自意識過剰だって?
鈍くても分かるわよ……明らさまに「私達が果たせなかった恋をあなた達が果たしてね」とか「俺達がどれ程苦痛と苦渋を味わったか……アイツ結婚してもらわなければな……」なんて言われたもの。
親にまでアイツ呼ばわりされるアイツには同情はするけど。親の言うことを何時までも鵜呑みにしているから匙を投げたわ。私がどんなに疑問をぶつけても「そんなこと無いよ、気のせいだよてで全部終わり。もう疲れたわ。
「ハァ……」
「おはようメリル……どうした?」
「あ、」
後ろからまさに今寝起きですって出で立ちで起きてきたラルフお思わず笑みが溢れる。だってラルフったら寝癖も直さず眠そうな顔で立ってるんだもの……お姉様達に人気の若手傭兵はどこにいったの?ってくらい見る影もないわね。
「ちょっと朝から一悶着あって」
「あのエスデカって奴か?」
「そう。いきなり部屋に入ってきたのよ」
そう言うと幾分鋭さを取り戻した目で険しさを惜しげもなく出した……。これは怒ってるわね。
「殴りてぇ……エスデカの顔面に」
「余計騒ぎになるから止めてね?」
「チッ」
私の両親と祖父母と此処での幼馴染みのラルフには私の前世を全て話してある。あ、お父さんの同僚のみんなも知ってるわね。本当は話したくなかったけど、お祖母ちゃんの特殊なスキル「遠見」によって全てを暴露されました5歳の時にね。あ、ラルフはその当時6歳だったから知らなかったみたい。
最近聞かされて怒ってた。「何で言ってくれなかったんだ」ってね。仲間はずれにされて怒ってるのかと思ったら「す、…好きなやつに頼られないなんて……悲しいだろ!」って言われたわ……家族みたいなものだからね……ってことにしておきましょう。
だってラルフを異性としてみたら……ヘタレは論外。
なんてね。ホントはただ怖いだけ。今の関係を壊したくないの。だから、
「自分でどうにかするし、何かあったらお父さんにちゃんと言うわ。気にしないで」
「…………」
ごめんねラルフ。貴方は私よりももっとマシな人が居るから……
私はこの一生も孤独に生きる覚悟をしているの。だから、誰も愛さない。愛したらいけない。
それが私の安寧に繋がるのだから……
恋にかたくなになってしまったメリルさん。果たしてヘタレ狼君は彼女の心を解すことが出来るのか?
ヘタレよガンバレ!
………ま、今のところダメでしょうね。