異世界No.1―アテナ―14
悪夢から脱出なるか? 紅蓮改めニーアはこの世界の神(月じゃないよ)と助けに来た白神と共に対峙した。
どうなるのかな?
姿は見えない神に対して何をすれば良いのかさっぱり検討もつかない。
どうも。紅蓮改め、今はニーアです。精神世界からこんにちは。
前回のあらすじ、森で迷子の親方を助けに森に入った私と愛馬ネロ。そして、頭の中の住人(妄想じゃないよ)クラウドと助っ人?白神。私たちは無事に負傷して動けない親方を発見、周りに群がるモンスターを一掃した。しかし、背後に不振な気配を感じた私は術を解禁して敵に放つのだった。
しかし、術は効かず、私は過去の悪夢を延々と見るはめになる。そんな事にも心を折らずに居た私に多分元凶の神様が語り掛け、その隙に白神が侵入してきた……さて、助けも来たことだし、さっさと帰ろうか。
というところであらすじ終わり。
『長いな』
(どうでも良いから帰ろうよ。この話ももう14回目だよ。そろそろ話の根幹に進もうよ? 14回って最終幻想の異説では14回目で終わったぞ確か。)
あれ?13回だった気もするが……何年も前の事なのでよく覚えていない。
『メタいぞ……まぁ、私としてもさっさとこんな誰得の世界から出て動画観賞したいしな……それに漫画も読みたい。ゲームもしたい』
(それ、私も読みたい!ゲームは物による。いまどんなのあるの?)
苛ついている敵神を丸ッと無視して某笑顔動画で面白いのは何かとか、最近の漫画はどんなのとか、割りとアチラさんにはどうでもいい話で盛り上がった。終わりを告げたのはイライラMaxの敵神であった。
【その様な下賎な……いや、マンガもMAD動画も面白いですけど……違う違うっ! オッホン……何をしに来た白き神よ。ここはわたくしの世界。何用か?………】
白神に神様らしく問う敵神。しかし、私の耳には聞こえぞ。最初は某動画を見ている発言と最後ボソッと【私だって動画観賞したい!】ってハッキリ聞こえた……ならなんでこんな世界を勝手に作り替えたよ。
『ち、楽しく話していたと言うのに…空気を読め。アグリタ、貴様には世界を勝手に作り替えた事と下界に過干渉したことについての処罰が下される……神妙にせよ。さもなくばこの世界ごと消えるぞ』
(それは初音……違った、初耳なんですけど……)
私も痛恨のボケで少し場が白けたが、敵神も何だかぶっちゃけてたしそんなに睨まないでよ……抑私が間違ったんじゃなくて作者が変換ミスしただけだよ!
(作者の変換ミスだ。俺は悪くねぇ!だってホントに私が間違ったんじゃないし)
『メタいメタい……』
【あなた達……一体何がしたいのですか?どこぞの親善大使様ですか?】
仕舞いには敵神に呆れられたぞ……ちっ、そっちが最初にボヤいたんじゃないか……
てか、神でもそのネタ分かるのね。
『ま、アグリタがMAD動画を見てニヤニヤしているのは周知の事実。そして、』
(白神は爆笑してるんだな)
『おう、なぜ分かった』
(いや、当てずっぽ)
【……あの、本当に何がしたいのですか?……】
まあ、暇だから世間話をしてるんですよ。ま、さっさと帰ろうよ。不発に終わっても術を使うと腹が減るんだからさ。
そして、さらっと出てきた敵神の名前はアグリタ。そして女性らしい……声で何となく分かってたけど。
『仕方無いな……今日の晩御飯は?』
(肉じゃがとチンゲン菜の和え物(鰹節と醤油)と丸パン)
『えぇー。父さん、野菜減らして…』
【ツッコミはそこですか?てか、父親でもないでしょう。先ず、親子じゃないですし、貴方は神でしょ。あと、肉じゃがとチンゲン菜の和え物はパンではなくてご飯に……あ、いえ、何でもないです。】
うん、私もそう思うよ。けど、珍しい?ノリの良い神様だね。白神除いて。
『えぇー。だってホントに野菜嫌いだもん』
(いい歳した大人?が好き嫌いするな!母さんに言い付けるぞ!)
『嫌いなものは嫌い…』
【ちょっと待ってください。白き神、貴方私より年上でしょ。モンとかキモい……あ、いえ、言葉を選んでください。キモい……すみません。】
本当にノリが良い……それにしてもツッコミたい体質なのか今もボソッと【それに母さんにって、誰ですよ母さんって……】とツッコミ続けている。もしや、彼女はツッコミを司る神……ではないか。あれはまだ甘い。
ツッコミの神はあんなもんじゃないだろう。それこそ大阪人の方が……比べるまでもなく上手いだろう。うん。私はツッコミとかボケとかあまり得意じゃないし。ただふざけてるだけだし今は。
『……他人からキモいと言われると多少成りと傷付くな……』
(まぁ、いい歳してはしゃいだのが不味かったかな?)
【……もういいです。帰ってください。疲れました……】
彼方が勝手に音を上げたので帰れることになったらしい……それくらいの疲労で神様をよくやってるね。ツッコミを司る神になりたいならもっと精進しないとね。
【……決してあなたが今思った事は目指していません。……帰ってください。】
こうして女神(仮想敵神)のアグリタの力か何かに弾かれるように意識を飛ばした。多分目を覚ませば元の世界に帰れるだろう。
*********
「ふーん…ノリが良いなその神様」
「某笑顔動画をニヤニヤして見てるのが日課らしいよ」
「仕事しろよ」
「神様って基本暇なもんなんだってさ」
「(暇だからしょうもない事をしでかすのか…)」
何杯目になるか分からなくなったお茶を飲み、話を続けた。
*********
アグリタの力で現実に帰った紅蓮を横目で確認して女神アグリタを再度見る。
『久しいなアグリタ。お前がこの様なことの片棒を担がされているとは……何があったのか話せるか?』
『白き神におかれましては、遠路はるばるこの様な端の小さき世界へようこそお越しくださいました。勿論その事情はお話し致します。』
暗闇から一転、田舎の家の様な内装のけれど暖かみのある家に変わる……。ずっと気になっていたのだ。この子がこんな馬鹿な事をしでかす様な神ではないと……パソコンが置いてある机を見ながら思った。彼女は大事をしでかす程度胸はない。それだけの力もない。
紅蓮には多少厳しめな批判を言ったが、この子を雛の時から見ていた身としては有り得ないの一言しか出ない。何よりもこの子の司る性は方正。より正しくある者だ。自分の都合で世界の改ざんなどしない。いや、出来ないのだ。
元りよその様な力は無い。
『誰に片棒を担がされた? かなり高位の神だろう?』
『貴方より上の者などいません。が、私より上は大勢居ます。今は其しか言えません。』
『私より上は……今は居ないな。そうか、そなたはこれより先は手出し無用だ。此方側を手助け出来ずとも、そちら側の手助けをしなければいけないわけでもあるまい?』
『ええ、可能です……。歯痒いものですね。何も出来ないのは。貴方の介入でこの世界がどうなるか予測できませんし。……ですが、私個人としては“あの方”の傀儡から解放されるのなら……ふぅ…喋りすぎましたね。では、わたくしはこれでお暇します。貴方の采配に期待しています。』
さて、役者は揃わないが……仕方ないな。
どうなるか……
『それにしても、彼の出身の世界は……私の知る日本とは違うのですね……時間軸がバラバラでした(それにしても、何故あの様に大怪我を負っていて……あんなのにも動けたのだろう……普通ならあり得ない……)』
『そもそも違うからな……共通の物もあれば無いものもある。世界軸が違うからな……』
同じ様な世界は数多ありますからね……と言ってアグリタは儚げに笑った。
********
「!!!」
気が付くと……そこは地獄でした……。
「…………」
訂正、目の前はカオスでした。
《あ、お帰りなさいませマスター。丁度良いところに》
(………コレは何?)
《人間の成れの果てです》
状況説明で分かったこと。私(を操る白神)が親方を連れて無事森から帰ってきて村に唯一ある酒場兼宿屋でのんびりしようとしていたら、遠くに仕事に行っていた親方の仲間たちが駆けつけて合流。何の経緯か酒盛りに発展して………死屍累々の何ともカオスな惨状に。
床には親方の仲間たちが転がり、何故かエス……カデ?……デカ?……エスデカは真っ赤な顔で酔い潰れテーブルに伏している。親方にでも煽られたか?ま、どうでもいい。
その取り巻き達はあたふたしてエスデカを看病している……とはいえ、お嬢様育ちに看病をさせるものではない。なんか見るからに体に悪そうな「ナニソレ、毒野菜?……食べたら絶対にあの世行き」な物体Xをエスデカに勧める。リタ?ってお嬢様は水を持ってきているけど……それ、花瓶の水だよね?もしかして皆さん酔ってます?
一方親方本人はまだ飲んでいる。蟒蛇か?テーブルにはところせましに酒瓶が置いてある……しかも全部カラ。床にも空ビンが落ちている……まだ飲むのか?
そして、メリルとヘタレ狼と食いしん坊エルフ・ルシェは呆れて呆然としていた。どうやらシラフのようだ。
「ん?ようやっと戻ってきたか……現実に」
何かを悟っているのかルシェが聞いた。会った当初から何処か悟っているような、掴み所がない奴だったな……何者なんだろ……ただの食いしん坊か。
「ここまでの事よく覚えてないんだけど……なんの騒ぎさ、コレ」
「えっと……酒盛り?」
「死屍累々だけどな……皆親方に飲まされた……」
若干疲れたような声でメリルとヘタレ狼が答える。このカオスな状況でよく何時間も居たな……精神的に疲れたのだろう。
って、怪我はもう良いのか親方!?酒飲んだら治り辛くならないか?
ん?ちょっと待てよ……皆?
「皆って………お前らも?」
「うん……」
「ああ……」
「このクランベリーの村の地酒は旨いな。買って帰ろう。お前も飲むか?」
酒を普通に勧めてくるルシェと、遠くを見つめたような、全てを諦めたかのような顔で答えたメリルとラルフ……お疲れさまでした。
「(メリルやラルフも飲んだのか……の割にシラフに見えるけど……そう言えばルシェはエルフだもんな。酒に強いしなエルフもドワーフも)……未成年が飲酒かよ……体に悪いぞ。将来背が伸びなくなるぞ」
「そうなのか!?」
なんだ、知らなかったのか。ラルフはダルそうな顔から一転して衝撃の新事実に食らいついた。そうかそうか……知らなかったのか……。
食らいついたラルフの為に、覚えていた未成年が飲酒をするとどんなデメリットがあるかをつらつらと説いた。するとメリルは「そう言えばそんなことも習ったかも……」と呟き、ラルフは「そんなこと知らなかった……俺は親方に勧められるままに……知らずに飲んでいたなんて…ッ…」と悔しがっていた。
どうもルシェ以外のテンションが可笑しい……もしかするとシラフに見えるだけで皆酔っていたのかも。
だがラルフよ。お前はもう175センチはあるだろう。まだ伸びたいか。ま、ここでの平均身長は高いからね……180センチあるのが普通って言われてるからね。私も丁度180あるし。
「あ、この果実酒旨いな」
ルシェからススメられた酒はベリー各種を使った果実酒で、甘い割に強く飲みやすい。あ、これ悪酔いするわ……。機械でよかった。
「だろ。この村の特産品のベリーをふんだんに使っているんだ。甘いが強い酒だ……弱いとアイツらの様になる。」
何故かこの二人は平気そうだかな、と言っていた。親方の子供だからな、強くても不思議じゃない。だが、若干酔っているのは気のせいか?
ヘタレ狼は知らんが。話からして日頃から飲まされてたのかもな。
「あの、お父さんを助けてくれてありがとうございます。」
「あ、俺からもお礼を言うよ。ありがとう」
「借りを返しただけだからな。ま、晩飯奢ってくれるならチャラだな」
「私は何もしていないが……奢ってくれ」
「お前はもう少し遠慮しろよ……」
遠慮ってなんだ?と本気で頭を傾げるルシェの頭を小突いた。何をするのだと目で訴えてきたが無視。遠慮しろよ全く。あ、私も人の事言えないか。
私とルシェが互いに三人前平らげた後、夜になりそうなので今日はこの村に泊まる事になった。宿屋は久々の大勢の宿泊客に大喜びしていた。こんなに田舎だと客も来ないものね…。けど、こんな酔っ払い集団でよかったの?
などと、一人ひとり与えられた部のへベットで寝そべりながら思った。
宿代は親方が払うらしい……宿代くらい出せると言ったが断られた……お礼だってさ。
こうして色々あった一日がようやく終わったのだった。
あ~……疲れた。
リモートコントロールで村の宿屋兼酒場にすでに居たニーア。実は白神がニーアを助けに行くのでクラウドが管理してました。何を話せば良いのか分からずずっと黙りしてました。
なので皆さんニーアが何処かおかしいと思いながらも見守っていました。エスデカとハーレム要員達を除いて。
結構大切にされてますニーアは。