表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/80

異世界No.1―アテナ―12

 漸く……そう、漸く物語が動き出した。待ちに待った展開だ。もうあれから一年たっているのだ……もう十分に待った。



「お願いだ!……親方を助ける手助けをしてくれ!!」

「お願いニーアさん!」



 私の目の前にはメリルとヘタレ狼・ラルフ。彼らは土下座する勢いで我が家に突撃し、ドアを叩き壊さんばかりに叩き、怒濤の救急支援を要請してきた……若干引いたのはしたかないと思う。



「……先ずは説明からしろよ……サッパリ分からん」


「お、親方が!親方がっ!!」

「お父さんが大変なの!!」


「だから状況を……説明しろよ」



 パニックになっている二人を落ち着かせる(物理)。殴ってはいない……頭を小突いただけだ。


《殴るのと何が違うのですか?》

『あいつが本気で殴ればアイツらの頭はスイカ割りのスイカの如く割れるぞ

《スイカ割りの……恐いです……》



 私の画面の隅でデフォルメされた白神と可愛らしくデフォルメされた二足歩行の猫の姿のクラウドがスイカ談義?をしている。ハッキリ言って邪魔だ。



「で?その親方がどうした?」


「殴らなくても良いだろ……」

「痛い……」


「で?その親方がどうした?(黒笑)」



 埓が明かないので脅す。さっさと要件を言わないのが悪い。腕組しながら睨むと二人は話始めた。




 なんでも、森の異変に気が付いた親方が様子を見に行ったきり帰ってこないのだそうだ。フラグだなそれ。ま、婆さんの遠見と言うスキルで無事なのは分かっているが……どうにもモンスターのレベルが異様に高く容易に助けにいけないとか……


 前にも説明はしたはずだけど、この森もかなりの高レベルモンスターの住みかになっている。よくもまぁこの二人はここまで来れたものだ。



「あ、此処までは……」


「ふん、私が案内した。困っていたのでお前のことを推薦したぞ」


「………お前……懲りずに余所で盗みを…族長に報告だな」


「「は?」」


「まて、それは不味い。まだなにもしていない」


 なにもしていないって……何する気だったのか?



 なんと此処まで案内したのは食いしん坊エルフの盗み食い常習犯のルシェであった。


 あ、何気に奴の名前を公開したの初めてだよ。


『やったなルシェ、名前が決まったぞ』

(………)

紅蓮コウレンソコは「おい馬鹿やめろ」ではないか?』

(犯罪者に人権は無い)

『……余程根に持っているのだな……盗まれたお菓子の数々…』

《およそ100は下らぬ数を盗まれましたからね……》



 ま、ルシェの余罪は後でキッチリ報告するとして、先ずは親方救出の算段を考えないと。







「で? ドウシテコウナッタ」


「ご免なさい……ギルドに報告したら……」

「俺は断ったんだが……」


「此奴、余程お前に会いたかったらしいぞ?」


「久し振りだね?」



 私の家で話すのも何だと思い、親方が迷い混んだ森に違い村で作戦を立てようと来たのだが……この、クランベリーの村に厄介な奴が居た。


 厄介な幼馴染みこと、……・名前何だっけ?



「誰だっけ?」


「えっと……ねぇラルフ…この人の名前何だっけ?」

「え?……え~と、すいませんお名前は?」


「なんだお前たち、知らなかったのか?で?なんて名前だ?人間」


「は、ハハハハ……え?ホントに知らなかったのか……」

「ちょっとアンタら失礼よ!」

「そうよ!何様のつもり!」

「この方は帝国将軍を叔父に持つ方よ!」

「庶民が馴れ馴れしく話し掛けないで!」

「「「そうよそうよ!」」」



 コントかこれは?


(クラウド、コイツら何なの?)

《発言の意味がよく分かりませんが、所謂取り巻きかハーレム構成員では?》

『煩いことこの上ないな。此だからハーレムを築く輩は嫌いだ。煩くて叶わん』



 余計なおまけ共も引き連れた――だから名前何だよ――はアノ時あった女性と新に三人ほど追加されていた……着実にハーレムは構成されているようだ。



「僕はエスデカ。よろしくね」


「別にアンタと今後よろしくする気はないから。それと、お前の取り巻き共の睨み付ける視線をどうにかしろよ……折角の飯が不味くなる。もう少し周りに配慮しろよ」



 え、エスデカ……それって……うん。横恋慕な予感。頑張れヘタレ狼・ラルフ君! こんなハーレム男に負けるなよ!


「あ、アンタね!!」

「リタ落ち着いて……」

「まぁエスデカ様、こんな者達に手など貸さなくてもいいのですわ。」

「そうです!この様な不届きな者達に手をお貸しになることなどありません!」

「何よりも、本人がそう仰ってますから」


「うん、まさにその通り。帰ってどうぞ。さて、俺達は森に入ろうか。」


「ちょっと待ってくれ、森には高レベルモンスターがウヨウヨいる。そんな軽装で入るものではないよ!」


「あの、ニーアさん……お父さんは奥の方に居るようです……一日やそこらでは帰ってこれませんよ?」

「あぁ、親方は道なりに歩いた筈だが……モンスターの妨害では日帰りは無理だ」


「僕らが手伝うよ。幸い皆で分担すれば……」


「いや、結構。俺一人で事足りる。今、確認した距離なら……往復二時間で帰ってこれる。」


「―――だから皆で協力して……え?」


「ニーアさん……一人で?」

「む、無茶だろ……」


「別に此奴なら無理でもなんでもないぞ。何より、住んでいる場所が場所だろ。あの帰らずの森と人間達が噂する森に住んでいるのだぞ?忘れたのか?」


「か、帰らず…森……」

「嘘よ、そんな所に住める筈がないわ…」

「何てこと」

「こんな優男が?」

「あり得ない……」


「ニーアさん……父を……救ってくださいお願いします!」

「俺からも頼む!親方を…救ってください!!」


「まぁ、ここまで来たんだから端から助ける気だったよ。それに親方には仮があるしな。じゃ、行ってきますか……」


「ま、待ってくれ!僕も……」


「邪魔だから来るな。それとも、この村からアプリコットの街まで一時間も掛からずに走れる馬が居れば……着いて来ればいい。だが、普通の馬で来るなら……死ぬことは覚悟しときな。俺は助けねぇぞ」



 我が自慢の愛馬ネロだからこそ出来る救出作戦だ。お荷物と言う名のタイムロスは要らない。



「それに、俺の愛馬のネロが乗せられる定員は親方を乗せるだけで手一杯だ。お前を乗せる事は出来ない。」


「何よ、そんな言い方無いじゃない。何様なの!」


「そっちそこ何様だ? 森の恐ろしさも知らないお嬢様が森に住んでいる俺に意見するって。冒険者気取りのお嬢様方に、本当の恐怖も分からないケツの青いガキのボンボンがシャシャリ出てくるな。それに、一刻を争う時に邪魔だ。黙ってろ。それだけだ。」



 漸くキャンキャン喚く煩い取り巻きが黙った。私も大人気ないだろうが、この時も刻一刻と親方は窮地に陥っているのだ。気長に相手なんかしてられるかよ。


「じゃ、メリルとヘタレ狼……ラルフはこのままルシェと森に入る準備をしといてくれ。もしも日が沈んでも俺が帰ってこなかったら夜が明けるのを待って捜索を開始してくれ。ルシェ、お前なら森を安全に歩けるだろう?頼んだ」


「分かったわ。お父さんをよろしくね。」

「親方は道なりに歩いた筈だ。馬でなら道を走れるが、もしかしたら道から逸れてるかも知れない……親方のことだ、何かしら目印を道端に残している筈だ。………それと俺はヘタレじゃない!」


「分かった、道端に目印が無いか見ればいいんだな。気にかけておく。それとお前は間違いなくヘタレ狼だ」


「だから!違うって!」


「仕方ないな、彼女とヘタレ狼は私が見ていよう。それにお前の作る菓子は気に入っているからな……だから族長に報告するのは…勘弁してくれ」


「その事は考えておく」


「だから俺はヘタレじゃない!」


「あの、僕も……」


「「あ、お前は別に居なくてもいい」」


「ねえラルフ。あの二人結構仲良いのね」ソコソコ内緒話中

「だな。けどさ、俺はヘタレじゃないぞ!」

「う?うん、ヘタレじゃない……かな?」

「何で疑問何だよ……」




「あ、あの、僕も……」


「だから必要ないから帰ってどうぞ?」


「そうだな、私も二人までなら面倒も見れる。が、そんな大勢を見れるほど……いや、面倒な事はしたくない。捜索の邪魔だ」


「はぁ?なにその理由。エルフの癖に生意気よ!」


「エルフ?そうだが何か? なあニーアよ、エルフだから何が生意気なのだ?」


「さぁ? 人間様にしか分からない意味なんじゃねぇーの?」


 厄介な幼馴染みエスデカ略して……ごめん略せないわ。エスデカの取り巻きの……リタ…だっけ?が、ルシェの言葉に反撃してきた。


 おやおや、私に口で勝てないとみて他に矛先を変えたか? にしても、止めろよエスデカ。あれ?エスカデだっけ?ま、どっちでも良いか。



「は?アンタ……あぁっ!!」



 あれ?気が付いた?私の正体に。そうだよ一年ぶりの嬉しくもない再会だね。喚くだけのお嬢ちゃん。あれから全く進歩してないのね。おばさん悲しいわぁ……


《全く悲しそうに見えません》

『その通りだな』

(そうですけどなにか?)



「あ、あああ、アンタ……研究所に凍結されてたアンドロイドじゃない!!色違いだけど、私の目は誤魔化せないわよ!」

「……まぁ、アンドロイドでしたの。ふん、アンドロイド如きが人間に楯突くなんて……成る程凍結されるのも頷けますわ」

「鉄屑が私たちにもの申すなんて…百年早くってよ!」

「色を変えただけで誤魔化そうなんて……そんな幼稚な手に引っ掛かるのは馬鹿でしてよ」



 取り巻き共は「ホホホホホ……」と笑ながら馬鹿にしている。しかし、皆さん、忘れてはいけない。


 そんな幼稚で馬鹿が此処に居ることに。しかも、バッチリ顔を見ているにも関わらず人に言われて今漸く気が付いた奴が自分達が取り巻いてるエスデカであることに……



「まぁ、そんな馬鹿は早々居ないわな……」


「そうでしてよ!」

「ホントにそんなお馬鹿さんが居るなら御目にかかりたいですわ」

「ま、私たちには縁も所縁もありませんけれどね」

「そうね、そんな馬鹿……あ、」

「……僕は……馬鹿なんだね……そっか…」


「そうだな。二回目で人に言われて漸く気が付いたからな。お久し振りだな、一年ぶりの嬉しくもない再会だ。どうしてた?あ、そう言えば半年前にもアプリコットの街で会ったけど、気付かれなかったなぁ……。それにしても……研究所に侵入してきたのを棚に上げるなんてなぁ……流石は高貴な家柄だな。お見逸れしました」



 青ざめてるエスデカと取り巻き共。笑を堪えているメリルとヘタレ狼・ラルフ。堪えることなく爆笑しているルシェに行ってくると一言言って私は別名惑わしの森に単身、愛馬ネロと共に爆走するのであった。


《私達も居ますよ》

『一人ではないぞ』

(はいはい)



 訂正して、三人?と1頭は別名惑わしの森に爆走しているいったのだった。






       *********




 惑わしの森・中央辺り



 うっすらと紫の霧がたち混む気味の悪い森。この霧は幻覚作用を引き起こすとも言われ、恐れられ惑わしの森と呼ばれた。しかし、別にこの霧に幻覚作用などなく、ただ単に気味が悪く、同じ様な景色が続くことから錯覚を起こしたとクラウドは分析した。ま、田舎だし、科学の知識もこんな所にまで伝わらなかった所為でこんな名前がついたのだろう。



 ネロ

背中の上から目印を探すが……


「この辺にいる筈だけど……」

「(`ヘ´)」



 どうもネロの機嫌が悪い。多分、エスデカに触られそうになったときから機嫌が悪い気がする。


 もしかしてあの手の輩が嫌いなのか?


 うんうん、分かるよ。私も嫌いだねあの手の輩は。


 自分のしていることはきっと人の為になると心底疑ってないやつ……。私みたいに捻くれた性格には合わないタイプだからね。人の話も聞かずに余計なことに首を突っ込んでイライラさせる。


 終いには、私に無関心と言う名の最上級の……いや、最低ランクの印象を植え付けていく。厄介なやつだ。



「ま、人の為になりたいのは分かるけど……大きなお世話って事が多いよね~」

「(-_-)」


 ネロもそうだと頷いている気がした。




 さて、長いこと爆走していたが、ここらでペースダウンして辺りを見渡す。が、今のところ親方が付けているであろう目印は見当たらない。もう少し先だろうか?それとも見逃したか?


 私のハイスペックな目は見逃してはいない……筈だ。クラウドも私の目を通して探す手伝いをしてくれている。


 余談だが、クラウド曰く「親方さんの生体データも記録しておけば良かったですね……私も失念しておりました」とのこと。いや、私も失念してたよ。


 その事を踏まえてメリル以外にヘタレ狼・ラルフと次いでにエスデカとその取り巻き共も登録しておいた。これでエンカウント率も減るのではないか?


 今度からはこのデータを元に避けようと思った。





《マスター、前方約4メートル先に生体反応を確認……分析中……生体データ・データ名メリルと生体データの類似を確認、親方さんと思われます。動きは見られませんが、生きているようです。》

(ふぅ、良かった。生きてたなら良かった。)



 酷い言い方だが遺体を運んで帰るのは気が引ける。本当に生きていて良かった。いろんな意味で。



《警告!警告!親方さんとみられる生体反応の周りにモンスターと思われる反応を確認。動きと数から狼系のモンスターと推測。》

『物語には直接関係は無いが、助けられる命は助けなければ……とはいえ、私はなにも出来ないがな』

(その為の私でしょ?クラウド、親方が何にやられたのかまだ分からない…周りに警戒して)


「ネロ!蹴散らせ!」

「フンッ!!」



 任せろと言わんばかりに頭を下げて全力で走り出すネロ。私の目でも視認できる距離に親方が入った。そして一緒に狼のモンスター達も……


 パッと見7匹。ネロは目の前に居た敵を容赦なく踏みつけ絶命させた。


 それと同時に私も敵に向かって横に飛び降りた。飛び降り様反対方向に居た敵を弓でい抜く事も忘れずに。



 接近戦は銃よりもナイフが有効だと誰かが言っていた。接近戦でリーチの短いナイフは少し怖いが、そんな恐怖を押し込んで腰の鞘から引き抜き敵と対峙する。後ろは二匹居たが、矢が当たり二匹とも絶命していると頭のなかでクラウドの報告が響く。よし、後は私の前に居る3匹とネロが対峙している一匹。


 大丈夫、遅れはとらない。我が家の周りのモンスターの方がもっと獰猛で狡猾で数も多い。躊躇など不用だ。命取りになる。大丈夫と自分に言い聞かせて先ずは一番近い敵の首筋にナイフを刺す。容易に敵の喉笛を斬り裂き絶命させた。


 何と容易いことか……麻痺してしまう感情が怖い。


 他の2匹も攻撃を避けつつも確実に絶命させていく。体が勝手に動く感覚が最初はあった。しかし、もう一年も経てば動きについていけた。あぁ、怖い……簡単すぎて怖い。



 ナイフを滴る血を払いつつ敵を殲滅して親方の方を見ると足を怪我しているのが分かった。どうやら簡易結界という簡単に結界を張れるちょっとお高い道具で結界を張って身を守っていた様だ。流石は場馴れしている傭兵だ。準備もしていたのか。



 未だに何が居るのか分からないので親方にはまだ結界を解かないように言い、敵を一匹任せたネロの方に視線を向けた。


 ネロは未だに対峙していた。しかしネロには余裕が見えた。敵の方が畏縮しているように見える。


 ネロは体が大きい。勿論モンスターの方もポニー程大きい。だが、ネロと比べると……親馬と子馬にしか見えない。そんな大きさだ。


 さて、私も容易に手は出せない。何故?


 うん、それはネロの性格がね。嫌がるんだよ、ガチンコ勝負に手を出されるのが。頑固で負けず嫌いで、それでいてプライドも高い。獲物を横取りすれば機嫌は最低まで下がって乗せてはくれないだろう。


 ネロと名付けたのは何も黒いからだけじゃない。ネロというのは……



『グルルルッ……グアッ!』


「………フンッ!」



 ネロは敵の攻撃を易々と避けて余裕寂々に相手を挑発するようにサラサラの尻尾を振った。まるで「どうした、その程度か?」と言っているように見てる。パネェ……ネロ先輩と呼びたくなる。



『ッ……グアッ!』


「………フッ」



 また軽々避けた。頭を少し上げてフンッと小馬鹿にしてまたも挑発する。


 そして相手はネロに向かって突進してきた……ネロは向きをクルリと変えて敵とは反対を向いた。



 おっと、これは…………!



 ネロの一撃必殺、後ろ蹴り!! その威力に相手は死ぬ。



 普通の馬でもかなりの威力だ。あれ程速く走るのだ、馬という生き物は蹴りが強い。その普通の馬でもかなりの威力、魔物の部類に入るネロは勿論身体能力は倍以上……もしかするともっと上かもしれない。


 そんな私と同じくハイスペックなネロは狼系のモンスターを蹴り上げて吹っ飛ばした……蹴ったとき骨が折れる音がした気がする。


 で、ネロの名前の由来だけど……皇帝ネロに因んでつけてみた。ま、どちらかと言えば暴君ネロなんだけどね。モンスターを蹴散らす姿はまさに暴君!


 ひとりで森に散歩に行く時があるネロだけど、モンスターを本当に蹴散らしてるから怖い。



 と、解説をしている内にネロは私の元に歩いてきた。勿論モンスターを絶命させて。



「強いね、流石はネロ」

「フンッ!」


 当たり前だと言っている気がする。



 戦闘も終わり、親方の怪我を確かめるために結界に近付く。モンスター用の結界は私も遮断してしまうので結界には入れない。そしてネロも。


 このモンスター用の結界は“人間以外”を拒むのだ。そう、ここ重要だよ。人間しか通れないのだ。


 つまり、私もネロも入れない。




「親方……どうして怪我したんだよ?」


「おめぇ……ニーアか? メリルかラルフに頼まれたのか?」


「そうだよ。いきなり家に押し掛けられて懇願された……で?どうしたよ。あんた程の傭兵が怪我して歩けなくなるなんて……余程の…」



 後ろから不穏な気配がした……気がする。紅蓮コウレンの時にも感じたことがあった……そうだ、妖力の強い暗殺者に狙われた時……そう、強敵に睨まれた時に似ている。




(クラウド、強敵が潜んで居るんじゃない?)

《?私のレーダーには何も……あらゆる手段で索敵を試みます。少々お待ちください……》

『私のサポートが必要な様だな!』


 クラウドの報告を待つ間に白神がテンション高めに話しかけてきた。いや、待て。それなら最初から……いや、何でもない。


 何でもかんでも神に頼るのはダメだよね。日々是精進なり。楽なんてしたらダメなんだよね?



《索敵結果を報告。マスターの言う通り後方に不自然な熱源を発見。データバンクによる照合結果は該当なし。マスター……新種のモンスターかもしれません。お気をつけください》



 新種……新種とは厄介な。どう対処するのか困るね。



「おい?どうした……」


「どんなモンスターにやられたんだ?」


「あ、ああ。後ろから攻撃を受けちまってな……姿を見てねぇ。気配が丸でなかった……」



 ハァ……全く。面倒だな。気配が無いなんて……あれ?私は気付いたぞ?…………何でだ?


 歴戦の傭兵たる親方が気が付かなかったのに、ぽっと出の私が……機械だからと言うならクラウドもダメだったぞ……何が何やらサッパリ分からない。



「親方……静に聞いてくれ。後ろにその敵が隠れてる。……対処するまで動くな」


「……あぁ」




 後の不穏な気配を醸し出す敵はクラウド曰く全く動かないらしい。余程慎重派なのか意気地無しなのか……ま、どちらにしてもどうにかしないと……でもどうやって?


「……炎に弱いかもな……俺が出がらし程度の術で逃げたからな。」


「炎………ねぇ」



 炎が弱点なのか、動物の本能で怖がっただけなのか知らんが、これは魔法解禁かな?良いよね白神?



『ん?……まぁ、仕方ないか……お手柔らかにな。クラウド……パワーを魔法に!』

《いいですとも……》

(ハイハイ)

『メタい事を言うとな、ゲームの仕様で森の木々に燃え移ることも無いからな。存分に殺れ』

(殺れとか、神様が物騒な……ま、やるからには全力で闘うよ)



 森に山火事で大打撃を与えることがないのなら尚のこと……フフフフ……フルパワーで殺りますとも……


 まぁ、本当は使いたくないんだけどね……え?何でかって?


 術を使うとスッゴクお腹が空くんだよ……フルパワーならペコペコ……かな?


 うわ……何かやりたくなくなってきた。少しは余力を残そうかな?



《何でしょう……敵に同情したくなりました》

紅蓮コウレンは敵に容赦がないからな……



 速く帰りたいとネロがせっつくので早々に殺ろうとした……………


 まさか、あんな事になろうとは……この時は思わなかった。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ