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庶務の僕にできること  作者: 師部匠
庶務としての最初の仕事
8/8

発端

 僕が生徒会役員になってから一カ月ほど過ぎた。

 その一カ月でわかったことと言えば、役員の皆がどれだけ凄いのかということだ。

 会長である天使先輩は行動力、決断力がずば抜けていた。何かと問題が多い学園で、毎日のように生徒が相談事を持って生徒会室へ訪れる。それで、大体の生徒の悩みごとは会長がその場で解決してしまうのだ。数少ない、すぐには解決できなそうな問題も、生徒会室を飛び出しその日のうちに解決してしまうということがほとんどだった。

 副会長の神宮寺先輩は学校の行事などの調整をしていることが多い。生徒会室に持ち込まれる相談事はほとんど会長が解決してしまうし、会長は大きな行事以外の学校の仕事はしたがらないので、必然的に神宮寺先輩が会長の代わりとして普段の学校行事を仕切っている。部活動、委員会、教師陣との会議などを一人で担当し、全て円滑に終わらせてしまう。

 書記の恋条先輩は生徒会唯一の良心だと思う。書記といっても毎回の会議を逐一記録するのではなく、重要なことだけを抜粋して記録するだけなので、あまり仕事がないように見える。だけど、生徒会の整理整頓はほとんど恋条先輩がやっている。それだけでなくみんなの分のお茶を用意したり、お菓子を持ってきてくれたりと甲斐甲斐しく働いている、メイド服で。なんでメイド服なのか聞いてみたら、「かわいいし、働くといったらメイド服でしょ」と言われた。

 最後に同級生であり、会計でもある聖について。彼女も僕と同じで一カ月前に生徒会に入ったばかりなのだけれど、一週間もかからずに会計の仕事のノウハウを会得してしまった。過去の、会計の仕事の資料を元に、今年度予算案をまとめ、部活や委員会連中の意見をスッパリと却下し、成立させてしまった。文句が出なかったのは、出来た予算案が公平で公正なものだったからだろう。

 以上が生徒会全役員の仕事である。

 ……全役員ではない、僕が抜けている。

 だけど、僕はこの一カ月の間、何の仕事もしていないのだ。

 会長の生徒悩み相談を手伝ったら、悩みごとは悪化した。

 神宮寺先輩の仕事を手伝ったら、余計に仕事が増えた。

 いたたまれないので、せめて部屋の掃除でもと思い、恋条先輩を手伝おうとしたら、メイド服を着る覚悟がない人が掃除をするなと怒られた。

 聖の手伝いを申し出たら「あなたに任せたら、時間がいくらあっても足らない」と言われ、仕事がないまま今に至る。

 ……会長は何で僕を庶務として生徒会に入れたのだろう。




 今日の生徒会室は平常運転だった。

 会長はいつも通りに生徒からの相談事を解決するため出払っている。

 神宮寺先輩は仕事がないのか読書に勤しんでいた。

 恋条先輩はメイド服姿で、部屋の掃除をしつつ、僕たちにお茶を入れてくれる。

 聖は昨年度行事の予算と支出表を眺め、時折ノートに何かを書き込んでいた。

 僕は何もすることがないので、なにをしようか考える。

 することがないなら生徒会室に来なければいいと思うかもしれないけど、それはもうやった。

 生徒会に入ってニ週間ぐらいが経ち、やることがないので生徒会室に行かず、即、寮に帰る生活を三日ほど送っていた。そうしたら、寮に会長が直接やってきて、思いっきり説教されたのだ。その時の説教の内容は割愛させていただく。結局、その説教のおかげか、僕は毎日足しげく生徒会室へ赴き、することもないので宿題をしたり、本を読んだりしている。

 今日は宿題が多めに出されたので、読みかけの本を読むのを諦め宿題をすることにした。

 元々、この学園のレベルは僕の学力より高かったので、授業についていくだけで精いっぱいだった。というより、ついていけてないのが現状だ。ここで宿題までサボったら留年してしまうかもしれないので宿題は真面目に取り組んでいる。数学の教科書と問題集をにらめっこしていると、ドアが開く音がした。

 ドアの方を見てみると、会長が入ってきた。

 普段の会長ならちょっとふざけたことを言いながら入ってくるので、今日は少しおかしかった。

 僕の方へやってくると神妙な顔つきで言った。

「君の出番がようやくやってきたよ」


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