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庶務の僕にできること  作者: 師部匠
プロローグ
7/8

はじまり

「ということがありましたけど、やっぱりあれは生徒会が首謀者だったんですか?」

 教師陣はあんなバカげたことはやらないだろうし、一般生徒が教師含め学校全体を巻き込むのは無理がある。だとしたら考えられるのは生徒の中で一番権限がある生徒会だろう。

「そういうことになるね。会長権限が学校を巻き込めるほどでかいから出来た芸当だがね」

 天使先輩はくくっと笑いながら言った。

「ですが、鍵を手に入れたのは聖ですよ、僕じゃない。だから今、聖は生徒会にいるんでしょう?」

 聖真子。

 僕と一緒に鍵を探し、最終的に鍵を手にした女の子で、生徒会書記になったらしい。

 別に彼女が生徒会役員になっていておかしいとは思わない。あの事件は生徒会にとっての選抜試験のようなものだったんだろう。

 だけど、何であんなに僕のことを睨んでるんだ?

 僕がそんなことを考えてると天使先輩は言った。

「そうだよ、真子がいるのは鍵で扉を開けたからだ。もともと目ぼしい生徒には手紙を出したんだけどね。それ以外に時計に細工したことに気付いた人に手紙を渡そうとしたけど、気付いたのは君だけだ。で、手紙をもらってくだらない暗号を必死に解こうとしてくれたのは君らだけだった」

 もともと優秀な人には手紙を送ってたのか。だから聖には直接手紙が贈られていたのか。

 そして、一般市民である僕には手紙は贈られなかった。

 けれど一般市民にもチャンスは与えられていて、そのチャンスを僕は物にしたってわけだ。

「でも、それじゃあ僕がここにいる理由にならないですよ。僕は鍵を手に入れることができなかったわけですし。それに、わざわざ一人で来いって書いてあったじゃないですか」

「一人だけにした理由は簡単だ、役員で空いていたのが書記だけだったからね。で、君がここにいる理由は真子に直接聞くといいさ」

 天使先輩はそう言うと聖を手招きして呼んだ。

「聖が何かした結果、僕はここに呼ばれたんですか?」

 天使先輩は聖に直接聞けと言った。なら、聖が原因なのだろう。

 呼ばれた聖は嫌そうに顔を歪めていた。口を開け、何か話そうとしてやめる。

「真子が言わないなら私が教えるぞ?」

 天使先輩はそう言い、十秒ほど待って聖が何も言わないのを確認すると言い始めた。

「仕方ない。それでは真子のかわりに君がここに呼ばれた理由を教えよう。知っての通り、真子は一人で地学室に来て私達に会った。生徒会に入れるための試験で、自分が役員になると知った真子は私達にこう言った」

 天使先輩は両腕で自分の体を抱きしめ、大仰な仕草をしている。

「私がここに来れたのは一緒に鍵を探してくれた男の子のおかげなんですぅ。私は鍵が昇降口にあるとわからなくて、鍵を見つけたのはあの男の子のおかげなんですぅ。だから、役員にするなら私じゃなくてその男の子にしてくださあい」

 天使先輩がくねくね身体をよじらせ、ひどく甘ったるい声で言った。

「私そんな言い方してません! 嘘つかないでください!」

 聖は顔を真っ赤にしながら言った。フーフー言いながら肩を上下させている。

「ん? じゃあどういう言い方で何を話したんだい?」

「私のかわりに一之瀬を役員にしてくださいって言っただけです!」

「ということだ。わかったかな? 君が今ここにいるのは真子が君のことを欲しいと言ったからだよ」

「ほ、欲しいなんて、そんなこと言ってません!」

「まあそんなことがあって、二人が協力して鍵を見つけたのに片方だけ役員になれないなんてかわいそうだと思ってね。君を庶務にすることにしたんだ」

 天使先輩が話を締めくくるよう言った。

「でも、なんで庶務なんですか?」

「雑用を押しつけるのにちょうどいいだろ」

「…………はあ」

 思わず力が抜けてしまった。

 雑用って何させられるんだろ。疲れる仕事はしたくないなあ。

 そんな話をしていると、いつのまに集まったのか、神宮寺先輩と恋先輩が天使先輩の後ろにいて、僕のことを見ている。すると、

「これからよろしく頼むよ。生徒会庶務、一之瀬照」

「よろしくお願いしますね、照さん」

「よろしくね、照」

「…………よろしく」

 天使先輩は含みのありそうな顔で、神宮寺先輩は恥ずかしそうに顔を俯けながら、恋条先輩は優しく慈愛に満ちたような表情で、聖はぶっきらぼうに言った。

「よろしくお願いします」

 僕はどんな表情をしていただろう。

 自分の顔は見えないからわからない。

 だけど、笑ってたんじゃないかなと思う。

 


導入部分はこれで終わりです。これからは生徒会に問題が持ち込まれ、その問題を解決していく話になります。

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