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庶務の僕にできること  作者: 師部匠
プロローグ
3/8

手紙

 年季を感じさせる扉を開き、講堂に入る。入学式の時とは違い人がいないので広く見える。人がいないことにより静けさが際立ち、ゴシック様式の荘厳と相まって聖堂のような雰囲気を醸し出していた。

 中央の開けた道を進み時計を見上げると、時計の針は八時五十八分を指していた。

 九時ジャストまではあと二分か。

 辺りを見回しても入学式の時との違いはわからなかった。九時を過ぎて何もないようなら帰ろうと思いつつ待っているとステージから微かだが物音がした。

 九時ジャストだ。

 ステージを見ていると暗幕が下りてくるのがわかる。まるで、何かが始まるように、何かが終わるように、何かを隠すようにゆっくりと暗幕が落ちてゆく。

 やはり九時ジャストに何かが起こっている! 

 僕は自分の胸の鼓動が高鳴るのを感じていた。逸る気持ちをそのままにステージを目指して歩き出す。ステージの前に着くころには暗幕は垂れ下がっていたためステージ上のことは分からなかった。暗幕に隠された中が気になり登ろうとしようとした時、幕が上がり始めた。暗幕が少しずつ上がるたびにステージの様子がわかってくる。

 あれは何だ?

 ステージ中央には四本の鉄の棒が伸びているように見える。鉄の棒の下にはゴムのようなものが付いていた。全体が見えるより早く、教室でも見た学習机だとわかった。

 でも、何故学習机があるんだ……?

 暗幕が降りる前にはステージには何もなかった。だとしたら誰かが故意に机を置いたんだ。きっと、九時ジャストに何かを始めるために……。

 ステージ横に取り付けられていた階段を上りステージ上に立つ。学習机におかしなことはなく、学習机以外におかしなものはなかった。近づき、確認しても同じだ。

 だが、何もないはずがない。何かがあるはずだと思い机の中を確認することにした。

 案の定そこには一枚の紙が入っていた。手に取り読んでみるとこう書かれていた。



 鍵を見つけ、扉を開けなさい

 鍵は[はなの下]にあります

 鍵は一つしかなく、一人で来なさい

 二人以上で来るならば扉は開きません

 御武運を

 

 PS 個人的にあなたには期待していますよ。一之瀬照さん。



 文字は綺麗な字で書かれ、読みやすかった。

 鍵を見つけてその鍵で開く場所に来いというのはわかる。だけど、おかしいのはこのPSの部分だ……。

 なんで僕の名前を知っている? 

 講堂に入るまで僕が来ることはわからなかったはずだ。なのに名前は書かれている。おまけに個人的に期待しているということはこのPSは後付けで書いたものだろう。僕が講堂に入り、ステージに上る間に用意したんだろうか? 

 それでも、僕は新入生だ。顔と名前は覚えられていないはずである。先生は僕のことを覚えていてもおかしくはないと思うけどこんなことはしないだろう。あるいは僕の顔を確認してから名簿を見て名前を確認したのか? それもおかしい。新入生だけで百三名いるんだ。

 そんなことできるはずがない。

 だとしたら、この手紙を書いた人はあらかじめ僕のことを知っていた人になる。

 僕のことを知り、僕が講堂に来ると思い準備していた人が鍵で開けた扉の先にいるはずだ。

 気になる。

 この手紙を書いた人物は誰なのか。

 この手紙を書いた理由は何なのか。

 鍵を開けた扉の先に何が待っているのか。

 僕は手紙を折りたたんでからポケットにしまい、ステージを降りた。

 まずは[はなの下]がどこなのかを考えないと。

 鍵を見つけるために思考を巡らせつつ、講堂を出ることにした。


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