↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

ヌヴェル09 庚申の日

作者: 寺澤樹生
掲載日:2026/08/23

辰三「おまえ、ほんまに寝てなかったんか?」

松吉「寝てねえよ」

辰三「じゃあ、なんでこいつ出てきたんや?おまえの身体から」


庚申待ちをしている辰三と松吉は、虫籠に入っている三尸(さんし)という虫を眺めている。


庚申(こうしん または かのえさる)の日の夜、人の体内にいる三尸という虫が寝ている間に身体から抜け出して、天帝(天にいて万物を支配する神)に、その人間の行った悪行を告げ口に行くという言い伝えがある。

三尸により、悪行を告げられた者は、天帝により寿命を縮められるという。三尸は人が寝ている間にしか身体から抜け出ることができないので、庚申の日の夜、一晩中起きている(これを庚申待ちという)ようになった。


辰三「とにかく、どないする?」

松吉「せやなぁ、逃がしたろうか?」

辰三「逃がすやて? おまえ、天帝さんに告げ口されるんやぞ。それでええんか?」

松吉「まあ、そんな悪いことしたとも思わへんし、それに、こいつ見てたらかわいそうになってなぁ」

辰三「ええんか?」

松吉「ええで」


天帝「まあ、おまえの気持ちもわかるが、規則は規則なのでな」

三尸「そこを天帝さま、何卒、何卒・・・」

天帝「むむ、そこまで言うのならば、今回は罪を半減ということで」

三尸「ありがたき幸せ」

天帝「にしても、起きている人間から抜け出せるとは、たいした特技じゃな。それはおまえしか出来ぬのか?」

三尸「いえ、やり方を伝授すれば誰でも」


松吉「ありゃ、戻ってきたん? えっ、罪を半分にしてくれはったん?」

三尸「助けてくださったので、罪を無しにと懇願したのですが、それが精一杯で」

松吉「いやぁ、おおきにおおきに。そこまでしてくれたんかいな?」

三尸「そこまでしか出来ませんでした。ついては、なにか私にできることがありましたらなんなりと」

松吉「・・・。そういえば、おまえ起きてる人間からでも抜け出れる技を持ってるんやな?」

三尸「はい」

松吉「実はな、これこれこういうどうしようもない悪い奴がおってな、結構皆苦しめられてるんやけど、そいつの悪行を天帝さんに知らせてくれへんかな?」

三尸「それは、もうお安い御用です」

松吉「・・・。あっ、やっぱやめとくわ。自分が天帝さんの代わりみたいなことやったらあかんわ。ええから、もうわしの身体に戻ってき」


それから暫くした庚申の日の夜

松吉「おまえ、出てくるの待ってたんや」

三尸「なにかありましたか?」

松吉「ほら、例のどうしようもない悪い奴の話してたやろ。あいつ病の床に伏せって、もう悪させんようになったらしいねん。おまえ、なにか知ってるか?」

三尸「あぁ、天帝さんに報告が上がったんでしょう」

松吉「いやいや、あいつは庚申の日の夜は絶対寝よらん奴やで。あいつの身体におまえの仲間がおっても、抜け出して天帝さんへの告げ口なんかでけへんやろ」

三尸「その悪い奴に住みついてる仲間に、伝授したんですよ」

松吉「伝授って何を?」

三尸「抜け出しの技・・・です」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
寺澤先生は、良い人ですね。 現実は、三尸が仲間に、寝てない身体から脱出する方法を伝授する恐れがあることが事前にバレて、悪い奴はこの三尸を殺してしまっている。 それが世の中の一般法則であると思います。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。