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イニシエ  作者: 紡ぎ舞う者
第一章 学校編
8/9

8話 氷姫リーア

素行の悪いアデルを叩き直すため決闘が始まった。開始早々から剣による激戦が繰り広げられたが、アデルの剣が折れてしまった。

 リーアは少し舐めていた。相手は所詮手印術師、剣を握ったところでそんなに扱えるわけが無いと、開始前までそう思っていた。彼は開始と同時に無駄なく突っ込んできて、ブレることなく自分に斬り掛かってきた。驚きで反応が遅れたが、問題なく受け流せた。反撃してみたが躱されてしまった。ならばと7段突きをしてみたが彼はすべて剣で弾いた。アデルが剣でこんなにも強いとは想定してなかった。最初彼を見た時、オーラが普通とは違うと思った。神聖力量なら私を大きく上回る程に彼は強い。でもそれは術師であって剣士としてではない。彼の全力は手印法を使って初めて露わになる。ならまずは剣を砕く。私は全力の彼を倒したい。


手印法第8手腕硬化は文字通り手から腕部分を固くする術だ。阻害術にさらされても問題なく、大抵のものも防げるが、質量攻撃である大剣やハンマーの攻撃にはとてつもなく弱い。しかし今はこれで十分だと僕は考えた。リーアがやったように剣を折って相手を戦闘続行不能にさせる。ジワジワと足元が冷えてきた。動きが鈍くなる前に決着をつけないと不利になる。千里眼を使ってもう一度懐に飛び込もうとしたが、先にリーアがものすごい速さで突っ込んできた。僕は咄嗟に構え、リーアの一突きを防いだ。刃先と腕の間には火花が散り、木剣と腕がぶつかりあった音とは到底思えない金属音がアリーナ全体に響き渡った。僕は一度引こうと思ったが足が動かない。ふと足元を見ると地面から膝まで凍りついていた。僕は気合で剣を弾き飛ばし、リーアは後方に吹き飛んだ。拳で氷を割ろうとしたが、着地したリーアの姿が目に入った。彼女は刃先を僕の方に向け、左手を剣身に添えて腰を低くしていた。あれは母がよくやっていた剣術の千天突きの構えだ。足が動くようになってもこの技を避けることはできない。であるならば受け止める。僕は瞬時に判断し10本の指を隙間なく組重ねて唱えた。

「手印法第5プロテクト」直後僕の周りを半透明の青白い膜のようなものが覆った。リーアも同じタイミングで叫んだ。

「千天突き」無数の攻撃がアデルを襲った。 さらにリーアは攻撃に合わせ神聖術で氷の粒を四方八方から打ち込む。それらの攻撃をなんとか膜によって防げている。母に度々叩き込まれてきたため対策はバッチリだ。しかし、リーアの動きが母より素早く見える。僕は千里眼でリーアを確認した。間違いない彼女は神速を使っている。ありとあらゆる動きを加速させるあのスキルは、千里眼と同じで珍しいものでもないが扱いが難しいと本に書いてあった。ふとガラスにヒビが入るような音がした。プロテクトがそろそろ限界を迎えるようだ。リーアもそろそろ千回打ち切る頃だろう。二人は互いに次の手を考えていた。


場面は代わり、観覧席にいるトウヤとセイゲルへ。二人はアリーナの上の方で決闘を見ていた。

「押されていますね。このままでは負けてしまうのでは?」トウヤがそう言うと、セイゲルは少し笑った。

「確かに表面的に見ると負けてしまいそうじゃな。じゃが内面的に見ればアデルはエドレスとストベラの子じゃ、そしてわしの弟子でもある。それにリーアと神聖力量の差はほとんどない。」セイゲルは試合開始から今に至るまでずっとスキルを使っている。スキルは長い間使えば命に差し支えると聞く。大丈夫なのだろうか。

「それに君の入れ知恵もあるじゃろ。」突然の言葉にトウヤは驚きそうになったが顔に出さないようにした。

「入れ知恵だなんて。私そんなに頭良くないですよ。」トウヤは作り笑いをした。

「学校での成績ではなく、君が教導者であることについて言っているのだよ。」この人には隠し事は通用しないのか。トウヤはため息をつきながら言った。

「それもその目で見たから分かったのですか。」トウヤが聞くとセイゲルはにこやかに答えた。

「異なる世界から来た者のオーラは色が違うからのう。アデルに紹介されたときから分かっていたよ。」セイゲルは少し懐かしそうに語った。

「本来、教導者は技術伝来のため大変重宝される存在じゃ。じゃが最近は成果がなく、逆に異端者として亜種族のように蔑まれておる。さしずめ名乗らない理由はそれじゃろ。ところで何歳なんじゃ?前世と合わせると。」セイゲルは目を少し光らせていた。

「102ですよ。前世が84で死にましたから。」トウヤは寂しそうに答えた。

「なんとわしより年上じゃったか。いや失礼した教導者よ。」セイゲルは頭を下げた。

「やめてください。アデルに見られたらなんと言われるか。」トウヤはらしくない慌てた様子を見せた。

「安心しなされ、バラ撒く趣味は持ち合わせていない故、公開はせん。」セイゲルは頭を上げニコニコしながら髭を撫でた。

「ありがとうございます。セイゲルさん。」トウヤは少し安堵した。

「と、そろそろアデルが限界を迎えそうじゃな。」セイゲルは顎でアデルを指した。


 ついにリーアが僕のプロテクトを破った。隙をつくように僕は足元の氷を拳で割った。リーアは暇をあたえまいと突っ込んでくる。僕は右手の人差し指に中指を上にのせ、突っ込んでくるリーアに向けて唱えた。

「手印法第11インフェルノ。」指先から一直線に紅色の炎の玉がリーアに向けて放たれた。彼女は右斜後方に避け、氷の壁を作り防ごうとした。しかし予想とは裏腹に炎の玉は氷を溶かし、リーアの腕をかすめた。防げないと判断した彼女は一定の距離を保ち、僕を囲むように走り出した。インフェルノで動きを止めようとするが神速を使い、躱されてしまった。

僕は両手の親指と中指で輪をつくり唱えた。

「手印法第3煙霧。」黒く霞んだ空気がアリーナ全体を覆い、互いを目視できなくした。リーアは身動きが取れなくなっていたが、僕は千里眼を使い彼女をオーラで捉えていた。師匠もきっと見えているだろうし、使うときだろう。誰にも聞かれないように心のなかで答えた。


オーバードライブ。


アデル3つ目の特殊スキルにして最強の奥の手、オーバードライブ。そのスキルは自身の最大火力を底上げし、維持することができる。一度発動すれば術者の神聖力が尽きるまで発動し続け、体への負荷が他のスキルとは段違いに高い。しかしアデルは元々神聖力量が多く、もう一つのスキル起死回生によりその難点が解決されている。その継続時間は通常は一瞬だが、アデルの場合4分半に引き延ばされている。 また発動時には赤黒いオーラが出るため、他者に見られないために煙霧で見えないようにした。時間が厳しいと判断した僕は、すぐにリーアの方向へと突っ込み硬化したままの腕を顎に目掛けて降りかかる。しかし、リーアは見えていないはずなのに僕の拳をレイピアで弾いた。アデルは少し距離を取り、再度リーアに攻撃を与えたがまた弾かれた。スキルの影響か感の鋭さかは分からないが非常に厄介だ。僕はひたすら突っ込んでは殴るを繰り返した。霧も晴れ始め、自身も限界が近くなってきた頃。このままでは埒が明かないので、僕は一か八かの賭けに出た。僕は最後の力を振り絞り神速よりも早い速度でリーアに突っ込んだ。彼女の姿がうっすら見え、手が届く位置まで5歩のところで彼女は僕の向かってくる方へ刃先を向けた。ここだ!

「手印法第11インフェルノ。」拳を出すフリをして右手を大きく突き出し術式を唱えた。リーアは避ける余裕が無く、氷の壁でスピードを抑えながらレイピアで炎の玉ごと断ち切った。次の瞬間、リーアの持つレイピアが粉々に砕けた。トウヤに熱なんとかを教わったのがが役に立った。後は押し切れば勝てると僕は考え、左拳でストレートを出そうとしたが、体が急に重くなった。どうやら先のインフェルノに力を込めすぎたようで神聖力を使い果たしてしまったらしい。体勢を崩し地面に伏せる瞬間をリーアは見逃さず、僕の顔以外を氷で固めた。霧も晴れ、視界が開けたタイミングで審判は手を上げた。

「そこまで!勝者、リーア・フリッグ。」その言葉と共に試合開始から静かだった観覧席から歓声があがった。こうして決闘は僕の負けで終わった。


8話を読んでいただきありがとうございます。また7話以下の改投稿をしましたが、誤字脱字の修正のみのためストーリーや内容は変更されていません。

次回は古書お楽しみに。

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