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イニシエ  作者: 紡ぎ舞う者
第一章 学校編
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7話 貴族のたわむれ

覚醒者の事や隠していた3つ目のスキルについて教えてもらったところで目が覚め、学校に居る師匠の元へ行き今年の合同演習の予定を聞いた。食堂でのんびりしていると、貴族のリーアがこちらにやって来た。

リーアに連れられ、いや連行されて食堂から少し離れた廊下で彼女は僕の方に向き直った。

「何度言ったらわかるの。授業態度を改めなさいアデル。」開口一番彼女は僕を睨みながら言った。

「さぁ、なんのことでしょうか。」僕は頭の後ろで手を組みそっぽを向いた。それを聞いたリーアは人が変わったように声を荒げた。

「あんたねぇ、もっと真面目にファーゼン先生の授業聞きなさいって言ってるのよ。」そう、彼女はファーゼンに心酔している数少ない人物の一人なのだ。僕が授業を真面目に受けてないことを聞きつけては、度々僕を昼食中に呼び出して説教をする。彼女が風紀委員のためか、他の先生や生徒から特に咎められていないとはいえ、度を超えている。いつもなら僕が謝って終わるのだが、僕が知らんという無言のジェスチャーをしたのが彼女の機嫌を損ねたようだ。一息つき冷静になった彼女は衝撃的なことを口にした。

「いいわアデル、あなたに決闘を申し込みます。その腐った性根を叩き直して差し上げましょう。アリーナで待ってますから準備してきなさい。」それを聞いた僕は慌てて止めた。

「待った、待った。流石にそれは、」リーアは僕の言葉など聞かずに靴音を立てながら食堂の廊下を後にした。彼女の後姿を見ながら僕は声にならない声で呟いた。

「まじか。」

 トウヤに事情を説明した後、昼食を素早く食べた僕達はアリーナの武器庫へと足を運んだ。決闘では相手を殺す事を固く禁じている。そのため武器もすべて木製という制限がかけられていて、近距離から遠距離まで幅広く、刃先や矢じりも丸みを帯びたものが揃っている。勝敗は相手が戦闘不能になった場合と神聖力が尽きた場合の2つだ。また死に直結する術式は反則負けとされている。

「アデル、勝算はあるのか?相手はあのフリッグ家の氷姫だぞ。」トウヤは呆れた顔で聞いてきた。

「ないわけでもないけど。」手印術師は術以外の手段を持つべく武器もある程度は使えるように指導を受けている。一般的には小杖や短剣なのだが、師匠が投擲系の武器を選ぶ変わり者だった影響か、僕は片手剣というあまり選ばれない武器を選んだ。小さい頃から両親に教わり、並大抵の剣士くらいには強くなったと二人からも認められている。

「これでいこう、なれない武器を扱うよりはいいはず。」僕は父さんの片手剣に似た長さと作りの木剣を手にし軽く素振りをした。

「うん、大丈夫そうだな。」そんな僕を心配そうな目でトウヤは見ていた。

「安心しろ、死ぬわけでもないし。売られた喧嘩を買うだけだ。それに手印術師が剣士に勝てるわけないっていう固定概念を少し破ってみたいだけだ。」二人は揃って武器庫を出た。その先でセイゲルが待っていた。

「師匠なんでここに?」僕は思わず大声を出した。

「お久しぶりですセイゲルさん。」横でトウヤも頭を下げていた。

「久しぶりじゃなトウヤ君、アデルがフリッグ家の令嬢に決闘を申し込まれたと聞いて様子を見に来たんじゃよ。」セイゲルは長年生やしている長い髭を撫でながら言った。

「誰から聞いたんですか?」僕が恐る恐る聞くと師匠はニコニコしながら答えた。

「もちろんファーゼンからじゃよ、なんでもリーアから素行の悪い生徒を懲らしめますから先生も来てくださいと、誘われたそうでな。素行の悪いやつで心当たりがあるのはアデルしかいないと、わしも連れてこられたわけじゃ。」僕は口をあんぐりと開けてただただ聞いていた。

「それで他の先生や生徒も観覧席にいらっしゃるため、お主に課題をあたえようと思ってこっちに足を運んだのじゃ。」それを聞いた僕は選手入場口の手前まで走り、場内の様子を伺った。空席が少ないほどに沢山の人が座っていた。見せしめのためだろうと僕は思った。

「そこでアデルに試練を与える。」師匠は背後で手を組みながら僕の数歩手前まで歩いてきた。

「はい、師匠。」僕は直立して、師匠の言葉を聞く姿勢をとった。

「よろしい、ではアデルよ、手印法第4、7、そして11以降の使用を禁止する。」確かにそれらは死に直結する術式だが第4が使用禁止なのは気になる。それに、

「師匠、質問があります。第4を使ってはいけないのですか?それに、スキルの使用は禁止ですか?」疑問に思った事は質問しなさいと師匠から教えられている。

「いい質問だ。その答えは、覚醒者であることを隠すためじゃ。トウヤはともかく他の先生や生徒に露呈した場合は危険を伴う可能性がある。十分注意しなさい。もうひとつ、スキルについてじゃが、使用制限を設けないこととする。」スキルが使える。それはつまりこの決闘でお前の技量がどの程度にまで成長したか確かめるということなのだろうと僕は察した。

「わかりました。では行ってきます。」そうして僕は入り口に向きを変えた。

「頑張れよアデル!」後ろでトウヤの応援する声が聞こえたので、僕は振り向かずに右手を振りながら光の差す試合会場へ向かった。

 アリーナは楕円形の闘技場で、あたりは白一面で塗装されている。観客席はおよそ三千席用意され全校生徒が収まる造りとなっている。天井は無く、青空が広がっている。目の前にはリーアの姿と審判らしい人がそこに立っていた。

「遅かったわね。腰を抜かして逃げなかったことは褒めてあげましょう。」歩いてきた僕を見るなり煽るとは、彼女も気持ちが高ぶっているのだろうか。

「ここで逃げたら男が廃るってもんだろ。」苛立ちを抑え、僕は冷静を装った。

「そう、でははじめましょう。お願いします。」リーアがそう言うと始まりのタイミングを伺っていた審判の男が口を開いた。

「分かりました。両者距離を取ってください。」僕とリーアは互いに7歩後ろへ下がった。

「それではこれよりリーア様申請のもと、アデルとの決闘を開始します。勝利条件はどちらかの神聖力が尽きる、あるいは戦闘続行困難と判断された場合です。また反則行為には十分気を付けること。それでは両者構え!」審判が手を上げるのと同時に、僕らは剣を抜き僕は前に、リーアは片手で右下に構えた。

「それでは、はじめ!」審判の手が振り下ろされると同時に僕はリーアに向かって突っ込み、剣を振り下ろした。しかし、既に受け身の体勢を取っていたリーアはアデルの剣を難なく受け流し、次の攻撃を繰り出してきた。僕は瞬時に体を横へずらし、それを避けた。リーアはさらに突きを7回放ってきたが、僕はそれを剣で払いのけた。リーアの持つ剣身は細く、スピード重視の剣。母と同じレイピア型の木剣を使っていた。なら力で押し切れば勝機はあると僕は考え、今度は横から大振りでリーアの胴を狙った。リーアはそれが分かったのか、刃先を下のまま腕を上げた。まさか受けようとしてるのか。通常レイピアが片手剣の攻撃を正面から受けるとまずレイピアが負ける。攻撃に耐えられず、剣身が折れるからだ。何か他に狙いがあるのだろうか。そう考えたが特に思い浮かばなかったため、僕は迷わず剣に力を込めて振った。次の瞬間木の割れる鈍い音が会場に響き渡った。砕けたのは僕の木剣の方だった。僕は即座に後ろへ下がった。

「正直驚いたわ。ただの手印術師がここまで剣の扱いに慣れているなんて。」リーアは余裕そうな顔で僕に言葉をかけた。

「褒めてくださっていると解釈しておくよ。」僕は皮肉混じりに返事をした。先程の剣技は彼女の水属性の上位に位置する氷系統の神聖術の合わせ技だろう。彼女のあだ名、氷姫の由来はそこから来ている。

「遊び気分だったけど気が変わったわ。」次の瞬間、足元に冷たい空気が漂った。僕も両腕を胸の辺りで交差させ、拳を握り唱えた。

「手印法第8手腕硬化。」


7話を読んでいただきありがとうございます。

修正点やコメント等お待ちしています。

次回は氷姫リーアです。お楽しみに。

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