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嘘つき

                     言えない嘘


 薄暗い部屋の隅、小さいソファーの上で少女はメモ帳を弄っていた。


「おはよう、サチ!」


 ガ開かれた部室の扉から、高校入学以來の親友であるトモリが入ってきたのが見え、姿勢を起こす。


「おはよう、トモリ。今は春休みで学校無い筈だけど……何でいるの?」


「今日は4月1日だよ?たくさん嘘つける日だから、親友と戯れに来たんだよ」


 楽しそうな顔に微笑を返し、サチは「私も嘘、ついてみようかな」と呟いてみた。


「良いじゃん!どんな嘘つこうか」


 内容を考え始める友人を横目に、サチは壁の写真へと目をやった。

写真には数人の男女が映っていて、二人もその中で笑っていた。元は写真部の部室だった部屋は、先輩が卒業したことで人数が減り、活動休止になっている。サチとトモリは部員であった為に利用出来るが、校舎の端の物置など普通の学生であれば近付く事すらない。


「そういえばさ、最近は毎日学校に来てるよね」


 嘘が思いつかなかったのか、トモリが世間話を始めた。しかし、サチはここ最近部室に来ているがトモリは今日久し振りに学校に来たのだ。サチの行動について知っている筈はない。


「私は毎日来てるけど、なんで知ってるのさ」


「そりゃあ、あれよ。うん、テレパシー的な奴さ」


「……本当は?」


「部室に設置してたカメラにオンラインで電源入れたら写ってたんです。覗き見してすんません」


「そんなことだろうとは思ったけどね」


嘘が直ぐに見破られたトモリは、笑っているサチに突如、神妙な面持ちで語りだした。


「実はね……サチの好きな人知ってるよ」


「流石にこのノリでは騙され……え、本当に?」


トモリがフッと鼻で笑い返すと、サチも苦笑いで返す。


「流石に無いよね?」


「さてね」


そんな談笑を続けていると、少し落ち着いた表情になったサチが語りかけてきた。


「まあ、トモリの好きな人はユキ先輩みたいだけどね」


「なっ、何でそう思うのさ!」


「一緒に歩いてる時の顔見たら誰でもわかるよ」


「それ、本当にアテになるの?」


「……なるよ」


「そういうサチが好きなのは誰さ?」


「さて、どうだかね」


サチが飄々とした態度で受け流していると、昼時を知らせる鐘が鳴り響いた。


「おっと、お昼か……そろそろ帰るけど、今日は誰かと待ち合わせなの?」


「ん、何でもないよ」


「そっか、じゃあまたね。嘘つきさん」


「……お互い様」


窓の外に一瞬目をやり歩き去るトモリをサチは見送り、ソファーに「ごめんね」と書かれたメモ帳を投げ捨てた。

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