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Trick and treat 1

 10月、世の中は年末の慌ただしさが見え始め、冬支度を始める頃。繁華街から少し逸れた下町の一角にある『明日都探偵事務所』の中では外の様子とは真逆の退屈そうな二人組が午後の時間を過ごしていた。


「依頼、来ませんねー」


「まあ、世の中平和なのはいい事だから。ていうか、バイト先に来るときは制服はやめときなって要ちゃん」


 つまらなそうに課題をこなしながら応接用のソファに腰い掛ける沢渡要サワタリ カナメは高校から家に戻る事なくバイト先の探偵事務所を訪れていた。そんなに事務所が人気というわけでは当然無く、ただ探偵と一緒にいる事を目的としていることは彼女自身からは黙している。


「いいじゃないですか、ここ最近は冷やかしすら来てないんですから。」


「依頼人がいつ来るかも分かんないし、依頼なかったら君の給料も出せないんだから。勉強するのは止めないけど、もう少しだけ端の方で頼むよ」


「はあい」


いそいそと机に散乱していた教科書類をまとめている彼女を探偵は穏やかな顔で眺める。とはいえ、彼女が言っていることも事実で今は通常の浮気調査やペット探しと言った業務は請け負っていない。この時期には別の依頼が舞い込みやすいのだ。そんなことを探偵が考えていると、タイミングよく事務所の扉が開かれた。


「……仕事を頼みたい」


「待っていましたよ、お巡りさん。依頼内容をお聞きしましょう」


事務所を訪れた女性は彼らが“特殊な依頼”の際に世話になっている警察の1人であった。しかし、いつもはキリッとした顔立ちであるはずの彼女が何故か顔色が悪い。ひとまずソファーに座ってもらい、その向かいで彼らは依頼内容を聞くことにした。


「海近くの遊園地でゴーストが出た」


出されたお茶をゆっくりと啜りながら彼女は続けるが、向かい合った2人は極めて平静な様子で話を聞いている。


「今は訪れた人々が体調不良を訴える程度で済んでいるが、このままでは行方不明者が出るのも時間の問題だろう。私も先日確認しに行ったが何も掴めないままこのザマだ」


「遊園地に出たゴーストの退治、ですか。お受けしましょう」


話を聞き終えた探偵はそうとだけ答え、開いていた手帳を閉じた。ここは『明日都探偵事務所』明日都翔アスト カケルが始めた探偵事務所であり、普段は人探しやペット探し、浮気調査なども請け負っているものの、依頼内容のほとんどを占めるのはゴーストや魔人、悪魔といった怪物退治である。つまり、明日都翔はゴーストハンターである。


「要ちゃん、遊園地の予約って最短だといつ取れる?」


「最速だと今日ですが、入場とかゴーストを探す時間も考えると明日の朝になりますね」


「明日……ね」


翔は壁掛けのカレンダーに目をやる。明日は10月31日、俗に言うハロウィンでありゴーストにとって格好の狩り日和とも言える日である。


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