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 第九話 追放


「ゲギョ、ゲギョ」

 

「グギョ」


 森の中を進むと、奥からゴブリンと思われる声。もう少しで、僕がゴブリンを始末したとこだ。そのゴブリンの声に紛れて、聞いた事がある声が……


「なんか銃で撃ち抜かれたみたいだな」


「カズマ、逃げよう。ヤバいってヤバい」


「そうだな」



「……」


「……」


 声が遠ざかっていく。今の声はカズマとコウタ。十何年間聞いてきた声。間違える訳が無い。


「ウガッ」


 心臓が締め付けられるように痛い。頭が頭が痛い。目の前が白くなってチカチカする。


「グウゥ」

 

 僕は地面にうずくまる。頭の中をいろんなものがグルグル回る。思い出した。思い出したくない事を思い出した。


 カズマ……


 コウタ……


 絶対に、絶対に許さない!





「タッキちゃーん、お前はグズでバカだからサヨナラだ」


 カズマの声が後ろからする。背中に痛みを感じたと思ったら僕は水に落ちていた。闇の中口と鼻に水が入ってくる。チラチラ光る水面を目指し水をかく。服が邪魔だ。けど何とか水面に顔を出す。


「た、助けてくれ!」


 船はゆっくり進んで行く。置いてかれないように必死に泳ぐ。みんながこっちを見ているけど、誰1人僕とは顔を合わせない。


 ブッ!


 なんとか追い縋る僕の顔にベチャッとしたものが付く。カズマの唾だ。僕は生まれて初めての仕打ちに何が起こったのか分からない。


「しつけーな。とっとと溺れろよ」


 嬉しそうな顔でカズマが見ている。僕は船に乗らないと多分死んでしまう。


「頼む。なんでもするから、助けてくれ」


 僕の顔を濡らしてるのは水だけじゃない。


「うわ、ダッサ、泣いてんじゃね?」


 ミコがこっちを見ている。


「頼む助けてくれ!」


 声を張る僕の口の中になんか飛んでくる。


 ゲホッ。


 口から出てきたのは円筒形の何か。


「あたしのリップあげるわー。天国で使ってねー」


 何しやがるんだ。なんでそんな事が出来るんだ? クラスメートだろ。


「コウタ、助けてくれ」


 僕は親友のコウタを呼ぶ。コウタなら助けてくれるはず。


「ゴメン」


 小さな声が聞こえる。謝るなら助けてくれ。


「緊急避難って言葉がある」


 西園寺の声? 


「遭難して生き残るために人が人を食べたなんて話に比べたらマシだろ」


 前に出てきた西園寺の手には長い棒が握られてる。それにしてもなんて話ししてるんだ。


「ガッ」


 声が漏れる。肩に激しい痛み。西園寺が棒で突いてきた。


「助けてくれよ。クラスメートだろ」


 右腕が上がらないそれでも、全力で進まないと置いてかれる。体の至るとこがヒリヒリする。水を吸った服で擦れてるんだろう。


「しつけーんだよ。本当になんでもするのか?」


 カズマが船尾でしゃがんでいる。もしかして気が変わったのか? これが多分最後のチャンス。さっきから全力で泳いでいる。船が早く無いからなんとかはなされてないが、もうすぐに限界だ。必死に泳いで船においすがる。カズマが僕に手を差し出す。とってもとっても優しそうな笑顔を浮かべて。


「なんでもするんだな?」


 カズマの手まであと少し。


「なんでもする!」


 僕が伸ばした手をカズマが掴む。もう限界だ。口から心臓が飛び出しそうだ。


「じゃあ、死んでくれ」


 カズマの顔が凶悪に歪む。


「えっ?」


 ドゴッ!


 鼻に痛み、なんだ、殴られたのか?


「1度やってみたかったんだよな。なんでもするって言った奴をコロスの……」


 カズマの言葉が遠くに聞こえる。僕はもう、指先1つ動かす力も無い……







「なんだここ」


「窓も扉も無いぞ」


「学校じゃないわ」


 なんかみんなが騒いでいる。目を擦って体を上げると、教室が教室じゃ無くなっていた。壁、天井、床も真っ白、机と椅子はそのままで、教壇にはパソコンが一台。なんだ? まだ、夢を見てるのか? 確か僕らは学校で国語の授業を受けてたはず? なんかみんなパニックになりかけている。


 僕がボーッとしてる間に西園寺がパソコンをいじる。それを何人かが遠巻きに見ている。女子はグループに分かれてなんか話したり騒いだりしている。


「勇者、俺は勇者だ!」


 西園寺が訳が分かんない事を言ってる。なんか心なしか奴がキラキラしてるような? そしてパソコンから放れる。多分これは夢なんだろなー。


「俺にも見せろよ」


 カズマが人混みをかき分けてパソコンの前に立つ。そして、しばらくいじる。


「俺は魔王だな」


 カズマがそう言った瞬間、なんか部屋が寒くなったような?


「みんな良く聞け、ここは異世界だ」


 カズマが変な事を言うが、部屋は静まった。


「説明するから座ってくれ」


 みんな大人しく席につく。やっぱ夢だろう。異常事態で騒いでるのがカズマの一言で収まるって訳が分からない。


 それから、カズマが説明し始めた。誰も口を開かない。普段は授業中でも騒がしいのに。


 僕らはこれから異世界に転移する事。そこは剣と魔法の世界、いわゆるファンタジー世界のようなとこだと言う。そこでは何をやっても自由。どうにかしたら元の世界にも帰れるそうだ。

 そして、カズマは全員で協力して元の世界に帰ろうと提案する。


 ここから、混沌の海という所を星の船というもので渡って、その異世界の王城で装備やプレゼントを貰えるそうだ。


 多分、これは夢だな。僕はボーッとカズマの話を聞いた。



 読んでいただきありがとうございます。


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