第七十九話 決別
「もう時間よ」
頭の中にサクラの声がする。たった今、デーモンに頭から一刀両断されたところだ。辺りが白く濁っていく。体の回りがあったかい。やれなかった。何も活路を見出せなかった。
「ウゲボゲボッ!」
口にお湯が入ってくる。ゲッ、サクラの体液入りの水を飲んじまった。おっと、いかんまた気を抜いてた。そう言えばここは風呂だった。うたた寝して溺れかけたみたいだ。
モノクロの世界の風呂の中には水着のサクラとサリナ、それとミコとネネがいる。ミコとネネも制服でお湯に浸かってる。僕がミコ達を見ると、ネネが話し始める。
「なんでって顔してるね。決して君と一緒に入りたくなった訳じゃなくて、足だけだと視界が狭かったんだよ」
「お湯に触れてる部分が多いほどあなたにリンクできるのよ」
目を閉じてサクラが言う。
「エマとシノブは?」
「グロ過ぎてリタイアしたわ」
サクラが答えてくれる。そりゃそうだ死んでばっかだったもんな。
「まず、私からいいかしら」
サリナが話し始める。長そうだな。
「さっきのゴブリンはゴブリンロード。多分レベル20くらい。あと悪魔はレッサーデーモン。レベルは25くらいだけど、あの特殊能力がやっかいね。じゃ、私も消えるわ。一つだけ言っとくけど、無理ね」
サリナはそう言うと風呂から出て行った。サリナが無理ってまじか……
僕がレベル13になる。レベル25って事は約倍。そりゃ強い訳だ。今の僕とミコのレベル差とあんまり変わらない。
隣に座ってるサクラが口を開く。
「色んな可能性の世界線を見たけど、いい結果にはならないわ。一番いいのは、移動した瞬間に一目散に逃げること。私たちに出来る事は何も無いわ」
そう言うと、サクラも風呂から去る。
「ボクでも多分あれは倒せない」
ネネが僕の頭に手を置く。
「キミは頑張った。諦めずに何度も頑張った。見てたから分かる。あっちの彼女たちとは決して君は仲良くは無かったんだよね。なんでそんなに懸命になれるんだい?」
本当になんでだろう。試してないから本当か分かんないがあっちで死んでもこっちでは問題ないらしい。それなら、目の前で死ぬ人が居るなら助けるものだろう。いや、そういう事じゃない。僕が助けたいんだ。なんでかと言えば。
「僕はあっちじゃずっと1人だった。それで初めて会って一緒に飯食ったんだ。また一緒に飯食いたい」
「飯に命かけるのかい?」
「言っただろ。人を助けるのに理由なんかいらない。僕を一度見捨てたお前らには分かんないだろ」
しばらく誰も口を開かない。もしかしたら言い方次第ではネネは力を貸してくれてかもしれない。けど、それは無関係なネネを巻き込む事になる。
そう言えばミコは一度もしゃべって無いな。水音がしたから振り返ると、ネネが水をしたたらせて立ち上がってる。
「あの時、多分みんな怖かったんだよ。カズマ君が。多分、魔王のスキルだと思う。それにボクらは無力だったからね。鍛えて鍛えて鍛えまくった。二度とクラスメートを見捨てなくていいように。けど、悪いけどまた見捨てる。人を助けるのに理由が要らないなら、人を見捨てるのにも理由は要らない。まあ、その前にボクらが君に出来ることは無いから」
淡々と言うとネネも去る。広い浴槽に僕とミコだけだ。
「お前もいけよ。しばらく1人にしてて欲しい」
「ねぇ、まさかタッキのスキルがオシッコ飛ばすのだったなんてね」
あ、そうか。全部見られてたんだな。スキルを隠す余裕なんか無かったもんな。
「スキル名は『ションベン小僧』?」
なんて酷いスキル名だ。
「違う『ウォーターガン』だ」
「へぇー。なんか格好いいね。どうやって手に入れたの?」
あらましを話す。もう別に隠さなくてもいいもんな。
「スライムにオシッコって普通考えないわ。やっぱりド変態ね」
「そうだよ。変態だよ。もういいだろ。1人にしてくれ」
「なんでスキルの事隠してたの?」
「そりゃ格好悪いだろ」
「うん、とってもキモくて格好悪い。けど、前に助けてくれてありがとうね。格好悪くてもいいと思うよ。じゃまたね」
ミコも居なくなった。僕はしばらく浸かったあと、影の世界を後にした。誰とも会わなかった。どうしようも無い状況な僕にかける言葉が思い当たらないんだろう。けど、それでいい。僕は誰も巻き込むつもりはない。
それから家に帰ってずっと何回も何回もラグナフェンの事を思い出して考えるけど、いい方法が思い浮かばない。なんか武器でも持ち込めないかと考えてみるが、あっちで借りるウルルの剣よりも強力なものが思い浮かばない。近代兵器を持ち込めるのなら少しは変わると思うけど、そんなものを手に入れる方法が無い。今日は夜になってもミコもネネも来ない。まあ、明日男に戻るの知ってるもんな。とても寝付きが悪く、寝ても何度もデーモンに殺される夢を見て目を覚ました。相変わらず全くいい手が思い浮かばない。
そして朝が来る。なんか1人で起きるのは久々な気がする。やっと体は戻っていて、朝から両親にウザからみされる。そして学校へ行く。教室にはみんな居るけどなんかよそよそしい。お通夜のように静まり返っている。特に西園寺とカズマの間には殺気っぽいものさえ漂っている。僕らが色々してたようにカズマと西園寺も何かしてたんだろう。そして、例の授業が始まると、いつの間にか僕は眠りに落ちていた。
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