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第六十一話 秘技


「見てろよ。僕の勇姿!」


 僕はスピードスケートみたいにヌルヌルを滑ってスライムに近づく。


「タッコ、危ないわよ!」


 ミコが首を起こして叫ぶ。いくら僕が今女の子だからって『タッコ』は無いだろ。オクトパスかよ。


「危ないのはお前らの格好だろ!」


 ミコもエマもヌルヌルに寝転がってて、下着が見えている。けど、何故か何とも思わない。きたねーなってくらいしか。これはおかしい。頭が女の子に侵食されていふ。戻れるのか? 早く戻らないとヤバいんじゃ?

 僕はスライムに近づいてその上に座る。ヒンヤリとしててボヨンとしてて気持ちいい。バランスボールに水を入れたらこんな感じになるんじゃないだろうか?


「たっちゃん! 何やってるのよ。それは椅子じゃないのよ!」


 エマも叫ぶ。けどイマイチなツッコミだな。


「それくらいわかってるさ! これが漢の生き様っ!」


 バシュッ!


 水風船が弾けたような音と共にスライムが弾け散る。そしてメタリックな汁に塗れながら僕は床に尻もちをつく。ちょっと我ながらびっくりした。


「えっ、何で?」


 ミコが呆然としている。


「お尻に刺でもあるの?」


 エマも目をまん丸にしてこっちを見ている。ぶっつけ本番だけど上手くいったな。


「ハッハー! これが僕の新必殺技! 『アルティメットヴァルキリーヒップアタック』略して『AVHP』じゃい!」


 漢成分を無理矢理ひり出しながら叫ぶ! コイツらに女の子扱いされて羞恥心無くされたら、ときめか無いんだよー。断固抵抗してやる。今の技の仕組みは簡単。密着したお股からスライム向かって三発分の弾を放っただけだ。ゼロ距離なので衝撃はスライムに全て通ってパンツは無事なはずだ。まあ、スライム汁とかでビショビショだから弾の残骸は誤魔化せただろう。昨日のサクラとの激戦がまさか役にたつとは。これは女の子の時しか使えない技だから戦う女の子と言えば思いついたのはヴァルキリーなので、名前に入れた。


「『AVHP』、もしかして、アダルトビデオホームページにかけたの?」


 ん、そう見えん事も無い。さすがミコ、スケベないい間違いの女王。こいつ、ワザとじゃなくて、いつもそう言う事考えてるんじゃねーか? けど、新必殺技の名前は変えよう。ミコに穢されてしまった。


「じゃ、『ヴァルキリーアタック』に変更する」


「タッコ、名前なんてどうでもいいからさー」


 ミコが横に転がりながら近づいて来る。こいつ実はヌルヌルを気に入ってるんじゃ?


「お前が絡んだんだろ」


「どういうカラクリなの?」


 う、なんて説明しよう。そうだ。


「男の時と違って『フォース』がお尻からしか出せなくなってんだよ」


「え、なにそれ。『おしり〇んてい』?」


「僕の顔のどこがお尻だ!」


 いかんついツッコんじまう。


「お尻から衝撃波を出すって相変わらず変態ね。昔話にそんなのあったわね」


 確か、おならで家を吹っ飛ばす的な話だったか? まあ、残骸が残らない分、そっちの方がスキルとしては格上のような……


「契約ーっ! ゲットー!」


 エマが走って来て、メタリック汁にダイブする。ラリったのか? 体の前をシルバーに染めながら、拳を天に突き上げて喜んでいる。あ、召喚士的な契約か。けど、あそこ、僕の弾の残骸が……


「まあ、なにはともあれ、これであっちに行った時が楽しみね。どれくらいレベル上がるかなー」


 ミコはやっと立ち上がる。ヌルヌルに飽きたんだろう。


「そうだな。二人ともありがとう。二人のおかげだよ」


 顔についたメタリック汁を拭ってエマが満面の笑みで口を開く。


「くくっ。ありがとう。これでレベルが上がったらさっきの奴呼べるわよ。多分これでウチがグループ最強になれるわ。サクラを下克上できるわね」


 んー、もしかして与えてはいけない奴に力を与えてしまったんじゃ? エマは天使のような顔で悪魔のような事言っている。

 僕も立ち上がろうとするが、スカートが脱げそうになるので、押さえながら立つ。メタリック汁、重い。吸い込んだスカートが金属のように重くなってる。スカートを絞って絞ってなんとかズリ下がらなくなる。これ、水銀だったりとかしないだろーな? ん?


「なんだコレ?」


 メタリック汁の中にメタリックな液体を湛えた小瓶がある。口はコルクみたいなので閉まっている。手を伸ばして拾ってみるが、重い。まるで鉄の塊みたいだ。


「あーっ。レアドロップ!」


 エマが近づいてくる。


「えっ、ここ、アイテムドロップするのか?」


「するに決まってるじゃん。ダンジョンなんだから。で、たっちゃん、それちょうだい。ここってうちの迷宮よねー」


 えっ、こいつこんなんが欲しいのか? さっき喜んでメタリック汁に飛び込んでたから、また家ででも被りたいのか? まあ、確かにヌルヌルしててヒンヤリしてるから好きな人は好きなのかもしれないが、銀色つくもんな。


「ああ、いいけど」


 僕はエマに渡そうとする。それをミコが掻っ攫う。


「タッコ、待ちなさい。たしかにここはエマの迷宮よ。けど、倒したのはタッコだから、あんたのものよ。という訳で、タッコのものだからあたしが預かるわね。重いでしょ」


 ん、そうなのか? けど、ミコがこんなまともっぽい事言うのはおかしくないか?


 読んでいただきありがとうございます。


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