第六十話 カンカン
「てぇーーーーい!」
エマの手にした棍棒はシルバースライムを擦りもしない。けど、それでいいんだ。僕らはさっきみたいにミコがいる部屋に追い込んでるだけだから。最初は僕が積極的に棍棒でスライムに攻撃を仕掛けていたんだが、そのへっぽこさに見るに見かねてエマが棍棒を奪っていった。
シルバースライムは僕の横を通り過ぎて次の部屋に行く。扉を開けてたら、わざわざ締まってる扉を破壊する訳じゃなく、空いてる扉に行くので簡単に誘導できる。けど、あんまり追い詰めすぎると体当たりしてくる事もあるので、付かず離れず追い立てていく。ちなみに僕はスライムの体当たりでまた股間を強打されてミコに魔法で癒して貰った。多分スライムは狙ってるんじゃないか? 僕の一番の武器が何かを本能的に察知してたんじゃないだろうか?
上手くエマがナビしてミコの待ってる部屋にスライムを追い込んでいく。エマのスカートは前は穴がポツポツ空いてるくらいだけど後ろはまるっと溶けている。パンツ食い込んだお尻丸出しだ。どうでもいいけど、男の尻ってなんかブツブツあったり傷跡あったりとかきったねーのが多いのに、なんで女の子のお尻ってスベスベなんだろう。それより、僕にガン見されててなんとも思わないんだろうか? それに、もうはいてる意味なさげなので、スカート脱げばいいのに。腰蓑みたいになったスカートをはためかせて、エマはスライムを追い込んでいく。なんか動きがエレガントだ。僕も新体操してみようかな? 行き先は、さっきの部屋は扉が壊れてしまったので、別の扉が一つしか無い部屋だ。
「ミコ! いくぞっ!」
ミコがいる部屋にスライムが入っていく。エマ、僕の順で部屋に入り扉を閉める。
「うわっとっと」
焦ってたので、床で滑る。立て直せない。
ズシャーッ!
思ってたよりも激しく床を滑る。身を起こし立ち上がると、スライムをエマとミコが挟んでいる。二人とも腰を落としてカバディのような構えを取っている。床は余すとこなくテカテカだ。エマが召喚したスライムの汁だ。
バシャッ!
シルバースライムが汁を撒き散らして動く。さっきまでは消えてんじゃと思うような高速移動だったけど、今はバッティングセンターの低速より遅い。僕でも撃てそうだ。ヌルヌルで上手く動けなくなってる。スライムは壁に当たって弾け返り、また壁に当たって弾け返るを繰り返して止まる。僕は一度言ってみたかったセリフを吐く。
「イッツショータイム!」
右手を上げてポーズを取ろうとするが、ヌルヌルのおかげでへっぴり腰だ。
「じゃ、初めるわよ」
ミコは棍棒を振り上げる。ゴルフのスイング前のような構えだ。エマも同じような構えを取る。
「ミコさん、打ちやすい球を弾いてくださいね」
エマはそう言うが、それは前フリだろう。
バシャッ!
スライムが走る。壁に向かって。その弾き返る場所を予測して、ミコがスケートみたいな動きで移動する。そして、近づいて来たスライムにフルスイング
「おっしゃーっ!」
ポクッ。
コミカルな音を立ててスライムが弾かれる。エマ向かって一直線。
「やると思ってたわ。食らいなさい!」
ポクッ。
エマは少し位置調整してスライムを打つ。壁に向かって。壁に反射、反射、反射、反射。ミコはスライムの方を向こうとするが、ヌルヌルで素早く動けず、その足にスライムがヒットする。なんと、四壁で正確なショットだと! まるで某引っ張りハンティングゲームみたいだ。
ずべしゃーっ!
ミコ足を取られ激しく転倒する。コイツもパンツ丸出しだ。
「やったわね!」
ローション。いや、糸引くスライム汁にまみれながらも、ミコは手だけでスライムを打つ。
ポコポコポコポコポコポコ。
高速で上下にカンカンしながら、スライムがエマに迫り、エマはそれに足を取られ転倒する。
「くそっ! この馬鹿力! だから近接戦闘職は嫌いよ」
とか言いながらも、エマはスライムを打ち、次はニ壁でミコにヒットさせる。倒れてるミコのお尻に。
「キー! ぶっ殺す。コスプレヤロー!」
「かかってきなさい! ビッチ!」
そして激しい打ち合いが始まった。新種のスポーツみたいだ。確かスカッシュというのがこんな感じなんじゃ。力で強引に当ててくミコ。それに対して技巧でミラクルショットで当ててくエマ。たまにスライムが逃げようとか、攻撃しようとするから、球がブレてイレバンするのがさらに勝負を面白いくしている。二人とも転倒しまくって、髪の毛までローション塗れだ。服が体に貼りついてエロい。2.5次元ピンク髪美少女と、スタイル抜群系ギャルが激しい戦いを繰り広げる。これ、動画に取りたいな。僕は部屋の隅に避難してるけど、たまにミコが僕も狙ってきやがった。
「やるわね。あんた」
ミコは床に這いつくばってる。
「あなたこそ……」
エマも同様だ。
「ていうか、なんで、スライム、死なないの?」
スライムは部屋の中央でプルプルしている。そっか、ミコはスライムに詳しく無いのか。教えてやるか。
「ほら、スライム見て見ろよ。最初は涙型だったのに、今はちゃんとした饅頭型だろ。スライムは死にかけたら、ずっと防御するんだよ。そしたらそうそう攻撃が通らない」
まあ、けど、そうなったって事は、ヒットポイント的なものはあと1。一撃通したら倒せる。
エマがゼハゼハ言いながら、話し始める。
「骨折り損のくたびれもうけ無しね。うちらには、あれにダメージ与える方法が無いわ」
ミコが顔だけこっち向ける。
「そうね。あたしにも無いわ。けど、楽しかったから、ま、いっか」
「そうね。シルバー、ゲットしたかったけど、諦めて帰りますか」
少し、エマは残念そうだ。今は見た目もドロドロで糸引いてて残念だ。
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