第四十三話 現実
「駄目だ……」
つい口から言葉が漏れる。
「うわっ、ゴボボッ」
口の中にお湯が入って溺れそうになる。即座に身を起こす。お風呂? あ、そうだここはラグナフェンじゃない。影の世界のお風呂だ。ゲッ、飲んじまった。サクラの血液が入ったお湯を。まあ、かなりかなり薄まってるとは思うが気分がよろしくない。
「気が付いた?」
サクラに呼ばれる。隣を見ると、女の子が4人いる。
「げっ、なんだ、お前らは!」
サクラの隣に忍者、その隣に見た事の無い女の子2人。みんな仲良くスク水を着てるように見える。肩に水着の紐が見えるから。
「サリナです」
タオルで、髪を纏めてる。クラスメートだけど、初めて喋る。
「……エマで……」
ショートカットで小さい女の子。声も小っこい。
さっきまで、女の子が殺されるまくる現場にいたのに、今は僕は女の子4人と入浴している。なんてほのぼのなんだ。見た事無い女の子は多分さっきこたつで寝てた2人だろう。けどなんで、一緒に入浴してる。大人しそうな女の子たちなのに。なんかよく見るとみんな目がウルウルしてるような? ん、もしかして。
「見てたの?」
コクリとみんな肯く。
え……
じゃ、ウルルやライラやマリンがぐっちゃんぐっちゃんになるのをこの娘たちは見てたのか? それに僕の必殺技ウォーターガンも見られてたって事か?
頭にタオルのサリナが口を開く。
「なんで、なんで、何回も立ち向かえるの?」
なんでだろう? けど、理由は1つ。
「誰かを助けるのに理由は要らないと思う」
「けど、痛いし辛いでしょ?」
サリナはかなり怯えている。そりゃスプラッターだったからな。
「けど、それよりもなんとかしたいんだ」
なんか気まずい沈黙。けど、僕はまだ納得出来てない。
「なあ、サクラ。さっきのもう一度出来ないのか?」
諦めたくない。まだまだ足搔かせて欲しい。
「今日はもう無理。1時間以上経ってたの気付いた? サリナに手伝って貰ったのよ」
何を手伝って貰ったのかは分からない。
「サリナさん、ありがとう」
サクラが僕の肩を軽く叩く。
「タッキ君、あのゴブリンはゴブリンロード。あなたは頑張ったけど、今の実力じゃ逆立ちしても倒せないわ」
そういう気がしてた。
「だから、最善は逃げる事。あっちで死んでもこっちじゃ問題ないそうなんだけど、確実な情報じゃないけど、あっちで死んだら、あっちには二度と行けなくて、しかも魔法やスキルは全部失ってしまうそうよ」
「そうなのか」
僕らは死なないらしい。けど、あっちの世界のライラとかは当然死んだら終わりだろう。
「それより、お前たち、僕のスキルを見たな?」
サクラがすぐに応える。
「うん、でっかいおち〇ちんから出した液体で攻撃してたわね。どこのエロ漫画かと思ったわ。安心して私達は漏らさないわ。あなたは漏らしてた様なもんだけど。見ててインスピレーションが降りてきたわ。いい作品が出来そう」
相変わらず下品な奴だ。けど、何故か彼女たちは僕に敵対しなさそうだ。いつかお仕置きするとしても、あっちでも力を貸してくれないものだろうか?
「もし、差し支え無かったら、お前たちのスキルも教えて欲しい.可能ならば力を貸して欲しい」
なんかサクラたちは、ひそひそ小声で話し合ってる。サクラが口を開く。
「知っての通り、私は『予言者』、シノブは『忍者』で影魔法を使えるわ。サリナは『錬金術師』で人にマナを渡す事もできて、エマは『召喚士』よ」
錬金術師と召喚士か。戦闘職じゃないのか。でも一応聞く。
「それで、お前たちは、あっちじゃどこにいるのか?」
「城の地下に籠もってるわ。タッキ君が居たのはレリクル川だと思う。私達がどんなに急いでもそこに着くのには2時間はかかると思う」
「そっか」
当てには出来ないか。やはり方法は1つしかない。あっちに次に行くまでに強くなるしか無いか。
「籠もってるって何してるんだ?」
「エマに魔物を召喚してもらってレベリングしてるわ」
ん、それっていいんじゃないか?
「こっちじゃ大した経験値にならないわ。エマが呼べるのが一日にオーク3体くらい。ナイトオークは秘薬でドーピングして召喚したの。秘薬はもう無いわ」
おっと、それよりなんか色々な事があって忘れかけてた。ナイトオークとネネと戦ってる最中だった。
「そう言えば、ナイトオークどうなったんだよ」
「まだ雌ゴリラと戦ってるわ。シノブ」
風呂の天井に駐車場の様子が映し出される。ナイトオークとネネが血塗れになりながらまだ戦ってる。それはすぐに消える。
「ナイトオーク、消えるんじゃないのか?」
「エマに秘薬を飲ませて、継続時間を延ばしたわ。雌ゴリラにはここで死んでもらう」
「なんなんだよそれ! なんでみんな簡単に死ねとか死ぬとか言うんだよ。シノブ連れていけ。僕はネネは嫌いだ。けど、助ける!」
僕は風呂から上がる。けど、さっきかけてた寝間着が無い。
「タッキ君、服洗ってるから、変わり持ってくるわ」
バスタオルに包まったシノブが僕にバスタオルを投げるのを受け取る。体を拭いて便所に戻るとシノブが僕に服を差し出す。ん、セーラー服?
「ふざけてんのか?」
「私達、女しかいないし、今貸せる服はそれしか無いのよ」
まあ、そう言われればそうだ。けど、うちブレザーなのになんでセーラー服?
濡れたパンイチよりはマシか? 僕はセーラー服を纏う。ん、サイズぴったりだぞ?
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。




