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第三十一話 追跡


「ネネ、そこに忍者が! 忍者が!」


「馬鹿な事言わない。寝ぼけておしっこぶちまけた言い訳にしては、面白く無い。それより、その見苦しいものをしまう」


 ネネはそっぽを向いて頬を膨らます。僕は露出してるガンをしまう。


「で、なんでお前は走って来たんだよ」


「気配察知。敵の気配がした。けど、もう無いから気のせい。そんなことより、さっさと掃除する」


 僕はカラカラとトイレットペーパーを引き出して丸めて、飛び散った弾の残骸を掃除する。ネネが腕を組んで不機嫌そうにこっちを見ている。


「もしかしてトイレ使いたいのか?」


「デリカシー! アイドルはトイレしない」


「ほう、そうか。じゃ、お前うちのトイレ使うなよ」


「デリカシー! ぶっ殺すぞ!」


 ネネがファイティングポーズをとる。いかん、まじだ。やり過ぎた。僕は背中に殺気を感じながらせっせと掃除する。


「おい、見ろよ。これ吹き矢の矢だろ」


 トイレの奥になんか小っちゃい円筒形のものに針がついてるのが落ちてる。


「んー、多分吹き矢の矢。やっぱ敵がいたのね。けど、逃げられたみたいね。追っかけるわよ」


 さっきは気のせいとか言ってたのに自由な奴だな。


「ええーっ。もう寝ようぜ」


 もう疲れたよ。まだまだ寝たい。


「ダメよ。誰なのか特定しないと。私の知ってる限り『忍者』ってスキルを持ってる人は知らない。多分派生スキル。次の転移まで、クラスでは争わない事になってる。それを破ったチームには制裁しないと。行くわよ」


 僕らはパジャマのまま玄関から出る。家の前の道の遠くに忍者がいた。そしてこっちを見るなり走り出す。


「追っかけるよ」


 僕たちは忍者に向かって走る。


 忍者は僕らが近付くと、高速で走って逃げてから止まりこっちを見る。また追っかけたら逃げて距離がついたら止まる。月明かりの下僕たちは忍者と追っかけっこしていく。これって間違いないなく誘い出されてるよな。


 

「なぁ、引き返したが良くねーか?」


 立ち入り禁止のバリケードを抜けて、僕らがたどり着いたのは、地下駐車場の入り口。都市再開発の一端で、ここは建て直しが決まっている。コンクリートのスロープの奥には闇が広がっている。


「ほら、ほら、お前一応アイドルだろ。夜更かしはお肌の大敵って言うだろ」


「そうだねー。ボクは一応じゃなくてアイドル。でも寝る前の適度な運動は睡眠の質を良くするんだよ。この世界、舐められたら終わり。ちゃんと解らせる」


「適度な運動って絶対暴れる事じゃ

ないんじゃねーか? 解らせるってチンピラじゃあるまいし」


「アイドルもチンピラも自由業だしあんまり変わらない。実力主義ってとこは一緒。君は弱いからボクから離れないで」


 ネネは携帯のライトをオンにして進み始める。しょうがないからついていく。確かに忍者は闇の中に入ってったんだけど、今度は目の前に姿を現さない。


「逃げられたんじゃねーのか?」


「いや、気配はする。あと、入り口近くにも違うやつが隠れてた。多分、罠、奥で誰かが待ち伏せしてるんじゃないかなー」


「おいおいおいおい、罠って解ってるのなら、すぐ帰ろーよ。なんでそんなにやる気まんまんなんだよ」


「ボクが強くないと、パーティーが舐められる。またミコや仲間を拉致ろうとする馬鹿が出る」


 そっか、仲間のためなのか。こいつ訳分かんないけど悪いやつじゃないんだな。まあ、けど、借りはいつか返して貰う。


 アイドルとパジャマで真っ暗な地下デート。普通だったらドキドキするはずだけど、違う意味でドキドキだ。何かが闇から襲いかかってくるんじゃないか? コイツがいきなりブチ切れて暴れ出すんじゃないか? ここでガス自殺したって人の地縛霊が出るんじゃないか?


「そう言えば、なんかここって出るって噂なんだよ。警備の人が監視カメラに居ないはずの人影が映ったりとか」


「ボクはね。その手のものは信じないんだよ。ビらせて帰らせようとしてるかもだけど、その手にはのらないよ」


 ガシッとネネが僕の腕にしがみついてくる。痛え、腕が千切れるんじゃないか。


「勘違いしないでよ。怖いんじゃない。弱い君を守るためだから」


 潰されそうな腕に柔らかい暖かいものが押し付けられる。ミコよりかなり小っちゃいな。けど、なんかコイツの残念っぷりのおかげで、なんとも思わない。親戚の子供にしがみつかれてるような気分だ。


「お前一応アイドルだろ。もし今、写真撮られたりしたらまずいんじゃねーか?」


 なんとか離れてくれないだろうか? 腕がうっ血して壊死してしまう。


「君なら大丈夫。もっと鏡で自分を見るべき。なんかの罰ゲームにしか見えない」


 罰ゲームは、今僕に現在進行中だ。


「酷いな。彼氏には見えないって事か。お前、若い男に抱き着いて何とも思わないのか?」


 離れてくれよ。


「君なら大丈夫。男を全く感じない。普通の男の子って、ボクと話してるだけでなんか意識するけど、君はない。やっぱホモ?」


「ちげぇわ。お前らがぶっ飛び過ぎてるからそう言う感情湧かねーだけだ。今も腕をもがれるんじゃないかってビクビクしてるわ。頼むもう勘弁してくれ」


「君の表情、面白いから勘弁しないっ」


 まじか、そう言う気がしてたけど、ドSかよ……


 読んでいただきありがとうございます。


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