第二話 コツコツコツコツ
「誰かおらんとですかー?」
「ぐっもーにん!」
「ボンジュール」
「ボンジョルノ」
「うぉー、あい、にー」
「アディオース!」
んー、世界各国の挨拶を叫んでみたがノーリアクションだな。
とりあえず、何か無いかぐるりと小屋を回ってみる。窓はあるけど、ガラス張りじゃなく、なんか木の板が家の内側に張ってあって軽く叩いても開かない。
こりゃ、誰も居ないな。
入り口の扉のとこに戻る。とりあえず開けてみるかな。
ドアノブを回して引っ張る。カチャカチャ音がするが、開かない。引っ張る弾みに押したら軽く開く。
ん、なんか違和感。
家とかの扉ってだいたい引っ張ったら開くのに、押したら開いた。そう言えば、日本の家はだいたい外開きだけど、海外の扉は内開きって聞いた事がある。理由は日本では玄関が狭くならないようにで、海外では安全性のために内開きになってるって事だったよな。もしかしたら海外旅行に行きたいって、常日頃思ってるから、夢で外国に行ってるのかもしれない。けど、もしかしたら、ここは海外並みに治安が悪いのかも。
考えながら、中に入り部屋の中を見る。真ん中にテーブルと椅子、右奥にベッドと左手の壁は棚になっている。窓にはつっかえ棒みたいなものがついてるけど、それを外すと簡単に開いた。しかも引っ掛けて開けたままにできる。
部屋が明るくなって分かったけど、正面奥にはでっかい甕がある。痰壺か?
若干埃被ってるけど、部屋の中は片付いていてなんとなく生活臭がする。辺りを軽く調べてみると、甕の中には水、壁の棚には乾燥した葉っぱに包まれた、干し肉っぽいものとなんか団子みたいなものが置いてある。水と食料だろう。ここは山登りとかする時の避難小屋みたいなものなんじゃないだろうか。
まあ、食料的なものも、後でお金を払えば問題ないだろう。お尻のポケットの中には財布があるし、確か一万とあとは小銭が入ってたはずだ。
甕の中の水をチェックしてみる。部屋は埃被ってたけど、これは綺麗だ。澄んでるし変な臭いもしない。水は、でっかい甕になみなみと入っている。試しに舐めてみると、そのまんま水だ。味的にミネラル少な目だな。僕はミネラルウォーターマニアだ。特技と言ってもいいくらい、舐めるとだいたいどの水か分かる。
甕の中に溜まってる水が、なんでこんなに綺麗なのか分かんないけど、それは夢だからだろう。
僕は棚で見つけた木の碗を服で拭って水を掬って飲む。温いけど美味い。甕の脇には木の桶もあるから、これで水を外に持っていったら行水出来そうだ。
次は謎食料を試してみる。干し肉っぽいものははたして干し肉で、めっちゃ塩辛い。けど、嫌いな味じゃない。団子っぽいものはガチガチで固まった餅みたいなものだ。なんか草臭くてザラザラしている。
これで食料と水が手にはいった。次にベッドを調べると、ただの木の板が敷いてあるだけだけだ。僕の特技はどんなとこでも眠れる事だ。問題ない。
まあ、腹が減ったら、この食料をいただくとして、こういう時の定番、川を探しに行くか。
小屋は森沿いにあり、その森沿いに歩いていたら、すぐに川が見つかった。 歩いて5分と言ったとこかな。また水をチェックする。まあ、汚かったとしても、毒とかが入って無い限り、僕のお腹は大丈夫だろう。生まれてこの方数えるくらいしかお腹を壊した事が無いのが僕の自慢だ。僕は多分、ガンジス川の生水をがぶ飲みしてもお腹を壊さない自信がある。
躊躇いなく水を掬って飲む。見るからに綺麗だからね。これは、さっきの水よりちょっとミネラル多めだ。けど、似た味だから、もしかしたら、小屋の甕の水はここから汲んだのかもしれない。
水があって、飯があって家がある。そうだな、しばらくはここを拠点にして、魔物を狩ってレベルアップする事にしよう。
さっきの謎の女性の声、魔物のスライムが実在する事から、ここはファンタジー世界的なものだろう。その手のゲームでは、僕は可能な限りザコを狩って限界までレベルアップして進む派だ。ギリギリの戦いの駆け引きを楽しむより、安全な状態で一方的な蹂躙をする方が好きだ。僕はスライムを求めて草原へと繰り出す。
エンドレスにスライムを狩り、飯を食べて、行水して寝る。おかしなものだ。夢の中で寝るなんて。まあ、けど、そういう夢もあるだろう。
僕は単純作業は嫌いじゃない。草をむしり続けたりとか、折り鶴を作り続けたりとか、カレーの鍋をずっと混ぜ続けたりとか、そういうのは無心になれて嫌いじゃない。それと同様に無心になってスライムを狩り続ける。
けど悲しい事に、オシッコでしかスライムにとどめはさせないが。
それを続けていく事により、かなりの放尿コントロールが出来るようになってきた。膀胱の内容量もだいたい把握できるようになり、あと、何発放てるが分かるようになってきた。
弾が切れたら、小屋で筋トレ。しっかり水分は取る。
弾が溜まったらハンティング。目標は素手でスライムを倒す事。けど、そのためには食事の栄養が心許ない。こういうのの定番の狩りにでもいって新鮮な肉を手に入れたいものだ。けど、草原を離れてもっと強い魔物に遭遇して勝てる自信がない。テンプレ的に森の中には間違いなくより強い魔物がいる。例えばゴブリンとか、お化けキノコとか、もしかしたら一角ウサギとかも居るかもしれない。スライムに手こずってるようでは、強い魔物を相手にしたらやられる公算が高い。もっと強くならねば。
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