第十二話 ハーレム?
ドンドンッ。
「ライラライラライラー」
扉を叩いて叫ぶ。僕は前と後ろにリュックをかけたサンドイッチマンスタイルだ。後ろにはマリンが居る。
「タッキタッキタッキー」
扉の中から声がする。けど開かない。
「ライラライラライラー!」
また叫んでやる。これで僕という事は分かるだろ。けど、まだ扉は開かない。何してんだ?
「ここに居るのはタッキと、彼に助けてもらったマリンよ。怪しい者じゃないわ。開けてー」
マリンが言ってる事は僕にも理解が出来る。という事は。
「マリン、僕たちの言葉じゃ通じ無いんじゃない?」
「大丈夫よ。これは言葉だけど、思考を直接伝えてるから、言葉を使う知能がある者なら誰とでも会話出来るわ」
そりゃ、便利だな。マリンがカズマ達と一緒に居た理由が分かった気がする。
バタン。
扉が開く。そこには目をまん丸と見開いたウルル。ウルルは出てくると、僕の肩をバンバン叩く。
「タッキ、タッキ」
ウルルはそう言うと、荷物を僕から奪って小屋に戻る。
「タッキ、ベヒマスナドン」
ライラが出て来て頭を下げる。言葉は分からないけど、何て言ってるかは分かる。多分『ありがとう』だろう。
「入ってもいいか?」
「ダー」
ライラが道を空ける。多分『ダー』って言葉の意味は『はい』って意味なんだろう。僕が中に入ると、ライラはマリンの前に立ち塞がる。
「えっ、何よケチ。あたしも入れてよ」
「ナナ、メタ、ボルスゲス」
ライラは首を横に振る。多分、彼女は信用出来ないんだろう。けど、甘いのかもしれないが、ゴブリンが居るとこに彼女をほっぽりだすのは気が引ける。僕は手にもってるウサギをマリンに持たせる。
「このウサギを上げるから、中に入れてくれって頼むんだ」
「ねぇ、このウサギで中に入れて!」
「ダー、ダー、ダー」
ライラが笑顔でマリンの手を引っ張って中に連れ込む。ウサギ一匹で現金なもんだ。ウルルが扉を閉めて閂をかける。ウルルは剣を手に、壁に背を向けて座る。警戒されてるな。
「フン、フフフ、フーン」
ライラは鼻歌交じりに荷物からナイフを出して、ウサギをさばき始める。鼻歌は全世界共通なんだな。
「マリン、言葉通じる魔法って俺には使えないのか?」
「自分にしか使えないわ。タッキ、前は彼女たちとどうやって会話してたの?」
「動物と話せる魔法」
「え、マジ、あんたら『ニホンジン』それで言葉通じるの? 盲点だったわ。そんな抜け道があるなんて……ていうか、もしかしてあんたら動物なの?」
「んな訳あるか!」
「そうなのね。けど、もう時間が無いわ、魔法切れるわ。もうマナが無いから使えない。多分、彼女たちも一緒」
「マナってなんだ?」
「魔法のエネルギー源よ。彼女たちとしっかり話しとくわ。あ、もう時間」
マリンと僕は見つめ会う。マリンから白い光が溢れパッと散る。おお、ファンタジーだ。マリンは可愛いからヤバい。ドキドキする。
それから女の子三人は、僕が分からない言葉で騒ぎ始めた。節々にタッキって聞こえるから、ウルルとライラも僕の事を少しは見直してくれたのかもな。僕は床にごろんと寝っ転がり、少しでも体力を回復させる事にした。
「という訳で、第1回ウサギパーティー!」
マリンが僕の手をとって起き上がらせる。いかん、いつの間にか寝てたみたいだ。
「イェーイ」
なんか、わざとらしくウルルがテンション上げて手を上げている。
「ワーワー」
ライラが棒読みで拍手してる。なんだこりゃ?
「お前ら、魔法使ったのか?」
「うん」
ライラが答える。
「ホーンラビットに小さな魔石があったから使った。まあ、使った魔法はライラの『動物と会話』だけどね」
「私たちもお前とはしっかり話せた方がいいからな」
ウルルが不敵に笑う。
「これからしばらくパーティー組んで貰うからよろしく!」
ライラが僕にウィンクする。もしかして、コイツらみんな伝説のチョロインってやつなのか? もしかして、来たのか春? ハーレムパーティー結成か?
そう言えば、なんかえもいわれぬいい香りがするな。見ると壁の暖炉に火がついてる。あれって使えたんだ。
「ねぇ、タッキ、タッキがここに戻ったらパーティーする予定だったんでしょ?」
マリンが僕を引っ張ってってテーブルにつかせる。テーブルには金属の碗が置いてあって、真ん中に鍋がある。その鍋をライラが手にして、刺さってるお玉で中身を碗につぎ始める。
「ささやかながら、今日は贅沢しましょ」
ライラが僕に微笑む。もしかして、ライラの手作り料理か? 生まれてこの方女の子の手作り料理なんて初めてだ。
みんな席につく。僕の目は碗に釘付けだ。だって暖かい料理だよ。ここしばらくの僕の食事は固い肉と臭い団子。食べられるだけありがたかったんだとは思えるけど、アレは動物の餌のようなものだ。
「じゅるっ」
つい、溢れそうになった唾を飲み込む。漂う肉の香り。美味そうだ。美味いに違いない。
「じゃ、食べま…」
ライラの言葉も終わらぬうちに。
「いただきますっ!」
僕は碗に手を伸ばし、それに口をつける。
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