第十話 イケニエ
「まずは、女子から並べ。スキルを配る」
カズマの言葉で、女子が教卓に並ぶ。そして、カズマと一言二言話しながら、列が進み、全員終わる。
「次は男共並べ。お前らに合ったスキルを配る」
西園寺以外が並ぶ。なんか分からないけど、列の最後尾に並ぶ。カズマとみんな一言二言話して、僕の番になる。
「タッキ、売り切れだ。お前のスキルは無い」
「どういう事?」
「1人1つのスキルを貰えるんだが、30しかなかった。元々1人分足りなかったんだ。席に戻れ」
僕は大人しく席に戻る。今思うと、多分カズマはこの時何らかのスキルを使ってたんじゃないだろうか?
「船に乗り込む。だが、船は30人しか乗れない。海に落ちたら、異世界のどこに出るか分からない。誰か、船に乗らない人は居ないか?」
おいおいそんな話して乗らない奴居る訳ないよな。
「そうだよな。居る訳無いな。だが安心しろ。1人余計に乗ったとしても、王国の王都の近くまでは移動できるそうだ。だが魔物に会う危険がある」
「おい、司馬、じゃ、二ノ宮に頑張って貰えばいいんじゃないか?」
西園寺が口を開く。ちなみに司馬はカズマの苗字だ。
「二ノ宮、お前、漫画とか本とか好きだろ。ああいうのじゃ、ハズレスキルやスキル無しの奴が最強になったりするだろ。お前、それやれよ」
西園寺は勇者って言って無かったか? それが勇者のセリフか?
「いや、無理だって」
即反論する。
「おいおい、西園寺、タッキだってクラスメートだろ。みんなで努力して頑張るのが楽しいんだろ」
カズマが笑う。けど、なんか、その顔はいつもと違うように見えた。この時には上げて落とす事を考えてたんだろう。
壁に穴が開き、桟橋があり、黒い海に船が浮かんでいる。帆もオールも無い。
そして、僕らはそれに乗り込み、僕はカズマに海に殴って沈められた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
木に這い寄ってもたれかかって体を起こす。多分、僕は絶望のあまり、全てを忘れようとしてたのだろう。
僕が何故かスキルを隠そうとしてた理由も分かった。格好悪いだけじゃ無くて、クラスメートたちに僕のスキルがバレるのを恐れてたのだろう。みんなは僕が死んだと思っている。もし生きてるのがバレたら、見殺しにした僕が復讐しようとしてると思うだろう。そしたら、全力で僕を殺しに来るかもしれない。
それにしても、何故、ゴブリンとカズマとコウタが一緒に居たのだろう。見えては無いけど、近くで声がした。奴らはつるんでると思うのが道理だろう。
しばらく座って息を整える。
そして、いつの間にか落としていた棍棒を拾う。ウサギは後で取りに来よう。息を殺してゴブリンを倒して身ぐるみを剥いだ所へいく。そこには死骸が三つあるだけ。ウルルとライラが荷物を落としたって言ってた方に向かう。戦闘の痕跡はあるが、荷物は見当たらない。ゴブリンかカズマたちが回収したのだろう。
カズマとコウタは幼なじみと言ってもいい。けど、奴らは裏切った。それ相応の報いは受けさせてやる。弾が増えているのを実感する。5発は放てる。ライラたちの荷物を回収しがてら、ゴブリンを倒し、あわよくばカズマにも復讐する。
僕は出来るだけ音を立てない様に歩く。木の下の柔らかい土には足跡が残っている。それを辿って森の奥に進む。
進んでいくと、森が開けた。広場の真ん中に石造りの小山みたいなものがある。教科書でみた、たしか南米あたりのピラミッドのような建物だ。階段状に石が積んであり、四角錐の形をしている。こちらに近い一辺に四角い穴が空いていて、それを挟むように二匹のゴブリンが槍を手にしている。歩哨ってやつだな。と言う事はあの穴の中にゴブリンやカズマ達がいるかもしれない。
二匹の歩哨に近づいて一匹を倒すのは容易いと思うが、そしたらもう一匹は仲間を呼びに中に走ってくだろう。どうやったら二匹同時に倒せるか? 二匹が一列にならんだ所で、ガンの弾を貫通させて一撃で倒す。僕は森の中をジリジリと回る。そして、二匹が直線に並んだ所でガンを出しダッシュする。ゴブリンがこっちに気づいた。止まってガンから弾を放つ。
バシュッ!
成功だ。手前のゴブリンは腹を押さえ倒れ、奥の方は頭に命中。手前の奴の頭に一撃加えてとどめを刺す。
入り口から奥を覗くと、一本道で、壁には松明がかけてある。奥には部屋があるみたいだ。扉は無い。ウルルが集団って言ってたから十匹以上はゴブリンが居るのではないだろうか? あと弾は3発。けど、ボロいながらも槍が手に入った。ここ入り口で待ち伏せすればあと何匹かやれるんじゃないか? ヤバくなったら森に逃げ込めばいい。いや、消極的だな。ここは一本道、この状況は大チャンスだ。僕は足音を忍ばせ、通路を進む。部屋の入り口から中を覗く。カズマ達は居ないな。ゴブリンが8匹。奥には鎖に繋がれた人っぽいものが見える。それにゴブリンが二匹ほどたかってる。「キャーキャー」黄色い悲鳴がする。さすが僕の夢だ。あれは僕の助けを待ってるお姫様だな。僕は大きく息を吸い込む。
「があああーーーーーーーーっ!」
口を大っきく開けて叫ぶ。叫ぶ時は「お」か「あ」が口を大きく開けるから言いやすい。
「かかってこいや!」
僕は入り口に仁王立ちする。飛び道具をもってる奴が居なくて良かった。
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