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異界での新たな人生?!  作者: WESZ
第一章 下界降り
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第5話 リーアちゃんを手に入れろ!


 うーーーん。

 どうするべきか。


 ≪ポケット≫から取り出した紙と鉛筆に、リーアちゃんが不思議そうな視線を向ける。

 オレは、リーアちゃんに聞いたことをメモ書きした紙の前で唸る。


 オレの唸りに不安そうなリーアちゃんの顔がすぐ横にある。


 なんか寂しげ。

 紫色になっている唇にちょんと一瞬、キスするとぱっと離れて、彼女の前に向き直った。



「さてリーアちゃん。そうとなればどうしようかな? いっしょに考えようか?

 一応言っておくけど、オレ殺されるつもりもリーアちゃんを殺させるつもりも一切ないからね」



 キスされた唇に手を当て、赤くなってたリーアちゃんはオレが続けた話に姿勢を正す。



「……ハイ。でもわたし巫女ではなくなりました。

 ライブラ様に関して言えば、死刑になんてことにはあり得ません。

 そもそもライブラ様が助けていただけなければ森で死んでいましたもの。そこは安心してください。

 ただ、わたしに関して言えば、村の掟に照らせば死刑になってしまいます。

 ……コレは現状では覆せません」


 む。


「却下。リーアちゃん犠牲になんてさせない。そんなんなるならリーアちゃん攫って、村でる」


「ライブラ様……

 でも勘違いとはいえ、巫女としての役割が果てさせなくなってしまった以上、

 罰は必要になりますよ……でないと村人にも釈明できません」



「罰やだ。……ふーむ……アレ? 今の村長って?

 今の話だと、誰になるんだ? リーアちゃんのお父さん? 見かけなかったけど?」


「え、あ、……実は……いまは正式な村長がいません。一応代理でおばあちゃんがしています。 

 村長だった、お父さんは……ちょっと前に魔獣にやられちゃいました……」


「あ、ゴメン…………そう、そうか……じゃあ、次の村長はだれになるんだい?」


「あ、その……わたしかリムが巫女の期間すぎて……産んだ子か、純潔をささげた男になります」


「? ずっとあとになるよな? でもその前に……森で二人とも死んでたらどうなったんだ?」


「………"廃村"……です。……一族の掟上そうなってしまいます。

 廃村になると今ここに住んでる人は、二度とこの場所では住めなくなります。

 今の代行状態も……ホントはいけなくて……廃村の対象なんです……

 だけどお父さんが死んだこと隠して……

 コレ……"一族会議"で言われたら……廃村しなくちゃいけない状態なんです……」



「"一族会議"……ね……。つまり村の掟っていうのはそれほど強制力はなさそうだね……

 その一族会議っていうのは?」


「あ、ハイ……主に部族長を決めるのと、湖の神に捧げる生贄を選定する会議です。

 それ以外では普通は集まりません。会議は村長か巫女かどちらの出席で済むんです。

 だから、村長がいない状態でも、ばれずに済むんですが……」


「両方いないとダメってことね……でも巫女が処女かどうかなんて……」


「会議の前に確認するんです……もし違ったらお役目のとき、大変ですから……」


「そ、そう……」



 うーーむ? リーアちゃんの処女を確認する? どんな羞恥プレイだよ……ぐぬれ許せん。


 ……でも処女……初めてでも膜が小さい娘とか血は出ない娘いるよなあ?

 …………ま、考えまい。


 ふむ。とーなると



「なら、リーアちゃん。オレがこの村の"村長"になるのは可能か?

 つまりリーアちゃんが20歳だと偽って……っていうか一族にはそう言って」


「え…………ライブラ様が村長に?

 …………可能……かも……です。

 わたし一族会議にでたことありませんし……でも村人が納得するか……」


「納得できれば問題ないわけだ」


 それならなんとかなるんじゃね?


 オレが村長になるのはリーアちゃんを独り占めする第一歩や。

 楽観的かもしれんけど――まあ無理なら逃亡だ……な。



「……あの……ライブラ様……

 嘘でも、ライブラ様が神様だっってことではダメなんでしょうか?

 すごいお力がありますし、証拠にもなります。それなら一族会議でも問題ないんですが……」



「……ゴメン。それはダメ。

 あのね、神様のつくった掟で、神様じゃないのに神って名乗るのは、大犯罪なんだよ?

 だから、それはできないんだ。

 ホントの神様ってね、もう――デタラメな力をもってるんだ。

 オレなんか睨まれただけで軽く殺されちゃうくらい。……もし名乗ってるのを知られたら――

 オレだけじゃなくて庇護対象になるヤトの一族ごと視線だけで皆殺しにされちゃうよ」



「そ、そうなのですか……そ、そんな恐ろしい……神様ってすごいんですね……」



「うん。まあそういうわけで神だのみは無理。

 オレについては、そう――不思議な力を持つ"賢者"ってことにしておいて――」


「賢者様……ですか?

 あ、では……天から来られた賢者様ってのはどうですか?

 それならきっと、神様待遇に近くできそうですが……」


「うーーーん。それもちょっと……。間違ってないし、嘘でもないけど……

 天から来られてたっていうのはできれば秘密にしたいんだが……」



 天界人にばれるのもまずいし……"天から"なんて目立つことこの上ない。

 できれば単純に"賢者"がいいんだが……"不思議な"ってのも妥協の産物だし。



「うん。やっぱまずい。

 正直いうと"君たちから見て不思議な力"を持ってることもできれば隠したいし。

 まぁヤトの一族内で知られる程度なら、問題ないと思うけど……

 天からってのは……噂でも広まったら、たぶん貴人とやらを刺激しかねん」



「あ。そうですね……貴人さまたちに知られると大変になりそうです。

 もちろんライブラ様なら、きっと貴人さまもやっつけてしまいそうですが……」


「下界なら――普通の人間あいてなら負ける気はしないけどね……

 でも、むやみな闘争を引き起こしたくないし……」



 っていうかそんな、目立つマネしたくねえ。

 天からなんてキリスト教まがいなら、たぶん異端とかってものになりそうだ。

 一対一ならどうとでもなるだろうが――相手が複数だったら、目立つし、たぶん負ける。



「……話をもどすよ。オレが村長になる案は――対村人的にはどうかな?」


「……うーーん。……ライブラ様の不思議なお力を全面にだせば――

 でも……掟として――でもできるなら、一族会議でも問題なくなるし……

 …………でもわたし16だし……

 ううーーん。

 ごめんなさい。ライブラ様、わたしだけでは判断つきません。おばあさまなら……」



「ま、そうか。じゃあお婆さんに聞いてみるか…… ……あ、でもその前に……」


「?」



 リーアちゃんを独り占めするためだ。これだけは譲れん。

 この際、問題ない嘘ならついたる。



「ゴホン。――うん。

 リーアちゃん処女じゃなくなって、村の掟上、他の村娘と同じようになるとおもうんだけど――

 すまないけど、オレ以外の他の男とは性交しないでほしい」



「(ボッ)……え? ええええと。そ、それはその……わ、わたしもそうしたいですが――

 でも、その、掟上、純潔でなくなって、男衆に望まれたら…………」


「うん。そうかもしれないけど。

 ――――実は、オレの力って回復するのに食事と、あと……女が必要なんだ。

 女を抱けば回復できる。で、オレ以外の男に抱かれたことのある女はダメなのだよ。

 そして村人を見た感じ、他の女だとあまり効果なさそうなそうなんだ」



 大嘘。

 ――ついでにこの嘘がばれないように、後でなんとかする術を調べよう。

 ついでにリーアちゃんの貞操を守る仕組みも作らないとな……



「そ、そうなのですか。……よかった。

 あ、ハイ!! わかりました!!

 ライブラ様の大事なお力のことです。皆に言えば問題ないでしょうっ!!」



 よしっ!! ぐっと拳を握る。


 これで、あとは村人対策だけだっ!










 




「……………そうですか……

 ライブラ様、神様では……なかったのですか…………

 なんてことじゃ……ああ…………」



 婆さんはオレが神じゃねえって知って、一気に老けこんだみたいだ。

 どうもリーアちゃんが20歳になるまではって、結構無理してたみたいで……

 神様が来て問題解決って喜びから、落とされて余計に負担がかかっちまったみたい。

 となりのリーアちゃんもそのことがわかって、申し訳なさそうだ。



「その、おばあさま……ごめんなさい。

 ……で……そ、その……わたし、巫女でなくなちゃて…………」


「うむ。それはわかっておる。……掟では、リーア、そなた……死刑じゃ……」


「あ。そ、その、で、でも、ライブラ様が……あの…………」



 リーアちゃんなんか婆さんに委縮してしまって、話しが続けれねえみたい。

 これは、オレが言うべきだな――



「あ、そのことで、相談なんですが――――














「……なるほどのぉ。確かにそれなら一族会議の問題はなくなるの。

 じゃが――失礼じゃが、ライブラ様、神様でないようじゃがほんに、

 我が村――繁栄させることできるのじゃろうか?

 孫娘たちの話じゃ不思議な力をお持ちのようじゃが…………

 もし繁栄できる力がおありなら、まったく問題ないのじゃが――


 それに年貢が足りなくなった場合の貴人への生贄もいまはおらん。

 我が村の今年の年貢は500石じゃ。村で食べる量は少なくても100石は必要。

 今年はギリギリ600石の収穫じゃった。


 ――来年、年貢がもし上がったらどうなるかわからんのじゃ。

 あるいは小麦の年貢がはじまるかも知れぬ。こちらはまだ全然たりぬ……


 こんな状況で、ライブラ様、なんとかなるんじゃろうか?

 いえむしろ、こんな村を背負っていただいてもいいのじゃろうかと…………」



 うむ。ずいぶん沈痛な表情で村の危機的状況を語る婆さん。


 ちなみに石高っぽいものは貴人たち基準だ。村でも教えられたその単位をそのまま使っているらしい。

 村では米が主食じゃないし。ときどき食べる程度。


 で。そこまでひどい状況だったのを知らなかったのか、心配そうな、

 あるいは申し訳なさそうな顔をオレにむけるリーアちゃん。




 …………実のところオレ的にまったく問題なかったりする。

 ぶっちゃけ、この村の現状を見て――農工ともにいくらでも改善の余地があるし――


 田畑を広げるのも剣の衝撃波やら術で楽にいくらでも増やせる。

 持ってるコレクションの書の中には、こういった状況下で役に立ちそうな情報がいっぱいだ。


 この状況で役立ちそうな道具も≪ポケット≫には、山ほどあるし。



 ――――ついでにいえば、あまりしたくはないが最悪≪コピーリング≫がある。

 農作物をコピーしちまえば、オレの霊力がある限りいくらでも増やせる。


 ただ、コピーされた農作物の食事では腹は膨れるだろうが、霊力の回復にならんし。

 万一、コピーだとばれたら大変だ。

 貴人とやらが魔法が使えるならば――作物の霊気をみりゃまったくないから変だってすぐわかるし

 でも、村で食べる分をコピーにすれば問題ないわけだ。オレの分は別にしてもらって。




 あ、ついでに≪コピーリング≫の説明しとくと、大前提としてコピーからコピーは造れん。


 それにコピー物は一定量の霊気を通すと消滅してしまうし。コピー物を『錬成』変化はできない。


 また、オリジナルが概念変化してもコピーは消える。コピー実行者が念じても消える。


 ただし先にコピーの方が概念変化――熱などで溶かしたり、物の概念を変えたもの、

 食っちまったもの、そういう霊気以外で変化した場合は、

 オリジナルがどうなろうと概念変化したコピー物は消えない。物質として世界に定着する。

 だけど、コピー物が、概念的にあまり変わっていなければ消せる。

 例えば――人参を半分に切っても人参。この状況なら消せる。本を少し破ったりとかでも消せる。


 ただし、そういった世界に定着した消えないハズのコピー物質でも、

 ある程度の霊気を通すと消滅してしまう。……食物として食べたものは大丈夫。

 ようは『錬成』などの術の対象になると消えるってこと。

 例えば、鉄器をコピーして、コピーしたものを溶かした鉄での『錬成』はできん。すぐ消えてしまう。

 ついでにその鉄でつくった防具は術に対して紙切れみたいなものになる。



 コピーの性能はコピー機の性能や道具の使い手、コピーに使った霊力量に準拠。

 魔導具など力が込もった道具はコピーできん。……というか形だけ。

 ま、コピー物には霊気がないってこと。だからコピーした食物を食っても霊気の回復にならねえ。



 ≪コピーリング≫はA級死人以上じゃないと支給されない理由がわかるってもんだ。

 天界で販売される道具や消耗品なんて天界人が死人を働かせ給料として稼いでもらうため、

 死人の為に用意されているみたいなもんだから。

 ≪コピーリング≫があれば霊気のこもらせる必要ない消耗品なんて一度買えば必要ないしな。




 まあ、≪コピーリング≫を使わんでも、この状況下では、オレはまさしくチート。


 だから――――



「まったく問題ない。君らオレの力ばかりみてるかもだけど、

 もっと重要なのは知識と知恵の方だ。だからこそオレはここでは、"賢者"を名乗ろう。

 オレの知識を使えば――今からなら、そうだな……来年の収穫高を2倍以上にしてみせよう」



「ラ、ライブラ様っ? そ、それは誠ですか?! 

 それなら……いえ、そうなら是非、お願いいたしますじゃっ!!

 まったく問題ありませぬ。おばばが考えておった神様以上じゃ!!」



 おいおい、神様侮辱しすぎ。神族ならできた農作物そのものをパッていきなり出しちまうぞ?


 ? リーアちゃんもか…… こっちも尊敬の目でオレを見てる。


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