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異界での新たな人生?!  作者: WESZ
第二章 ルルア改革
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第16話 おめでたっ!


「リーアっ!!」


 バージンロードの青い絨毯の上に無言で崩れおちるリーア。

 意識はかろうじてあるようで、倒れた際に受け身を取って肩から崩れたように見える。


 すぐさま駆け寄ってリーアを介抱する。

 青い顔して血の気が引いているようだ。


「……っ。いったいなんでっ……『探知』」


 彼女の体内部の精霊に異常を問いかける……


「? 異常なし? ……疲労か?」


 精霊は極度の疲労以外には異常を伝えてこない。疲労の原因がさっぱりわからない。

 今日の式は確かに緊張はしただろうが、別段それほどの疲労があるとは思えないが……


 精霊は異常なしと返す……それどころか祝福してるような…………



「……………原因を消す方向でいくか……」


 精霊が異常を伝えてこないので『治癒』術では効果がなさそう。

 『錬成』術を使って疲労物質かなんかを消す方向でいく?


「ま、まって貴方……」


 オレのつぶやきが聞こえたのか、リーアは力なく、焦ったようにオレの術を止める。


「?」


「消しちゃ、だめ…………

 たぶん、あかちゃん……できた……かも……」


「んなっ! ……そ、そうかっ!! ……あ、アブねえ……

 …………

 あ、赤ちゃん……か」



 リーアは術を止めたのを確認すると安心したかのように、そのまま気絶してしまった。

 慌てて、リーアが頭を地面に打ち付ける前に抱える。


 リーアの青い顔の中でも口元には笑みが浮かんでいる。誇らしげだ。


 …………


 そのままリーアを抱きあげて、精霊堂外にいるチロさんたち女衆に任せにいった。




 ……


 精霊堂の外では新郎新婦を取り囲んで宴会が行われていた。


 新婦と話しているチロさんを見つけた。



「チロさんっ! ちょっと来てくれっ!! リーアが!

 リーアが……妊娠したかもっ!!」



 オレが焦って張り上げた声に、新郎新婦を囲んで和気あいあいとした雰囲気が停止し――



「おおおおぅぅぉぉぉぉ!!」



 大きなどよめきとともに視線がリーアを抱きあげたオレに向いた。



 で――相争うようにオレの周りを取り囲んで、歓呼の声が上がる。


「おめでとうございますっ!!」「ばんざいっ」「賢者様の御子さまが」「めでたいっ!!」



 ……おわっ。いやいや……

 ぬぅ……まずい。うっかりしてた……これじゃ、今日の主役を食っちったかもしれん――


 あ―― 新郎も新婦もリーアの妊娠によろこんでるみたいだけど――

 あとで謝っとこう……



「ちょっとっ! どいてっ! ……あんたら騒ぎ過ぎっ!!

 ……通しなさいよっ!!」


 囲みをわけ合ってチロさんとリムちゃんが傍にきた。

 チロさんはすぐリーアを見――


「ああぁっ! もうみんなちょっとどいてっ!

 ……賢者様、奥方様を家に――」


「あ、……ああ。わかった……」


 こういうときってやっぱり女は強しって思うよな……








 …………


 村人たちに見送られて家に――部屋のベットにリーアを運ぶ。

 チロさんは他の女衆となにか話し合っている。

 リムちゃんはリーアのそばで心配そうに見ている。



「あ……貴方……」


「あ、リーア…… 大丈夫か……あ。我慢しなくていいから……頼むから無理しないでくれ……」


「うん。ごめんね……」



 ……


 チロさんが目覚めたリーアと話し合って、どうやら本当に妊娠したっぽいことがわかった。


 リーアは妊娠になんとなく気づいてたらしいが、オレが結婚式の準備とかで忙しいそうだったから

 あとで言おうとしてたらしい。

 言う前に結婚式が始まって……

 倒れるわけにはいかない……って。気分が悪いのを頑張って耐えてたらしい……


 …………夫なのに、忙しさにかまけてリーアの異常に気付かなかった……


 凹む。




「そう。よかったわ……」


 妊娠が確定だとわかったリーアは安心したように、そう言ってまたすぐ寝てしまった。





 ……子供……か……


 ……

 ふ、ふ。

 ほぅーーーぅ。


 なんだか――――安心した。


 受肉して――欲情があったし――リーアとなんどもシテたし――

 だけど……最近普通じゃないオレが――オレに子供ができるか、実はちょっと心配だったが――

 ちゃんとオレに種あったみたいで、安堵のため息。



 天界72年くらしで、変わりのない生活だったから気づくのが遅れたんだが、

 オレ、下界におりてからもう半年たつが、一度もヒゲを剃ってないし、髪の毛を切ってない。

 ずーーーと、そのまま。


 リーア用の結婚式の衣装を作る時、リーアの髪が伸びているのに気づいて、

 ようやくこのこと――自分の不自然さに気づいたくらいだ。


 オレは髪もヒゲも伸びていないし、ツメも伸びてない。


 で――実験的に、前髪一本を赤マジックで塗って、測ったあと真ん中で切った翌日――

 同じ長さまで根元から黒い毛が伸びてた。


 つまり完全に姿が固定化されているっぽい……

 いつも擦り傷だろうがすぐ術で治してたから気づかなかったが――怪我も治るのかな……

 この分だと老けない……かも? 不老? あるいは不死? そんな風に思ってたし。

 霊力の不自然な増大と合わせて、ホントに子供ができるのか――内心不安だった。



 ……


 ふぅ。

 オレの子……か――

 どんな子が生まれるのか―― オレに似るのか――リーアに似るのか――


 ……オレに似る?


 …………そ、それはなんかヤダなぁ……

 オタクとか―― 


 ああ違う…… そうじゃねえ……そういうことじゃなくて――



 霊力はともかく、今のオレに余計なとこまで似て――不老とかだったりしたら……


 ……いやいや。それはあり得んか。

 そんなんだったら腹で成長――出産もできんし。そもそも妊娠しないか……

 うむ。不老とか、あるいは――成長速度が遅いってことは多分なかろう。


 一定以上の年齢で不老になるとか? ……いやそんな、ご都合主義はないか。


 だけど、どちらにせよ……

 できればリーアに似た女の子がいい……な。


 

 



 …………


 なにか……

 妊娠中のリーアの役に立つもの……

 生まれる子供の役に立つもの……


 村の女衆に任せりゃ大丈夫だと思うが――オレでも出来ること――なにかないかな……



 夜。そのまま寝つづけるリーアを横目で、明かりの下≪ポケット≫内を探す。


 うーん。道具は――妊娠中は快適に過ごせるよう――確かストレスがないようにしないとだっけ。


 ≪エアコン≫……孵卵小屋で使用中か。


 他には―― おっ!

 霊術修行用の精神集中に効果があるかと思って買っておいたアロマオイルが3種類あった。

 修行には……気分が良くなるが、集中力には影響なくて修行の効果はあまりなかったが。


 とりあえず取り出しコピーしておく。


 他は――

 タオル……まあ――あれば、なんか助かるか。

 まだまだ、村ではここまでふかふかな布が作れてないし……


 あっそうだ。家の段差。

 そういえば結構たくさんあるよな…… あとで確認して手すりとか…… 

 あ――生まれた子が怪我しないように角とか……尖った部分を直しておこう……



 食材はどうかな…… コピー物でも栄養的には問題ないからコピーしとこう。

 たしかカルシウムがどうとか……村に牛乳があるが――


 あ、≪ポケット≫にホウレン草がある…………とりあえずコピー。

 フルーツ……りんご、みかん、バナナ……

 レモン調味料? あ――すっぱいものがどうとか? アレ?

 酸っぱいものが必要だっけ? だめだったっけ? ええい知らん。とりあえずコピー。


 他は――酒? あーたしかダメだったな―― 気分よくなるなら紅茶はどうかな……

 ティーパックがあるからこれもコピー。スティック砂糖もコピー。



 ……ってそうだっ!

 書、見りゃいいじゃん!


 ≪ポケット≫の書籍から関連書を探す…………



 …………



 ヲイ。

 …………ネエ。



 妊娠に役立ちそうな書籍がまったくない。

 医学書も―― なんか毒がらみと―― 内科関連の薄い書籍だけ……


 ≪ポケット≫内にある書籍の半分は術関連で――あとは小説とか――

 技術書、図鑑……料理のレシピ……医学関連は毒と内科の2冊だけ……

 うー、レシピ……かろうじて役立つ? いや、この世界の食い物と違うからだめだわ。


 っつ! くそっ! 肝心な時に役に立たねえっ! ああ。どうしてオレはっ!

 せめて家庭の医学書とか……そんな感じのがあればよかったのに!

 

 ええいっ! 小説とかでそんな場面ねえか?


 むう。探してみるか……



 あとは……『治癒』術で――術でフォローするしか?

 あとは……結婚指輪で使った安産のための術式を――

 コレは、単に新生児に対しての精霊の祝福効果を高める術式だが――


 こいつをちょっと弄ってみよう……

 




「………う、ぅん…………ぁ……」


 ら? オレが頭抱えて唸っているとリーアの声が聞こえた。


「リーア?」


「あ……貴方? あ……朝?」 ぼんやり寝ぼけなまこで尋ねてくる。


「すまん、まだ夜。おこしちまったみたいだな」


「貴方は寝ないの?」


「え? ああ…… ちょっと妊娠中に役立つもの考えてて……」


「…大丈夫よ。チロさんたちに任せれば―― だから……」

「リーアがつらいだろうから、なにかできることしようかなとさ」


「………それじゃ、貴方……いっしょに寝て?」


「うん? いや、妊娠中でヤルのは……」


 たしか妊娠初期は性交渉はまずかったよーな……


「もうっ! そうじゃなくてっ! 隣でいっしょに寝よう? ね?」


 …………あ。そーいえば前に一人で寝るのは寂しいとかいってたっけ……


「あ、ああ。わかった。おーけぃ……」


 そうだな。

 オレがあれこれ考えるより…… 


 実際に妊娠してるリーアの気持ちを優先させなきゃな……









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