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異界での新たな人生?!  作者: WESZ
第二章 ルルア改革
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第10話裏 力自慢のムオヌ


【side ムオヌ】


 おらは今、村の西門に歩いてる。

 賢者様からご指示された土を取りに行くんだ。

 

 村にあるヤツでも大きい空壺を持ってる。


 村長の家、賢者様がいるとこを通ろうとしたら、青くてでっけえなんかがあった。


 みんな集まってる。



 ……なんでもあれは、賢者様の家だそうだ。

 昨日にはなかったのに、一晩でできあがってた。


 おらが来る前に、中から賢者様と巫女様――じゃねえ、奥方様がでてきたんだと。

 賢者様はそのあと森に出かけた。


 はぁ。すげえなあ。

 やっぱ、賢者様は神様じゃねえのか?


 村のみんなもそう言ってるし。

 賢者様が直接、不思議なお力で怪我を治してくださった、ミミなんか特にそう言ってる。


 ヤトの神は湖のかみさま。

 賢者様がまとわれているのも、湖の色の服。作られた家も湖の青。

 そういや、ミミを治されたときも不思議な青い火だった。


 きっとあおいろは、神様の色だ。おらたちみんなでそう言い合った。

 ……でも、賢者様は賢者様っていってほしいみたいだからそう呼ぼうって決めた。



 話しあったあと、男衆みんな森に向かう。


 もちろんみんな、賢者様がいった土と獣のフンと骨を探すためだ。


 いちおう、獣がいるかもしれないから、槍と弓をもってく。



 …………


 うらやましい。

 おら、槍も弓もうまくつかえねえ。


 だから賢者さまから頂いた、石刃ってのが使いこなせねえ。

 "短刀"は狩りではさばく時ぐれえしか使わねえ。



 だから今ももってねえ。

 気にいってる女に預けてある。

 男衆の他のみんなも短刀を今は持ってるやつは少ねえ。

 自分が気にいってる女に預けてある。


 でも、みんな、石刃の槍をつかえる。


 ちくしょお。おらもつかえるようになりてえ。おらは狩りのときは斧しかつかえねえ。

 弓はまっすぐ飛ばねえし、槍はすぐ折っちまう。

 斧しか残ってねえけど、おら、足がおそいし、勘がよくねえから狩りがへたくそだ。




 だけど村一番の力があるから、いっぱい持てる。

 土だっておらが一番たくさんもってこれるさ。


 そしたら賢者様にお褒めのお言葉を頂けるかもしれんし、

 おらが使えるご褒美をくれるかもしれん。

 うんがよかったら、おらの名前を覚えて下さるかもしれん。


 だからがんばるぞ。








 ……西門にたどりついたときだった。

 男衆頭のタスケがおらを呼んでる。


 男衆は今全部で56人。

 ここ西門から森に入るのは15人だ。タスケは北門にいったはずだったけどなんのようだ?


 今から賢者様からの大事なお仕事があるってのに、

 つまらんようだったら、全力でなぐるぞ?






 …………


 奥方様から、賢者様をじきじきにお手伝いするようご指示があったらしい。

 しかもおらを御指名だと。

 奥方様はおらの名前をしらんかったらしいが、そんなのどうでもいい。


 賢者様にお近くでお手伝いをする……たいへんな名誉だ。

 みんなおらをうらやましがってる。えっへん。





 おらと、それとヌルウと二人で東門に大急ぎで向かう。


 ヌルウは、タスケが手助けをするようしたヤツだ。

 おらと同じで狩りが苦手だ。

 けど器用なヤツで罠とかつくるのだけはうまい。力はおらよりずっとよええ。









 …………


 すげえ……



 賢者様すげえ。


 賢者様が手に持つ剣というのを振るうと、とおく離れた木が倒れる。

 それも2,3本まとめてだ。

 で、倒れた木が浮き上がって……また賢者様が剣を振るうと枝が切れてく。


 丸太になった木が浮き上がって東門の近くに積まれてく。




 やっぱ、かみさまだよ……

 おらたちの手伝いなんかいるんかな……



 首を大きく回した賢者様が、おらたちに気づいてこっちきた。



「んーー? なんか用かお前ら? ここにじっとしてると危ないぞ?」


 声をかけて下さるが……ううぅ――うまく声がでねえ……

 ああ…… せっかく声をかけてくださるのにぃ!



「あ…「あ、あの奥方様から……賢者様をお手伝いされるようにい、言われました……」……です」


 口をようやく開こうとしたら、先にヌルウのやつが口を挟みやがった。


 ――あ、このやろ。ヌルウ。抜け駆けしやがってっ!

 それに直接ご指示されたのはおらだけだ!


 怒りたいケド、賢者様の前だ。じっとがまん。



「んー? リーアが? …………ふむ。んーー。手伝いは確かにいるが……二人だけでか……

 あ、そういや、あれがあったか――まあ、どうせだ、ちょい試してみるか…………」



 賢者様はなにかをお決めになられた見てえででルヌウをお近くに呼んだ。


「ちょっとそこに、立っててくれ…………『身体強化』!!」


「!!」 ヌルウの体が全体、一瞬だったけど黄色く光った!!


 なんだぁ? もしかしてヌルウのヤツ、賢者様のご加護を得やがったのか?

 きっと、おらが先になるハズだったのに!



「ふむ。成功したと思うが……君……あ、ごめん名前はなんていうだ?」

 ヌルウ? ……おーけー。

 では、ヌルウ。その木を持ってみてくれ……」



 賢者様はそう言われて、ヌルウに賢者様が切り倒された木を手でさした。


 ちくしょー。ヌルウめ。おらより先に名前を覚えていただいた。

 くそっ。あとでとっちめてやる。


 木は……まぁ、大きい。 おらなら頑張ればすこしくれえなら持ち上げれる。

 けどヌルウじゃ無理だろ。



「は……えーと。この木ですよね…………ムオヌならできそうだけどおれが? ……えい、よし」


 無理だろ。


 けどヌルウのやつ、あっさりもちあげて――

 それどころか勢いあまって、うしろにいたおらの方に木を放りなげやがった!!


「うわぁあああああ!!!」 あんにゃろ、こっちになげんじゃねーーーーぇ!!!!






 …………


 おらに当たる直前に木が止まった。


 浮いてる。


 あ、賢者様か……は、ははは……死ぬかと思った。

 こしぬけそーになった。手を頭に抱えて座り込んだ。


「てめっ! ヌルウ!! 殺す気かっ!!!」


「は……、ご、ごめん…………で、でもよ、木ぃ軽くてよぉ」 「嘘言うんじゃねーー!!」




「ああ、待て、君。すまん、すまん。……力を一時的に高めたんだ。

 言わなかったオレが悪い。すまんな………………しかし、なんであんなに?」


 賢者様がそう言われた。後は聞きとれんくらい小さい声だったけど。


 あ、そ、そうですか…………


 だが、おのれヌルウ。賢者様の前で醜態さらさせやがって……

 ヌルウを睨む。 「ご、ごめんよぉ」  ……ふん。あとで殴る。



 賢者様は、いつの間にか手に持ってた四角いのを見てたと思ったら、それはすぐ消えた。


 ? なんだったんだろういまの。



「ふむ。…………霊気が弱い相手だと効果が高いのか……ではもう一人……

 「あ、ムオヌです」 ……ふむ。ムオヌもこっち来てくれ」



 よっしゃああ!! 賢者様に名前を覚えて頂いた!!

 賢者様がなんか言うと、おらの体も光った。


 賢者様が別の木を手でさしたから、おらも試した。


 軽い…………ヌルウが持ったヤツよりずっと大きい木なのに……空壺もってるみたいだ。



「軽い……賢者様……すごく軽いっす。何本もまとめて持てるくらいです」



「それはまた……ふーーむ。もともとの力がある相手だとより効果が高いのは変わらず、か」



 ? よくわからねえけど、おらが強いからすげえ力になったったんかな?





「うん。よし。ではヌルウ、ムオヌ。 君たちの力を借りよう。

 …………これからすることは、村を大きくし、農地を作る。そのために木を切るんだ」



 賢者様は、そういうと少し考えられて……



「切った木は、幹の部分はそのまま丸太とし、まとめておく。

 切った木は種類ごとに分けろ、あと太さごとにもなるべくわけろ。

 そうだな太さは3つか4種類ごとでいいか。

 太い枝――そうだなムオヌの腕くらいの太さ――それくらいの太さのところまで切ってこれも別で

 枝でも直線で太く丸太みたいのがあれば、それは丸太扱いで。


 あと、細い枝、葉っぱはまとめてこれも別で。

 細かい分け方だが、木という命を無駄にしないためだ。大事なことだ。

 

 実がついてるのがあればできれば別で取ってくれ。ああそれほどこれは気にする必要なないが。

 とりあえず作業の早さ優先でな。


 切株とかは後で処理する。それからなるべく土を荒らすな。あとで見たいから。

 だから、木はなるべく地面につけるな。引きずるな。……今のお前たちならできるだろう?


 ケモノがいた場合は危険じゃなきゃ逃がしてよい。まあ、切り倒してりゃ向こうから逃げるだろ。

 万が一巻き込んで殺しちまったら、取っておいて、あとで村にもっていって女衆に渡してこい。

 そのままほっとくなよ。命を侮辱してはいかんからな。


 あと、草とかは、とくにオレが指示しない場合はできるだけ根元から刈っておくように

 それも別で……できるだけ草の種別をわけておいてくれ。これは途中で指示する」



 賢者様からすごい細かいご指示。

 うーー、細かくてよくわからんかった。けど頑張って木を切ってけってことだな。


 ヌルウのヤツは頷いてやがる。賢者様のご指示がわかったみてえ。

 ……っち。


 ……まあわからんかったらヤツに聞くか。




 それから賢者様は 「あ、刃物ねえか」 って言われて……


 なんと大きい石がたくさんが浮いたと思ったら賢者様がなにかしたと思ったら――


 ばかでかい石の斧と、もう一種、変わったかたちの斧? 二つづつになった。

  "鎌"っていうらしい。

 鋭い刃の部分が長くてなんか曲がってる。使い方も聞いた。


 両方とも石刃みてえによく切れそうだ。


 けど、斧めちゃくちゃ重たそう。普通ならあんなの持てるわけねえ。おらよりでっけえ。


 今のおらたちなら、軽く使えそうだけどよ……









 …………


 …………働いた。

 

 すげえ、すげえぜ、今のおらたち!!


 からだが軽い! 足がはええ! 力持ち! 全然疲れねえ!!

 軽く跳んだだけで木のてっぺんに届いちまった!!

 村の衆を途中で見たけど、おらたちが早すぎて何してるかわかんねえみたいだった!


 がんがん木を切った! 枝切った! 葉っぱ集めた!

 草を刈った!

 



 途中、ヌルウのヤツが賢者様に何か言って、おらに命令しやがったのは許せんが――

 賢者様も従えっていうからしゃあなく、ヤツの言うこと聞いてやった。


 切ってる途中でであった、普段なら恐ろしい魔獣すら、おらたちから逃げた。

 賢者様はその魔獣をみてちょっと驚いてた。


 木を地面につけなかったしケモノに気を付けてたから、

 巻き添えでケモノは一匹も死なんかった。






 夕方になった。


 まわりは切株の山。

 賢者様のご指示する場所をすべて切った。めちゃくちゃ切った。


 北門、東門あたりを特に。正門付近……湖からの川があるあたりはある程度。

 村をぐるって回って、周り全部。なんとなく、村の広さ分くらい切ったんじゃねえ?


 あと、ただ、南門と西門に近い部分は……

 ちょっと村の柵から森が離れる程度くらいしか切ってねえ。


 賢者様がいうには村が森から離れすぎるのも良くないらしい。

 森に近い部分も欲しいだってさ。ふぅん。



 村近くに置いてあった丸太は途中でちょっと場所を動かした。

 すげえ山になっちまってて、村に崩れたら大変だからだ。

 なるべく日に干すのがいいらしく、その後でちょっと崩した。




「………千は切ったかな…… まあ多分、それくらいは必要か……

 ――――えーと1000だと……1分に1,2本のペースかよっ。早すぎっ!

 それにしても奥の方は信じらんくらい太っとい木ばっかだったな。

 オレの背丈くれえの太さがあったし。

 樹齢1000年どころか5000年超えてね? 樹皮とかも全部、無駄にできねえなあ。

 切るしかなかったけどさ。まわりそんなんばっかりだったし。


 明日から切株処理と資源採取……ブルトーザーでもありゃあな……術探してみるか……

 あとは水源……湖が湧水なら……こっちだって掘りゃあ湧いてくるだろ。

 それで畑と水路……やることいっぱいだな


 あと、土とか、石灰岩とかフンとか……木を切ったここから取るようにいえばよかったか……

 ずいぶんいっぱいあったな。ま、明日からこっちの採取を優先してもらうか」



 賢者様が考え事をされてる。

 言ってることは難しすぎてよくわかんねケド。



 それはそーと、ヌルウもおらも落ち着いて周りをみると、

 たった一日でここまでやったって信じられんって思う。


 これもみんな賢者様の不思議なお力あってのことだ。

 ……おんなじことやろうと思っても、村の衆みんな集まっても1年以上かかりそう……だ。


 それを賢者様とおらたち二人とで一日でやった。



 うん。おらたちの村。絶対もっとよくなる。

 このすげえ、賢者様についてけば、絶対。


 なんかおらも、きっとヌルウのやつも……胸から、腹から大声で叫びたいきもちになった。




 そんなことを思ってると、賢者様はおらたちにお声をかけられた。


「うん。二人とも御苦労。オレの想像以上によく頑張ってくれたっ!

 明日からもがんばっ……ぁ!……む?

 あ――――うむ。 …………次も頑張ってほしい」


 ? なんか途中でお言葉に詰まったみたいだ。



 それからなんとなく、言いづらそうに言った。


「……今日お前たちにかけた術は明日の朝には効果が切れる。

 ……で。そのときお前たちは全身がとても痛むかもしれん。…………(筋肉痛と霊力痛で)

 明日一日かあるいは数日動けんくらい、きついかもしれん。


 …………


 ……あ…………だが。そのキツさが収まったとき、お前たちの体は生まれ変わる。

 オレの術をかけていなくても、さすがに今日ほどの人外じみた効果はないだろうが――

 昨日よりはさらに強靭な体になるだろう。耐えてみせてくれ」



 …………それは。


 つまり……


「賢者様、それは……おらたちの試練というわけですかっ?!」


 そして、その神さまの試練を耐えると、おらたちもっと強くなれるとっ!!?



「う、うむ。――その通りだ。

 この試練は相当きついだろうが――――

 今日のお前たちの働きぶりをみて、きっと乗り越えられるとオレは信じている。

 試練を越え、より強靭な力を手に入れてくれ!!」


「ハイッ!!」


 うおおおおおぉぉぉぉおおぉぉおぉおおおおおおお!!!!

 やるぜ! やってやる! がんばるぜーーーー!!

























 ――翌日。


「おおおおおおっ!! あああっ!! がああああ??!!!」


 ぬわーーー。 きつい! 死ぬっ!

 全身に昨日切り倒した木がどすんって、まとめて倒れたかのような重さと、

 体の中からもはじけ飛ぶような、とんでもない痛みを感じる!!


 きっと木の恨みだ。賢者様、木にも命あるって言ってたから。

 これが試練なんだろ。



 痛みで気絶することすらできず、ただ、なんでこの状態でも生きていけるのかって

 いっそ殺してくれってそんな気持ちになってくるっ!!


 …………ダメだぁ!!


 これは賢者様から、おらに直接与えられた、重大な試練っ!!

 この痛みに耐えたとき、おらは……おらは……

 賢者様にさらに……よく使える男だとっ

 そう言ってもらえるようになれるんだぁああああ!!!!





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