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異界での新たな人生?!  作者: WESZ
第二章 ルルア改革
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第10話② 初日の成果


 その日、夕方。


 主様とわたし、リムが住む家に――違った入口の前にそのシュイくんがいる。

 シュイくんは7歳の男の子だ。

 だけど、8歳のリムより年上に見える。


 ちょっといたずら好きで、悪ガキっぽく見えるけど、なかなか賢い子だ。

 ……その賢さがいたずらに向けているのはいただけないけど。



 主様に磁石を使った砂鉄の集め方とたくさん有った場所を一生懸命な感じで教えてる。



「えと、その、あの……湖の近くで、湖にはたくさんあって……泥、あつい石において――

 乾いたら、磁石、服でつつんで。えと。磁石取ったら砂が服から落ちてたくさんあつまった!」



 "そふぁ"に座った主様はあごに手を当てられ、意外そうな感じで相槌をうってる。

 わたしは、お家の"てえぶる"の前、シュイくんと主様の間の横に位置するように立っている。


 主様のお言葉を待っているシュイくんは、緊張でがちがちだ。なんだか可哀そうに思える。



「ふぅーーむ? 湖に? なんで――あ………なるほど。地下からわき水といっしょに………

 地下に鉄鉱石でも? あ、でも集まった砂鉄が黒いとすると……うん。森の崖に貝殻もあたったし

 地下の地層が砂浜なのかな? うまく取り出したいが……どうやって水と分離させるか……

 めちゃくちゃ掘れば…… いっしょに水も湧きでるな……


 とーなると…………井戸でも……いや、いっそのこと、もう一個、新しく湖つくるか?

 新しい田んぼに水をそっから引いて――


 でも、下流域に影響、与えるわけにいかんし―― 生態系狂ったら目も当てられん。

 うーーん。 ……組み上げた水を川に流さないようにしなけりゃ問題ないのか?


 ――あ、水質が問題だな……毒混じってて飲んだら困るし。つーか今もこええか……

 あれ? 水に鉄分がおおいと稲作に問題あるんじゃないのか? あとで調べてみるか……」



「あの主様?」 よくわからなかったけど、砂鉄とは離れているような気がしたので声をかけてみる。



「はっ?! ああ。 ごめんごめん。 シェイくんも待たせたまんまだった。 

 ――うん。

 その集め方は、たしかに。 ついた砂鉄と磁石を取り外すのに有効だな。

 言われてみれば――ってことだが。一度でもやってみんと気付かんもんだな……

 よし。明日からみんなにそのやり方でやるよう指示をだすか。

 あ、裸になって服を使わんでも――別の――とりあえずはビニール袋にして……あとで別の……

 それと入れる磁石の数を増やしても効果ありそうだな……」



 主様はなにか納得されたご様子で、立ち上がって……あ、なにか取り出されたみたい。


 シュイくんの場所に歩いて近づいた。



「うん。がんばったね。シュイくん。まだ7歳なのに、よく頑張ったエライ! 


 これはご褒美だよ。"メロン"っていうんだ。 実をいうとオレも結構すきな果物なんだよね。

 リーアが言うにはこの辺にはないらしいから、すごく甘いめずらしい果物ってとこ。

 中の柔らかい部分が食べれる部分だ。切って食べてみて。

 あ、日持ちはしないから早めに食べないとダメになっちゃうから気をつけてね」



 その果物に目を大きく見開いたシュイくんに、大きな実を手渡された。

 シュイくんは、自分の頭の大きさほどもある大きなくだものを両手で大事そうに抱えている。



「うん。コレをひとりで食べてもいいし、みんなと食べてもいい。気にいってる人だけに分けてもいい。

 一応、今日のこれは特別。最初のご褒美だからいいものをあげる。

 でも他のみんなにも言っておいて。まだいろいろたくさんあるよって。

 うん。……さ、暗くならないうちにお帰り……また、ご褒美がもらえるように頑張ってね」


「う、うん。がんばる。……けんじゃさま。おやすみなさい」


「ああ、おやすみ」


 ぺこん、と頭をさげたシュイくんは"めろん"を落とさないよう、大事に持って帰った。






 ……


 シュイくんが、お家の中からは見えなくなった。


「………リーア」 主様がなにか一考してたようで――ちょっと声を落とした。


「貴方? なにかしら?」


 この貴方あなたって呼び方、やっぱりちょっと恥ずかしいし呼びにくいかも。

 わたしの心情的には、やっぱり"あるじさま"だし。



「シュイくんなんだけど……リーアから見てどんな子?」


「どんな子って……そうねぇ…… 10歳前の子の中じゃ結構目立ってるわね。

 あ、そういえば。朝にほら、貴方が切った木を猛獣だって云いにきたリクゥちゃんと仲がいいわよ。

 あと、明るいし、みんなの中心にいるような子ね。

 …………そうね、たぶん将来良い狩人になれるんじゃない?」



「ふむ。………リーア、シュイくんがメロンをどうしたか、明日の朝でも調べておいてくれない?

 あ、あと――――コレ、シュイくんが言ったやり方で使った服がわりに……

 砂鉄を集めるのに……乾燥させた砂鉄を分離するときに使うようにいっておいて」


「わかったわ。――? コレ……紙? へんな布ね。ああこの中に磁石をいれるのね?」


 主様が"ぽけっと"というのから取り出して、"こぴい"をたくさん造った変な布を受け取る。

 白くてつやつやして、とても軽い布だ。"びにいるぶくろ"というらしい。


 ……主様がお持ちになる道具とか、食べモノってどんだけ種類あるのかしら。

 名前を覚えるのがすごく大変。









 暗くなりそうなころ、リムがタスケさんといっしょに帰ってきた。

 いったいどこまで行ってきたのだろう。


 聞いてみると、なんとタスケについて森の奥に付いていったみたい!

 もう、危ないとこいっちゃだめっていってるのに!


「リムっ! あぶないとこ行っちゃダメっていったでしょ!」


 怒って見せるけど、リムはぷぃってあらぬ方向を見る。

 もう……どうして、言うことを聞いてくれないのかしら。



 リムは怒ったわたしに知らんぷりで――主様に自分の"のおと"を見せる。


「森にあったのたくさん描いた。獣いっぱい。……これ、いちばん大きかった」


 ……もう。


 主様も、リムが描いた絵を見て、どんな獣だったのかいろいろリムに聞いてる。

 リムは上機嫌で話してる。主様もうんうんと相槌をうってる。


 むー。リムがなんだかわたしに反抗期。



「………うんうん。リムちゃん。一日でたくさん描いたね。ありがとう。

 でも、オレはそのおかげで助かったけど、

 オレもリーアと同じで、あんまりリムちゃんが危ないことをしてほしくないな。

 今日は大丈夫だったけど。森には魔獣だっているんだからね――

 まあ、タスケたちといっしょで大人数だったみたいだし怖くなかったかもしれないけど」


「………うん。わかった。危ないこともうしない」


 むーーー。もう。主様の言う事には素直なんだから……




 主様はリムの頭をぽんぽんなでると、部屋の隅においてある道具から木の棒を二つもってきて

 そのうち、ひとつをわたしにくれた。


「ああ、コレ。今朝渡す予定だったけど忘れてた。リーアとリムちゃん用の護身刀」


 主様から受け取った棒――護身刀はなんだか堅い白く光る模様があっちこっちについてた。

 どこか不思議な模様で、神秘的な感じがする。

 それから手に持ったらなんだかあったかい感じが……主様に触れているような感じがする。

 不思議な感覚。



「――こーやって、ここを抑えながら抜くと刃物になる。使わない時は鞘にいれとくこと」

 

 木の継ぎ目のあたりを押さえてゆっくり引っ張ってみると、するどく尖った綺麗な石があらわれた。

 いえ、銀色に輝いて……石じゃない? すごく堅そう。

 コレ……みんなに配った石の短刀? それのすごいものかしら。



「……ハイ。リムちゃん。あ、抜く時は力をいれないで――そう、ゆっくり。

 …………あ、危ないから、すぐしまって――うん。

 そう。そこを抑えない限り抜けないようになってるから。で、その穴に紐でも通して腰に吊るせる」


 主様はリムに丁寧に教えてる。わたしも護身刀を鞘に戻した。

 パチン、と小さく音がして元に戻る。そのまま引っ張ってみても鞘から抜けないようだ。



「その剣はあくまで最後の護身用だからね。

 森に行くときとか持って行くこと。だけど普段は使わない。

 武器を持っていくにしても、もう一個もってくこと。他の武器が使えない時だけそれを使うように。

 まあ最も、そんなことがないように危ないところに自分から近づかないのが一番だけど。


 リムちゃん、いい? できるだけそれを抜かないように。本当に危ない時だけ抜いていい。

 オモチャじゃないんだ。普段、村にいるときは持ち運ぶのはいいけど、絶対ぬいちゃダメ」



 主様はわたしとリムにまじめな顔で仰った。

 わたしとリムは神妙にうなづいた。

 リムはその護身刀がとても気に入ったみたい。胸に抱きしめている。



 ……でも、"オモチャ"ってなんだろう?










 タスケさんと話す。

 まず最初にリムを連れていったことを謝られた。


 けど、多分リムは無理やりついてっただろうから、怒るわけにもいかない。


「ううん。リムのわがまま聞いてもらって悪かったわ。こんどからはなるべく止めてあげて」


 頭を下げて恐縮するタスケさん。



 そのあとタスケさんから主様にご報告。

 まずは、新しい武器である石刃の槍。


 すごい効果があったみたい。なんと大グマを独りで倒せたとか。

 切れ味がするどすぎて、遠くから投げただけで一撃で背中まで突き抜けたとか……


 それと竹をたくさん取ってきた。主様は大喜びされてた。


 これで弓も強化できるみたい。

 出来次第、今日戦果あった人と弓が得意な人を優先に渡すって言ってる。

 だけど、いずれみんなにも回らせるから心配しないようにだって。


 あと、タスケに土器になみなみと注がれた、お酒――"びいる"を20個タスケに与えられた。

 タスケに、今日頑張った人に――狩りと木の実採取、土をたくさん集めた人、

 竹を持ってきた人などにタスケの判断でいいから分配するようにご指示。


 タスケは主様から直接頂いた、"びいる"を飲んでうまそうだった。

 ……いっしょにわたしも呑んだケド……アレ苦手。



 それから主様は明日以降、弓もできあがるから効率があがるからだろうからって――

 必要な狩りの人数がどれくらいに減るか、タスケに考えておくように指示。

 調子に乗って必要のないほど不要な数を狩らないように注意された。

 

 そうして、あまった分の人手は土と竹の採取と石灰岩の採取に回していくように指示。

 今日主様が切り倒した木があった場所から取るようにとのこと。




 それからタスケが主様におそるおそる尋ねる。


「賢者様、あの木を倒していたムオヌとヌルウですが……アレはいったい?」


 そう。わたしも早くそれを聞きたかった!

 あの二人、とんでもない早さで――信じられないくらい力持ちで軽々木を持ち運んでた。


「ああ……オレの術でちょいと強化した。…………いや、強化しすぎたかもしれんけど」


 主様は明日から他のみんなにも希望者はときどき、その術をかけるかもって言った。


 タスケはそれを聞いて、待ち遠しいみたいだった。












 そして――そのあとはお食事。


 昼間の努力の結晶を披露する。

 マルウの肉を宴会のときよりも焼き方を抑えて、"くろこしょう"と"しょうゆ"をかける。

 あとパンを細かくちぎって蒸し米に入れ、

 "さとう"と"かがくちょうみりょう"、"ばにらえっせんす"をかけてかきまぜる。

 あとは森からとってきた果物。


 …………どうだっ! チロさんたちとわたし的にはとってもいい出来だと思う。

 事実、リムはおいしそうに食べてる。


 でも、主様は……


「………肉はまあ…教えたとおりに近いからいいとして……

 ご飯の方は……ちょっと、いや正直……まあ少しは変わったと思うケド……

 厳しい目だと―― ゴメン。まだまだね……あ、でもこの果物は甘くて美味い」







 ……果物はそのままだしただけ。


 ……お料理…………ううぅ……がんばる。まだ初日だもん……



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