第6話 村長就任演説、そして嫁さんゲット
婆さんの賛同を得て――
村の男衆の実力者――まとめ役、頭――たちと話し合い――賛同を得た。
――リーアちゃんのオレ専属に関して言えば、多くの男どもが舌打ちしてたが。……あぶねえ。
女衆はまったく問題ないようだ。
――逆に、オレが他の男を抱いた女はダメってのにがっくりきてた。……ちと惜しかったか。
そして――――
翌日朝。
オレがこの世界に降りたってから3日目。
昨晩は特になにもしてない。今日の演説と策を練ってた。
リーアちゃんとリムちゃんと婆さんとで普通に家で寝た。
……やっぱこの家、きっついわ。ちゃんとした布団ねえし。
あ、そういや≪ポケット≫のなかに布団あったな? ……まあ後で確認するか。
一人残らず集まった村人352名の前にオレはいる。
妊娠している女性が結構いる。リーアちゃんより若いぐらいの娘でも腹が大きい娘もいる。
目立たない状態の娘も含めればもっと多いのだろう。
あと、こうしてみると圧倒的に子供の方が多い。
……おそらく幼少の死亡率が高いのだろうな……なんとかせんとな。
つまり、幼少時に死に安いから、たくさん産む。ってことかよ。
発展のためには人口を増やす必要があるからな。
このままなら、死亡率を減らせばすぐ人口増えそうだな。
……途中、子供ばかりになるのが大変そうだがな。
先に婆さんが挨拶。
「みな、よーう、集まってくれた。
きょーは皆に伝えたいことがある。
皆が知ってのとーり、今わしらの村はちゃんとした村長がおらんで、このおばばが代理しておる。
じゃがこれは、ホントはいかん。
そこで、先日我が村にまいられた、こちらのお方に村長をお願いすることになった。
――うむ。
みなの戸惑いもわかる。こちらのお方は村長の血筋ではないからのぉ。
じゃが偉大な方じゃ。
だが、少々、残念なこともいっしょに伝えねばならん。
こちらの方、偉大な力と知識を持っておられるが、神様ではないそうじゃ。
――――――うむ。
――落ち着くのじゃ。ええい。皆、落ち着くのじゃ、おばばの話を聞いとくれ。
――――おう、タスケ、チロ。助かった。
――うむ。聞くのじゃ。
神様ではない。それは確かなようじゃ。
じゃがわしらには想像もできんくらいすごいお方のようじゃ。
偉大な力と知識で、わしらの村を安全に豊かにしてくださるそうじゃ。
こちらのお方は、神様じゃなく、"賢者様"じゃそうじゃ。
なんとそのお力で、来年の収穫を倍にしてくださるとお約束されたっ!
――――――
うむ。皆の興奮もわかる。そんなこと可能なのか?
やっぱり神様なんじゃないか、おばばもそうおもっとったが違うそうじゃ。残念じゃが。
うむ。このことは男衆、女衆の頭ともに昨日、ちゃぁんと話した。
賢者様は、たいそう自信おありげじゃった。おばばは信じることにする。
実を言うと、貴人たちの年貢の取り立てが厳しくて来年どうなるかわからん状況なのじゃ。
ここは賢者様を信じ、皆が力を合わせるしか手はないのじゃ。皆わかってくれ。
――――うむ。そういうわけじゃ。
……コホン。
本日、巫女リーアを捧げ、賢者ライブラ様をわしらルルアの村長とすることを
村長代理である、わし、ジュラの名において認めるっ!!」
「「「「わあああああぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!」」」」
うーーむ。とりあえずみんな、賛同してくれるみたい。
つぎにオレの挨拶だな。――婆さんの挨拶を見るに、
あんまり堅苦しくする必要はないようだな。……まぁそのほうが助かる。
だが、ここで一気に支持を集めないと、オレの言うことを聞いてくれなくなるし、
リーアちゃん独り占め計画にも支障がでるからな……
支持を集め、農工改革をしやすいようにしないとな……
まあ、秘密兵器もあるし……大丈夫だろ。
よし。簡潔にかつ効果のある演説で、ある程度大言でもして。
そしてリーアちゃんをオレのモンに。
一段高い、演台に上がる。
「みんな、ちゃんと声で挨拶するのは初めてだな。オレの名はライブラだ。
先日の宴会のときは、まだこの世界の言葉は中途半端にしか覚えていなかったのでな。
オレが今日からこの村の村長をすることになった。
みんなが不安に思うかもしれんが、オレ、賢者ライブラの名にかけて
先ほどお婆さんが言ったとおり、来年の収穫高倍増は当然お約束する。
が、実のところ倍増程度なら、我が知識をもってすれば大したことではない。
それ以上にしてみせるし、収穫高以外でも皆の生活をより豊かに、安全に、
そして便利にしてみせよう。
はっきり言おう、倍増程度ならオレ一人でも可能だ。
だが、オレはそれ以上を目指す。だからみんなの協力が必要なんだ。
だから頼む。村の発展とそして君たち自身の繁栄のために力を貸してくれ。
必ずやさらなる栄華を君たちにあたえよう。
――――うむ。ありがとう。
それと、巫女リーアに関してだが、彼女にはオレの補佐をしてもらおうと思う。
本来、巫女の資格を失った場合、女衆に組み込まれるそうだが、
賢者であるオレの補佐、そしてオレの力の回復は、他の男と交じった娘ではできないのだ。
そして彼女の場合、回復効果がとても高いのだ。これはすまないが了承してもらいたい。
こののち彼女は"巫女"という身分から、オレの"ツマ"という身分にする。
皆は"オクガタ"という名で呼んでくれ。
挨拶はこれまでとさせてもらうが、最後に、皆にオレから贈り物をさせてもらおう。
――リーア。
指示していた皿をここに――」
リーアちゃ……いや妻だからな、リーアが満面の嬉しそうな顔しながら大きな土器を持ってきた。
だが、大きく広い皿のような土器の中にはなにも入っていない。
「あ、あのライブラ様? お皿持ってきましたけど……なにもないですよ?」
「これから入れるのさ……皿をそのまま持っててくれ……」
皆が注目するなかで≪ポケット≫からクリームパンを取り出した。
「ああっ!! くりいむパン!」 リーア……よほど気に入ったみたいだなぁ……
村人たちはリーアの喜色溢れる大声に不思議そうに首をかしげた。
リーアの隣にちょこんと、リーアといっしょに皿を持ってるいるリムちゃんは
興味深そうにクリームパンを見ている。
クリームパンのビニール袋を開封してから
左手にクリームパンを持つ。そして右手は皿の真ん中辺に向けて下ろす。
そして≪コピーリング≫に霊気を通す。
「あああ!!? くりいむパンが!! くりいむパンがいっぱいぃぃっ!!!」
ちょ、リーア、それ、その声ちと、はしたない。オレの妻になるんだから……
霊気を通す……通す……通す……ちとめんどいな……
………………
次々、何もないところから現れるパンに村人は仰天している。
……ついでにひとり嬌声を上げてるリーアにも仰天している。
……通す……通す………………
「ふぅ! こんなもんか……な。これで多分300個。こんなもんでいいだろう……」
さてプレゼントだ。
「これは、オレの力でつくったパンだ。
少々作るのに力いるから滅多に造れんが……皆にひとつずつあげよう。
……ごらんのとおり、昨日あげた我が妻リーアが大層気に入ってしまったパンだ……
リーア、リムちゃん。皿を降ろしてくれ……ああゆっくりとな…………
……ん。それでいい。
さて、みんな……ひとつずつ取って食べてみてくれ。あ、赤子は食えんぞ」
まっ先に、とび付いたリーア。……お前はちょっとおちつけ。すぐ口に入れる。恍惚。
リムちゃんも一つ取った。リーアの恍惚とした表情にちょっと引き気味。
だが、口に入れるとびっくりして「おいし」って呟いた。リーア程ではないみたい。
村人たちもどんどん手にとって……食べる。
食べたことがないだろう味に皆、驚いている。
やはり特に女性と子供が喜んでいるようだ。リーアなみに大興奮している娘もなかにはいる。
男性も喜んでない人はいないようだ。
――――とりあえず、成功……かな? コピーもとのオリジナルパンを食べながら観察。
パンだからな……慌てて食ってのどに詰まる人がいるかもって思って――
≪ポケット≫のなかオレンジジュースを取り出してコピーする準備ができてたけど問題なさそう
「うん。みんな食べてくれたかな? 喜んでくれたならうれしいが……
――――うん? もっとくれ? すまない。コレは造るのに結構、力がいるんだ。
滅多に造れん。――そう、そうだな年に一回が精々。
今日この日を就任記念日とでもして、年一回みなにふるまうことにしよう。
それに、このパンをオレの力なしで皆が作れるようになるには数年はかかるだろうが
できないわけではない……とも言っておこう。皆の協力が必要だが」
おおおおぉぉぉぉーーーーと歓声。みんな大喜びだ。
よしよし、計画どおり……
コレで支持率が高くなって、オレの力を回復させるっていうリーアの貞操の重要度が増した。
クリームパンは≪ポケット≫に残り41個しかない。乱用しないようにしないと。
まあ、オリジナルを喰わなきゃいいんだけどね。袋から開けたら食わんと。
袋はたくさんコピーすべきじゃない。いろいろ書いてあるし。読めんだろうケド。念のため。
まあ無くなったらそれで別のもんあるけど……
……リーアが気に入ってるんだ。コレは重要物にしておこう。
余ったパンを手にとって、こっそり二つ目を食べてるリーアを見ながら思った。