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勇者とは何か

作者: 大橋勇

なろうユーザーになって三か月ぐらい経つ。

私は今『最低な三人の異世界転生ドラゴニア冒険記』という小説を連載している。

この小説を書き始めたきっかけは、2015年に「なろう」に投稿した『最低な三人』というナンセンスな小説の続編として、この中卒無職の三人が異世界に転生したらどうなるのか?などととふざけて書き始めたらハマってしまった。

まあ、その小説の内容は措くが、「小説家になろう」というサイトに投稿される小説にはなぜ異世界転生ものが多いのか?しかも、転生先はゲームの世界で、とくにドラゴンクエストみたいな世界観で、「勇者」に転生したりするのが多い。中には「スライム」に転生するのもある。この勇者とかスライムをどう想像すればいいのか私はわからない。私の小学生時代はゲームと言うとファミコンの時代であり、私はファミコンを買ってもらえなかったから、ドラクエの知識は友達のやっていたゲームを見ていて知ったのと、それに関連するマンガを読んで得た知識しかない。だから、「スライム」というと、私は鳥山明がデザインしたあの水色のスライムを想像するのだが、なろう小説で主人公が転生したスライムもそのイメージでいいのだろうか?でもそれだとパクリではないかと思う。または他のゲームでもスライムは出てくるのだろうか?私は知らない。

「勇者」に転生するものもある。その場合、勇者がまるで職業のように扱われているものが多い。これもドラクエ的な発想なのだろうか?普通、「勇者」とは職業ではなく、勇気がある人のことを指すのだ。しかし、ドラクエ的世界観だと、剣や魔法を使って、戦士や魔法使いや僧侶などとパーティを組んで冒険し、最後には魔王を倒して世界に平和をもたらす、そういう人物のことを勇者と呼ぶのだが、なろう小説の多くでもそのようなドラクエ的な意味合いで「勇者」を認識すればいいのだろうか?しかし、実際の「勇者」とは単に勇気があり行動した者のことである。魔王を倒す剣士を勇者と言うのではない。現実の勇者とは、例えば好きな人に気持ちを伝えられなかった子が、勇気を出して告白できれば勇者だし、電車でお年寄りに席を譲りたいけどなんとなく声を掛けづらく勇気が出なかった自分を乗り越えてお年寄りに声を掛けるのも勇気ある行為だと言えるだろう。べつに冒険をすることだけが勇者の資格ではない。資格という言葉が出たついでに言うが、勇者と言う国家資格はない。小説で勇者養成の学校などが出てくる場合があるが、そこでは何を教えるのだろうか?勇気を出すにはどうしたらいいかを教えるのだろうか?小説では魔法や剣を教える学校みたいになっている場合が多いと思う。もし、勇者養成機関があるとしたら、「勇気の出しかた」これ一本に教える内容を絞るべきだろう。なぜなら、勇気に剣技も魔法も関係ないからである。

ところで、なろう小説に異世界転生ものが多い理由を考えると、読者層に現世の人生がうまく行っていない者が多いのではないだろうかと思う。そして、転生先がゲームやラノベの世界観になるのは、現世でそういう趣味を持つ者が多いからなのだろうと思う。つまり現実逃避の場所としてなろう小説が位置付けられる場合が多いのではないだろうか。私は現実逃避を否定はしない。私自身小説を書いているが、そこに現実逃避の意識がないかと言うとやっぱりあると思う。しかし、私はむしろ現実の中にファンタジーがあることを重視したいと思っている。私は冒険に憧れて育った少年であるが、現実で冒険者になるということは植村直己さんみたいに南極を犬ぞりで横断したり、エベレストに登頂したり、などということに人生を賭けることになるのだが、それは人生的に私の人生観とはズレていたためそういう人生は選ばなかった。そのかわり、異世界への憧れがあって、とくに『天空の城ラピュタ』が好きで、そんなものないとはわかっていても、入道雲を見るとラピュタを夢想する癖があった。だから、小説の中に冒険の世界を作ろうと思った。それに書くという行為は現実と地続きな行為なのである。けっして現実逃避の行為ではない、と考えている。物理学者の中にもパラレルワールドの存在を示唆する人もいるらしいし、脳科学的にも、脳内にファンタジーの世界を作る人間の能力は人間の可能性を広げるものだと思う。まあ、そんな難しいことは言わなくとも、私は単に、ファンタジーが好きなのだ。ただ、その世界に浸って、現実世界で負けの人生を生きることは絶対にあってはならないと思う。

小説は現世がダメだったから逃げ込む場所ではなくて、それを読むことで現世に希望を持って生きて行けるような、勇気を与えてくれるような小説こそ、読むべき小説だと思う。


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