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時界機神 オウカ  作者: 西都 徹也
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第7話 ローナ・シュタイン

 ローナ・シュタインは文武両道の才女だった。体育のバスケットではスリーポイントシュートを次々と決め、数学では知らない公式を次々と並べ、英語も勉強する必要がないほど流暢に発音できていた。

 そんな人間がクラスに居たら絶対に覚えているはずである。

 なのに、俺は知らない。

 昼休みになり、当然のように彼女は取り囲まれる。クラスの女子や男子たちが「一緒にご飯食べよう」と誘い始め。ローナは立ち上がり俺のもとに来る。

「いいかな? 藤吠君。いつもみたいに屋上で食べようよ」

「……ああ」

 乗ってやろう。

 クラスメイト達が「あ~……」と残念そうな声を上げるが、全然優越感には浸れない。

 俺にとって、ローナ・シュタインは未知の脅威でしかないからだ。


 〇


 誰もいない戸髙高校の屋上で、ローナ・シュタインと対面する。

 屋上には椅子一つない。一応開放はされているが、ろくな掃除もされておらず、鳥の糞がいたるところに落ちており、とてもこんな場所で昼食を取るつもりにはなれない。

 だというのに、クラスメイト達はローナが昼食で屋上にいくことを当然のように受け止めた。

 この学校で屋上に好んで来る人間はいない。

「ローナ。お前はいったい何者なんだ?」

「クスクスクス」

 ローナはなぜか嬉しそうに笑った。

「ローナ・シュタインだよ?」

「そんなのは知っているんだよ。山中はどこ行った? 君は昨日の現象に関係してるのか?」

「現象って?」

「その……怪獣と巨人の戦いだよ」

「うん」

 ローナはにっこりと笑った。まるで褒めてほしそうな子供の様だった。

「〝オウカ〟に乗ってたの。私だもん」

「オウカ? それって昨日の金色のロボットのことか?」

機神(きしん)だよ。知らないの?」

「知るわけないだろ!」

 思わず声を荒げてしまった。

 ローナがずっと余裕の笑みを浮かべているから、感情がかき乱されてしまう。

 金色の巨人にローナが乗っていたということは、敵ではないと思いたいが。

 今、やっぱり自分は危機的状況にあるんじゃないのか?

「ローナ。答えろよ。お前はいったい何者なんだ? 何の目的でここにいる。全部答えてくれ!」

 内心すがるような思いで尋ねる。

 笑い飛ばされるかもしれない。

 何しろ、こっちには何も取引の材料がない。ローナがどんな存在かも知らないが、その気になれば一瞬で排除できるだろう。

「あ……」

 ローナは、一瞬だけ瞳を泳がせた。

 泣いてる?

 目に涙は見えなかったが、そんな感情を感じた。

「クスクスクス」

 勘違いだった。

 彼女は心底おかしそうに笑っていた。


「私はこことは違う魔法世界から来た人間です」


「お」

 唐突に答えてくれた。

「それって、異世界?」

「そう、昨日の時間が止まったのはキメラレッドが時空停止魔法を使ったから。ゆーあんだぁすたん?」

「あ、はい」

 なんだ、唐突な英語。

 ローナは続ける。

「この世界は私たちの世界からの侵略を受けている。山中君がいなくなって私がその居場所にすり替わったのは、停止した時間の中で山中君が死んだから。彼が死んだことによりこの現実世界がまた一つ、私たちの異世界との融合を進めた」

「融合……?」

「そう!」

 ローナが二つの拳を作り、

「一つの世界と一つの世界が……まじり合う」

 ぶつけ、組み合わせる。二つの拳はがっちりと組まれ、合わさった一つの世界《もの》となっている。

「世界融合魔法・ユグドラシル。それが今私たちの世界が発動させている魔法の名前。あんだぁすたん?」

「ふざけんな一方的な侵略じゃないか! 山中を返せよ!」

「どうして、あなたあの子を愛していたの?」

「え、いや愛してまではいないけど……でも大切な友達だった! 死んでいい人間じゃなかった!」

「本当にそう思ってる?」

「え……」

 あれ。

 え。

 俺、なんで今言葉に詰まったんだ。

「……そうだな。返せってあんたに言うのは筋違いだった。ローナはあの金色の巨人に乗っていたんだ。俺たちを守ろうとして、でもできなかった。精いっぱい努力した結果だったんだよな……」

 ローナは、魔法世界の裏切り者なのだ。

 だから、侵略しに来た怪獣相手にロボットに乗って戦った。

「え、私別にあなた〝たち〟を守ったんじゃないよ」

「え?」

 ローナは俺を指さし、

「〝あなた〟を守ったんだよ」

 どゆこと?

「クスクス……」

 わろてますけど……。

「俺を?」

「うん」

 そして、スカートの両端をつまんで優雅に一礼する。


「藤吠牙様。私、ローナ・シュタインはあなたの妻になる者です」


「はぁ⁉」

 待て待て、状況が全くわからない。

「妻? 俺に? どうして?」

「あなたのことが好きだから」

「どうして初対面なのに!」

「わからなくていいんですよ」

 ローナは俺の手を取り、顔をずいっと近づける。

 女慣れしてないから、カワイイ女の子の顔が目の前にあるだけでドキッとしてしまう。


「愛があれば時間は関係ありません。ご主人様! 次の世界で一緒に添い遂げましょう!」


 ご主人様———⁉

 とんでもない女の子と、出会ってしまった。

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