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時界機神 オウカ  作者: 西都 徹也
28/41

第28話 牙、理想郷へ

「え————?」


 目を開けるとそこは異世界だった。


 宙に浮く島に、空を飛ぶ龍。街の中心には天を突き抜けるほどの巨大な塔がそびえ立っており、エルフやドワーフが闊歩する。

 ゲームや漫画で見るような魔法世界の光景だ。

 すこしイメージと違うのが、ところどころ光る石が設置してあり、街灯だったり、光る車だったり、現代よりも進んだ文明機械が存在していると言う点である。

「ここが私たちの世界———私とキバ君の生まれ故郷。異世界だよ」

 ローナの胸元には若干の光が灯っていた。

「それは……?」

 すぐにしぼむように消えてしまったが、確かにそこにさっきまであった。

「ビフレストの欠片。私も触媒なの」

「触媒……? 触媒ってなんだ?」

「キバ君と私のことだよ。体内にビフレストの欠片を埋め込まれて、二つの世界を繋ぐ(くさび)になった人間」

(くさび)……? ビフレストの欠片って一つだけじゃないのか? そもそも、それっていったい何なんだ?」

 ローナは遠くの巨大な塔を見つめる。


「世界樹の種。それがビフレストの欠片の正体。私たちはそれを埋め込まれて二つの世界を繋ぐ世界改変魔法・ユグドラシルの触媒にされているのよ」


 ローナは俺と自らの胸を交互に指さし、そう言った。

「あの時、新宿で赤い魔獣がどうして出現したと思う? キバ君と私が繋がって、あの場所から世界の侵食が始まったからだよ。赤い獣———〝キメラレッド〟はそのことを知らずにあなたを殺しちゃって、危なかったけど」

「ってことは……ローナが俺を助けたのは、ユグドラシルの発動を継続させるため?」

 ローナは「フフ……」と笑った。

 笑ってはいるが、悲しい表情だった。

「そんなわけないでしょ……」

「あ」

「来て」

 それから、俺とローナは異世界の街、ヴァランシア王国を巡りながら———話をした。


 〇


「この世界は限界を迎えているの」

「限界?」

「魔力を機械で吸い上げて、社会は急速に発達してすべての人が幸福に暮らせる天国のような世界になった。虐げられるような人もいない。職に困る人もいない。みんな自分が暮らしたいように暮らしている。あ、ほら見て、あそこ」

「大きな龍の骨を持っている人たちがいるけど……あれが?」

「ハンターよ。戦いたい人はああやって討伐したものを持って帰って来て、採取したものを売ってお金を得ているの。討伐したモンスターからはアイテムが出て、そのアイテムは魔力を生み出す。魔力を生み出すために必要な職業」

「でも……龍はこの街でそこら中にあるいているけど、その龍を討伐していいのか?」

「ハンターが討伐するモンスターは世界樹が生み出した、ただの魔力の塊。あの骨を触媒にしているの。だから、人に危害は加えないし、そもそも生きてすらいない」

「……? よくわからないな。世界樹から直接魔力を吸い上げているんじゃないのか?」

「それもできるけど、そうやってモンスターを作り出すこともできるのよ。人には狩猟本能っていうのがあるから、それを満たすためだけのシステムよ。ハンターと言ってもハンターのようなことをしているだけの人。別になくても社会には必要ない。だから、職業というより娯楽に近いわね」

「…………」

「やりたい仕事をやるために世界樹にそういった無理をさせている。それが今のヴァランシア王国。魔力は生命の源で世界樹からくみ上げるだけで人は生きていける。あそこを見て、路地裏で寝ている人たちがいるでしょう? あれはギャンブラーの人たちよ」

「何人も……敷き詰め合っているように見えるけど……ひどい匂いだ……帰る場所はないのか?」

「あるけど、帰っていない。魔力を接することができれば、生命活動には困らない。皆袋を持っているでしょう?」

「持っている……顔が少し赤いし、気持ちよさそうな表情をしているけど」

「魔力剤。あれは役所に頼めば必ず手に入れることができる。あれがあれば、食べ物を食べなくても直接エネルギーは摂取できるし、魔力は細胞を活性化させる働きもあるから病気にもなりにくい。そんなものがただで手に入るものだから、ギャンブルでお金を失くしても大丈夫って、こういう人たちが増えているの」

「…………」

「この街は〝楽〟に満ちている。当然農業や商売をやりたい人もいるけれども、自分たちがやりたいようにしかやっていなくて、どこかで生じる不都合を魔力で補っている。

 魔力は人の意志に呼応して、その力を変質させる。だから、どんな人の願いもかなえることができる。

 この世界は天国なのよ」

「誰も———困ってないんだな」

「そうなの」

「じゃあ、どうして俺たちの世界を侵略する必要があるんだ?」


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