第21話 泊まりに来ない?
俺たちは何も話をせずに戸塚警察署を後にした。
あの戦闘で赤城白太は救い漏らしてしまった。
もう彼はどこにもいない。
この世界を救う話を、入れ替わったパール・レッドソンとやらにしても何にもならないだろう。
「ごめんね。ウチの兄貴が頼りにならなくて」
「いや……」
百合はパール・レッドソンを本当に自分の兄だと信じ込んでいる。尋ねて行って、何も話さずに帰ったことを兄の性格のせいだと思い込んでいる。
全くの他人が兄に成り代わったとも知らないで。
「…………あの」
「ん?」
「いや……」
それを言おうか言うまいか悩み、こういうやり取りを何度も繰り返している。
「何よ。さっきから」
百合も苦笑する。何が何だかわからないだろう。
異世界からの侵略なんて、常識的にあり得ない話だ。
「あのさ。藤吠、家出してるんだよね?」
「え、ああうん……」
唐突にその話を切り出された。
「ちょっと悩んだんだけどさ。ウチに来ない? ローナさんも一緒にさ」
「え?」
「ええぇぇぇぇぇ⁉」
俺よりもでかいリアクションをしたのはローナだ。
「困ります! ご主人さ、藤吠君は私と一緒に今日を過ごすんです」
「二人っきりで? ラブホでも泊まるの?」
「ラッ⁉」
ボンッと音がしそうなほどの速さでローナの顔が真っ赤に染まる。
「そ、そんなただれた場所になんかまだ行きません!」
「〝まだ〟……?」
「~~~~~~~~! もう!」
ローナは唇を尖らせてそっぽを向いてしまう。
百合はポンと納得したように手を合わせ、
「そっか。ローナさんの家に泊るのか。それが普通だよね。何を渡し早とちりしてるんだか……」
「そ、それは……」
ローナが口ごもる。
そう言えば、ローナはこの世界ではどんな身の上になっているのだろうか。
山中が消えてローナがその居場所に居座ったのだから、山中家の娘という形で認識されているのではなかろうか?
「今のローナの家って山中の家がそうなんじゃないのか? 山中家に泊めてもらうことはできないのか?」
小声でローナに耳打ちする。
「できません……確かにご主人様の推測は当たっています。ですが……それをしたくはないのです」
「そうなの?」
そういえば、山中の家に行ったことは今まで一度もない。そういった話の流れにならなかったし、何となくだが、山中が家に人を招くことを避けているような感じだった。
「そうなんだ。で、二人はこれからどうするの?」
「えっと……」
公園で一泊予定とは、クラスメイトには言いにくい。
「やっぱりさ、うちに来ない?」
百合は満面の笑みで、そう言った。




