第13話 爆撃進軍
マックス・ロッドは空から召喚された〝オウカ〟を見つめていた。
金色の機神であるはずの〝オウカ〟が白い。
どういうことなんだろう?
恐らくトゥーリが召喚したのだろう。先日も別の地で実験的に〝キメラレッド〟召喚したが、〝オウカ〟に防がれたとリチャードが報告している。
トゥーリちゃんはやっぱり、おいらたちを恨んでいるのだなぁ……。なら仕方がない。いっぺんに殺すしかないねぇ。
マックスは今———巨大な蠅だ。
名は———〝フライボマー〟!
下部の腹が大きく膨れ、
—————爆撃だァ!!!!!
卵を放出する。蠅としての生命機能としては卵だが、魔法の獣、魔獣化したマックスが発しているのは、その役割としては逆のものである。
生命を創るものではない破壊するもの————爆弾だ。
爆撃機のように次々と地上の〝オウカ〟、そして藤吠牙のいるであろう校舎へと落としていく。
————ウヒ、ウへ、ウへへへへへへへへへへッッ‼ 綺麗な花火が見られるぞぉ~!
マックスの思考能力は、魔獣化し完全に低下していた。
ローナが、自分たちのボスの娘が地上にいることなど、マックスの頭にはもうなかった。
〇
「早く乗って! ご主人様!」
白い〝オウカ〟はトゥーリの予想の外だったようで呆けていた。
一方、ローナはすぐに乗り込むように急かす。
「どうやって⁉」
「願うの! 〝オウカ〟に自分を受け入れてもらえるように———!
そうしたら〝オウカ〟は導いてくれる!」
「導く———? このロボットが?」
「ただのロボットじゃない」
「え?」
ローナは真剣な表情で、
「機神。彼には意思があるの。だからちゃんと気持ちを通い合わせてあげて———」
「意志を持つ———機械?」
「だから機械じゃないっていってんでしょ」
ドスっと尻を軽く小突かれる。
「うひゃ」
犯人のトゥーリが「変な声出してんじゃないわよ」と剣を鞘に納める。
「〝オウカ〟も私たち異世界人と同じ、魔力を使って動いている鉱物の生命体。
そして———魔力は想いの力。
想いがなければ、〝オウカ〟は動かない……明らかに今の〝オウカ〟には異常が起きているけど……」
トゥーリが〝オウカ〟を指さした後、上空のマックスに向ける。
「乗らないと————死ぬ」
大蠅と化したマックスから、大量の玉が放出され———落下している。
————絶対に、爆弾だ!
「ご主人様! 早く〝オウカ〟に乗って————自分の身を守ってください!」
「藤吠牙! 〝オウカ〟に乗って———みんなを守るのよ!」
「—————ッ」
俺は〝オウカ〟を見上げ、願った。
———————受け入れろ!
俺を———と。
〝オウカ〟の胸部装甲が開き、まばゆい光が発せられる。
俺は、思わず目を閉じた———。
〇
「ハッ———⁉」
気が付くと俺は座席に座っていた。
正面には魔法の力で外部映像が映し出されている。
鏡面のような画面だった。
魔法陣が展開されていてその中心に映像を映している様子だった。
座席は———粘土のような質感。
———両手の位置には白い宝玉が埋まっていた。
「————コレがッ!」
操縦桿だ。恐らく———、
本能的にわかり、握り締める。
「動けえええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇ!」
爆弾は———迫っている。一刻の猶予などあるはずがない。
必死の思いで動くように念じる。
機神——〝オウカ〟は応えてくれた。
跳びあがり、全身を広げ爆弾の前に晒した。
炸裂————。
コックピットの中にまで轟音と閃光が満ちる。
生まれて初めての死の恐怖。それが容赦なく襲ってきて俺は悲鳴を上げていた。
——————だが、それが自分の耳に届かないぐらい。凄まじい爆音が響いていた。
やがて、音が止み足が沈む感触がする。。
ズウンと地響きを立てて、機体が落下したのだ。
「————イッテェ……焼けるような痛さだ。正面が、前面が……機体が爆弾を受けた個所がメチャクチャ熱い……なんだコレ」
不思議な感覚だ。
俺の痛覚が、「焼けた」「痛い」と悲鳴を上げている。
あまりに痛いので、手で触って確かめてみるが、手に血はこびりつかない。
ヒュウウウウウウ………!
聞こえる。
外の〝オウカ〟のボディに当たった風が音を奏でている。鮮明に聞こえる。〝オウカ〟の装甲の一部が震えて音を鳴らしている———その感覚すら———感じる。
寒い。
熱くて痛いのに———寒い!
『ちょっと! どうして障壁を展開させなかったのよ!』
頭の中にトゥーリの声が聞こえる。
「障壁の張り方なんてわかるわけないだろ!」
魔法の使い方なんて全くわからない。
『また来るわよ!』
「————ッ!」
空を見つめる。一点だけある黒い点———大蠅のマックス・ロッドが先ほどと同じ手、『卵爆弾』を投下しようと———腹を膨らませている。
「念じる……」
機体に乗る時も、強く念じることで魔法の力が発動し機体に乗ることができた。だから今度も同じ———なんじゃ、ないか……。
———できるのか?
「無理だ!」
魔法なんて————生まれて一度も使ったことがない!!!
『ちょッ⁉』
機体をくるりと回転させ、マックスから背を向けた瞬間———頭の中にトゥーリの声が響いた。
———奔った!
「————ッ!」
二人を両手の平で救い上げ、こぼれ落とさないように慎重に———だが、急いでその場から退避した。




