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時界機神 オウカ  作者: 西都 徹也
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第12話 オウカ召喚

 瓦礫を押し上げて出現したそれは———巨大な蠅だった。


 赤い瞳に漆黒の体を持ち、高速で背中の翅を震わせて飛行している。

 頭部の形状が何となく先ほどの男———マックスに近しいような気がして、

「もしかして、あの魔物って……マックスってやつか?」

「答えなさい! ローナ!」

 無視された。

「……二人とも聞いてないね」

 ローナの胸倉を掴むトゥーリ。

「私の〝オウカ〟をどうして呼ばないの? 呼びたくないの? だったら今すぐ返して! 私はこの世界の人のために、正義のためにあいつを、マックスを倒さなきゃいけないの! そのための力がいるの!」

「ごめんね。トゥーリ……もう、持ってないの」

「え」

 ローナの口がようやく開いたと思ったら、予想外の返答が返ってきた。

「持っていない?」

「もう、あげちゃったの」

 そう言って、ローナの視線が俺に向けられる。つられるようにトゥーリの視線も俺に注がれ、

「……ッ⁉ まさか、〝権限〟を」

「そう……呼ぶのは、私じゃない」

 ローナが微笑んだ。

 何か、いざなうような微笑みだった。

「俺が……?」

「呼んでご主人様。でないと———、」

 空を飛ぶマックスを一瞥し、

「死んじゃうから」

「呼びなさい。藤吠牙」

 トゥーリが剣をしまう。

「急に……俺の味方をしてくれるね」

 どこか緊迫した雰囲気が和らぎ、協力的になっているトゥーリ。

 戸惑っている俺に対して彼女は三本の指を立てて言う。

「一つ、〝オウカ〟が本当はどこにあるのかわからない。二つ、ローナが持っておらず、この世界の人の手に渡っているなら、それはそれでよし。三つ————」

 トゥーリは床に落ちている———ある〝者〟を拾い上げる。

「———ゥッ!」

 生首だった。

 マックスが巨大化した衝撃か……いやそのずっと前からだろう。

 ————来客室では何度も爆破が起きていた。


 赤城白太刑事の首———。


「私はこの世界の協力者を失った。頼れる人間がいるのなら、すぐにでも飛びつきたいところなのよ」

 死んだ。

 さっきまで話していた人が。

 トゥーリは赤城刑事の開いていた目を閉じさせ、その首を丁寧な手つきで地面に置く。

「赤城白太は死んだ。この止まった時間が解除された瞬間———私たちの世界の人間が赤城白太の肉体を書き換えて当然のようにこの世界に居座る。この世界の人間としてそれは嫌でしょう? 藤吠牙」

「…………ッ!」

 マックスを見据える。

「俺が、なんとかできるのか?」

「なんとかしなくていいよ!」

 ローナが口を挟む。

「ローナは黙っていなさい! 

 あなたができるんじゃない、あなたがするのよ。

 できるできないとか考える前に———とにかくやりなさい。じゃないと世界はいつまでも閉じたままよ」

「————ッ!」

 わかった。理解した。

 だから————、


 俺は……心の中で〝オウカ〟の名前を呼んだ。


 ——————来る。


 感覚がした。

 ———足元に巨大な魔法陣が展開された。

 そこから———金色の(たてがみ)を生やした巨人の頭部が出現する。

 以前に新宿で見た時は気が付かなかったが、口部に当たる部分はギザギザの牙の意向がある形状をしていた。

 トゥーリは〝オウカ〟を見つめながら「本当にローナは〝権限〟を現実世界人に渡していた。渡せていた……」と茫然と呟いている。

 それを聞きながら、俺もこの世界に顕現しつつある巨人の姿を見つめる。


 ———鋼鉄の獣人。


 巨人のフォルムはそれが一番近いものだった。爪のようにとがった指先の形状に———ヨロイのようなボディは肉食動物の荒々しい毛並みを彷彿とさせた。

 そして———鬣を携えた頭部はまさに獅子(しし)だった。


 だが————、


「何……これ……」

 トゥーリが息を飲んでいた。

 それもそのはずだ。

「色が……白い———」


 俺が召喚した〝オウカ〟の装甲は———真っ白だった。

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